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一難去ってまた一難?
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「あのぉ、いやぁ2人の世界の中、悪いんだけど俺たちの分も外してくれないか?」
ルドルフが声をかけて来た。
「そうでしたね。今外します」
勇者の危険性に気がついた、カメルとルドルフは勇者に脅された後も、水面下で動こうとしてくれていたのだ。
だが、警戒していたらしい勇者に見つかり結局、ペット用首輪を腕に嵌められ、”余計な事はしないように”命じられていた。
彼らが自分からアクションを起こす事は出来なくなったが、調査していたサスケを見て見ぬ振りをしたり、会話の中にさり気なく情報を入れていたりと何かと出来る範囲で協力してくれていたのだ。
だから、さっさと外そうと一歩を踏み出そうとした所で、またギュッと腰に回った腕がキツくなった。
「うぐっ。苦しいって」
シルバリウスの髪を撫でる。
あーシルバリウスの生髪ヤバイ。
ちょっと栄養不足? っぽいけど、この銀の髪やっぱり良いよね……。
っと現実逃避している場合ではなかった。
「ほら、ヴィーも一緒に行くよ」
ちょっと乱暴にシルバリウスの背中を叩くと無理矢理立たせて、ルドルフとカメルの方へ行こうとするが、その前に、ローワン王国国王を守っている騎士達の方へ向かって声を掛ける。
「騎士の方、今、勇者であるリョウコは魔法を使えなくしているので、捕まえるならどうぞ」
未だ喚いているリョウコに視線を向けた後、今度こそルドルフとカメルの方に歩き出す。
シルバリウスはひっつき虫のように俺の背中にくっついていて、歩きにくいがちょっと可愛い。
ニヤニヤしながら、2人の腕輪を一瞬で凍らせて、2人を解放。所詮元はペット用首輪。隷属の首輪ほど強く無いので、こちらの魔力消費も殆どない。
振り向くと国王一家と捕らえられた勇者とその他貴族。
「……」
「……」
「……」
暫くお見合い状態が続く。
お互いどう交渉を持っていくか考えているのだ。
こちらも警戒心を高める。
残念ながら、こちらの確実な味方となり得るのはシルバリウスだけで、他はみんなローワン王国の王族や貴族なのだ。
ローワン王国側は失態続きで、無かった事にする為に、俺たちを消そうとする可能性もなくは無い。
ただ向こうも、ペット用首輪の改変を知らず、あっさり勇者を捻じ伏せた俺の脅威度が分からず動けないのだろう。
……交渉は他の人に任せたいんだが、ここがローワン王国である以上、どさくさに紛れて逃げる事は出来るだろうか?
暫く時間稼ぎをしていれば、サスケが応援を連れてきてくれるだろうか……。
サスケの闇属性の中の技に”影移動”というものがあるが、色々と制約が多いのだ。
その名の通り、影の中を移動出来るのだが、ダンジョン内ではボス戦以外使用できなかったり、影がないと使用できなかったり、長距離は移動できなかったり、光属性持ちを連れての影移動は出来なかったりと、転移の下位互換のようだ。まぁ、転移より魔力消費は少ない為、何度も使えて近距離戦闘には持ってこいなのだけどね。
……怠いし早く帰りたいな。
と思っていた所、第三王女が出てきた。
「お父様ちょっとよろしいかしら?」
「今取り込み中なんだが、まぁ、なんだ?」
噂通り、ローワン王国国王が第三王女に甘々なことが窺い知れる。
シルバリウスの手が冷たくなっている。
第三王女登場で緊張しているのか……。
「そこにいるのはあのシルバリウスよね? リョウコさんに聞いていたけど、本当に見つかるなんて。
探したのよ? 皆遠くに行ったとしか言わないんですもの」
……あぁ。
ゲーム内で冤罪だと判明するのはシルバリウスが死んだ後、国王への勇者パーティ帰還の報告での事だった。
シチュエーションは違うものの、確かにゲームの第三王女はシルバリウスが奴隷に落とされた事を全く知らず、その報告時に初めて知り、自分の行動で冤罪に追い込んでしまった事を悔やむのだ。
「リョウコさんが結婚しないなら、私が結婚しても良いわ。フォゼッタ王国でも活躍していたんでしょう?
また戻ってうちの国で活躍すると良いわ」
「……」
「……」
「……」
……色々凄すぎて、ヤバイ。
リョウコ2号がここにいる。
シルバリウスが死んで無い場合はこんなパターンになるのか。
皆、言葉が出ないようで、暫く無言になる中、なぜ無言になっているか分かっていない第三王女が首を傾げている。
ローワン王国国王が焦りつつ必死に言葉を紡ぐ。
「り、リューイ殿、その今のは聞かなかった事にしてくれ。ははは」
影の薄かった宰相も取り敢えず誤魔化す方向に動いたようだ。
「そ、そうですね。こちらの国の者が大変失礼をしたようで、先ずは王城へ移動しませんかな?」
体調は悪いがこのままローワン王国に世話になる気はない。
「ご挨拶申し上げるのが遅くなり申し訳ございません。フォゼッタ王国フォンデルク辺境伯家三男リューイ・フォンデルクと申します。
せっかくのお言葉ですが、私達はシルバリウスとこのまま帰りたいと思います」
ゲーム時代から嫌いな第三王女だ。
これ以上いらいらしたくも無いし、早くシルバリウスと2人きりになりたい。
……のに。
「まぁ、シルバリウスはどちらに帰るの? 帰るなら私達のところでしょう? お父様、今度こそシルバリウスを近衛騎士にしてくださいますよね? あ、婚約者かしら」
――ピキッ
……婚約するやら婚約破棄騒動を目の前で見ていた筈なのに、ちょっと頭の出来がお花畑すぎやしないだろうか?
「こ、これ、リセル。シルバリウス殿は既に隣国で婚約しているのだよ」
「? ええ。でも辺境伯なのでしょう? 辺境伯爵家の者と結婚するより、私の近衛騎士になった方が良いでしょう? 結婚がしたいなら私が結婚してあげるし、王女と結婚した方が良いでしょう?」
国王は冷や汗をダラダラかいているし、第三王女は本当にその方が良いと思っているようでタチが悪い。
宰相がこちらをチラチラ見ながら言葉を紡ぐ。
「姫さま、実はシルバリウスは犯罪を犯し、奴隷に一度落ちているのですよ。今は何故だかフォゼッタ王国に居ますがね」
――ピキピキッ
宰相はシルバリウスの奴隷落ちを知っているらしい。
奴隷の無断解放等は当然犯罪行為だ。それを不問にするから、こちらの発言も見逃せ辺りが宰相の思惑なのだろう。
「あら? 奴隷だったの? それなら尚更この国の物じゃない? 私は前が奴隷だろうと気にしないわ。シルバリウスは以前より素敵になっているし」
――プツン
……ああ、もう無理だ。
ルドルフが声をかけて来た。
「そうでしたね。今外します」
勇者の危険性に気がついた、カメルとルドルフは勇者に脅された後も、水面下で動こうとしてくれていたのだ。
だが、警戒していたらしい勇者に見つかり結局、ペット用首輪を腕に嵌められ、”余計な事はしないように”命じられていた。
彼らが自分からアクションを起こす事は出来なくなったが、調査していたサスケを見て見ぬ振りをしたり、会話の中にさり気なく情報を入れていたりと何かと出来る範囲で協力してくれていたのだ。
だから、さっさと外そうと一歩を踏み出そうとした所で、またギュッと腰に回った腕がキツくなった。
「うぐっ。苦しいって」
シルバリウスの髪を撫でる。
あーシルバリウスの生髪ヤバイ。
ちょっと栄養不足? っぽいけど、この銀の髪やっぱり良いよね……。
っと現実逃避している場合ではなかった。
「ほら、ヴィーも一緒に行くよ」
ちょっと乱暴にシルバリウスの背中を叩くと無理矢理立たせて、ルドルフとカメルの方へ行こうとするが、その前に、ローワン王国国王を守っている騎士達の方へ向かって声を掛ける。
「騎士の方、今、勇者であるリョウコは魔法を使えなくしているので、捕まえるならどうぞ」
未だ喚いているリョウコに視線を向けた後、今度こそルドルフとカメルの方に歩き出す。
シルバリウスはひっつき虫のように俺の背中にくっついていて、歩きにくいがちょっと可愛い。
ニヤニヤしながら、2人の腕輪を一瞬で凍らせて、2人を解放。所詮元はペット用首輪。隷属の首輪ほど強く無いので、こちらの魔力消費も殆どない。
振り向くと国王一家と捕らえられた勇者とその他貴族。
「……」
「……」
「……」
暫くお見合い状態が続く。
お互いどう交渉を持っていくか考えているのだ。
こちらも警戒心を高める。
残念ながら、こちらの確実な味方となり得るのはシルバリウスだけで、他はみんなローワン王国の王族や貴族なのだ。
ローワン王国側は失態続きで、無かった事にする為に、俺たちを消そうとする可能性もなくは無い。
ただ向こうも、ペット用首輪の改変を知らず、あっさり勇者を捻じ伏せた俺の脅威度が分からず動けないのだろう。
……交渉は他の人に任せたいんだが、ここがローワン王国である以上、どさくさに紛れて逃げる事は出来るだろうか?
暫く時間稼ぎをしていれば、サスケが応援を連れてきてくれるだろうか……。
サスケの闇属性の中の技に”影移動”というものがあるが、色々と制約が多いのだ。
その名の通り、影の中を移動出来るのだが、ダンジョン内ではボス戦以外使用できなかったり、影がないと使用できなかったり、長距離は移動できなかったり、光属性持ちを連れての影移動は出来なかったりと、転移の下位互換のようだ。まぁ、転移より魔力消費は少ない為、何度も使えて近距離戦闘には持ってこいなのだけどね。
……怠いし早く帰りたいな。
と思っていた所、第三王女が出てきた。
「お父様ちょっとよろしいかしら?」
「今取り込み中なんだが、まぁ、なんだ?」
噂通り、ローワン王国国王が第三王女に甘々なことが窺い知れる。
シルバリウスの手が冷たくなっている。
第三王女登場で緊張しているのか……。
「そこにいるのはあのシルバリウスよね? リョウコさんに聞いていたけど、本当に見つかるなんて。
探したのよ? 皆遠くに行ったとしか言わないんですもの」
……あぁ。
ゲーム内で冤罪だと判明するのはシルバリウスが死んだ後、国王への勇者パーティ帰還の報告での事だった。
シチュエーションは違うものの、確かにゲームの第三王女はシルバリウスが奴隷に落とされた事を全く知らず、その報告時に初めて知り、自分の行動で冤罪に追い込んでしまった事を悔やむのだ。
「リョウコさんが結婚しないなら、私が結婚しても良いわ。フォゼッタ王国でも活躍していたんでしょう?
また戻ってうちの国で活躍すると良いわ」
「……」
「……」
「……」
……色々凄すぎて、ヤバイ。
リョウコ2号がここにいる。
シルバリウスが死んで無い場合はこんなパターンになるのか。
皆、言葉が出ないようで、暫く無言になる中、なぜ無言になっているか分かっていない第三王女が首を傾げている。
ローワン王国国王が焦りつつ必死に言葉を紡ぐ。
「り、リューイ殿、その今のは聞かなかった事にしてくれ。ははは」
影の薄かった宰相も取り敢えず誤魔化す方向に動いたようだ。
「そ、そうですね。こちらの国の者が大変失礼をしたようで、先ずは王城へ移動しませんかな?」
体調は悪いがこのままローワン王国に世話になる気はない。
「ご挨拶申し上げるのが遅くなり申し訳ございません。フォゼッタ王国フォンデルク辺境伯家三男リューイ・フォンデルクと申します。
せっかくのお言葉ですが、私達はシルバリウスとこのまま帰りたいと思います」
ゲーム時代から嫌いな第三王女だ。
これ以上いらいらしたくも無いし、早くシルバリウスと2人きりになりたい。
……のに。
「まぁ、シルバリウスはどちらに帰るの? 帰るなら私達のところでしょう? お父様、今度こそシルバリウスを近衛騎士にしてくださいますよね? あ、婚約者かしら」
――ピキッ
……婚約するやら婚約破棄騒動を目の前で見ていた筈なのに、ちょっと頭の出来がお花畑すぎやしないだろうか?
「こ、これ、リセル。シルバリウス殿は既に隣国で婚約しているのだよ」
「? ええ。でも辺境伯なのでしょう? 辺境伯爵家の者と結婚するより、私の近衛騎士になった方が良いでしょう? 結婚がしたいなら私が結婚してあげるし、王女と結婚した方が良いでしょう?」
国王は冷や汗をダラダラかいているし、第三王女は本当にその方が良いと思っているようでタチが悪い。
宰相がこちらをチラチラ見ながら言葉を紡ぐ。
「姫さま、実はシルバリウスは犯罪を犯し、奴隷に一度落ちているのですよ。今は何故だかフォゼッタ王国に居ますがね」
――ピキピキッ
宰相はシルバリウスの奴隷落ちを知っているらしい。
奴隷の無断解放等は当然犯罪行為だ。それを不問にするから、こちらの発言も見逃せ辺りが宰相の思惑なのだろう。
「あら? 奴隷だったの? それなら尚更この国の物じゃない? 私は前が奴隷だろうと気にしないわ。シルバリウスは以前より素敵になっているし」
――プツン
……ああ、もう無理だ。
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