62 / 83
冷戦
しおりを挟む
シルバリウスが勇者と同じ調査隊に入り、やはりハイレベルなチームになったからか、予定調和と言うべきなのか調査はとても進み、調査開始から2ヶ月、橙色のダンジョン魔力石を発見した。
現在、橙色と言う事でダンジョンは危うい状況ではあるものの、ダンジョン魔力石が発見できれば、ダンジョンの入口も近くにある筈だから、引き続き調査は続けるものの一区切りと言った所か。
漆黒の森の規模を考えると、2ヶ月で発見できたのはとても順調と言わざるを得ないだろう。
……俺とシルバリウスの関係以外はね!!
調査隊メンバーが発表された日、愕然としてエドガーに詰めよってシルバリウスの事を聞いたら、勿論勇者であるリョウコからも話はあったが、シルバリウス自身からの申し出もあり編成したと。
調査隊としても戦力を分散させるより、少数精鋭とサポート部隊に分けた方が良いのではという意見があった為シルバリウスの申し出は通ったらしい。
勿論、シルバリウスにも直接聞いたが”勇者関係で調べたい事があるから、申し訳ないが少しの間側を離れさせて欲しい”と言われてしまったのだ。
勿論調査ならプロのサスケ等も協力して貰う事も出来ると言ったが、”すまない”の一言でそれ以上踏み込んで欲しそうになく拒絶されたように感じた為、俺も何も言えなかった。
その日以来、森の奥深くに入ってしまうシルバリウス達調査隊は帰ってきても直ぐにまた森に入ってしまうし、俺の方もこんな時なのに長男が留学先からまだ帰ってきていない為、俺がダンジョン発見後の運営や必要な資材投入等の準備を主導で進めていくように言われ(エドガーは脳筋だし、調査隊の方をメインで運営、父親は隣国とのダンジョンにおける利権関係など国を相手に協議中)お互い忙しくてゆっくりする時間もなく2人の仲は未だギクシャクしたままとなっている。
実際調査隊がダンジョン魔力石を発見して一昨日一度全員帰ってきたのだが、本日慰労会的なものを主催する為に俺はバタバタしている。
一昨日も昨日も久しぶりにシルバリウスと同じベッドに入ったものの、妙な緊張感があり大した事は何も話していない。
シルバリウスを信じているから、待っていようと思ったものの、俺には2ヶ月が長く若干心が折れかけている気がする。
それもこれも、屋敷の大広間で開催している無礼講の立食慰労会という場で、目の前でイチャイチャする姿を見せられれば仕方ないだろう。
「シル、この料理がとっても美味しいですよ」
「ああ」
「シル、あそこの料理とってくださらない? 遠くて届かなくて」
シルバリウスが皿に料理を乗せてリョウコに渡す。
「シルありがとう」
リョウコはそう言ってわざとシルバリウスに手を触れたり、皿を持っていて貰ったり、飲み物を取って来させたりシルバリウスを良いように使っている。
……俺は何を見せられているんだろう?
リョウコはチラチラこちらを見ているから、わざとやっている事は分かる。シルバリウスも一応リョウコは隣国の勇者だから立てているのも分かる。
慰労会だから、屋敷に滞在している各専門家や少数とはいえローワン王国の貴族なども参加しているから蔑ろにするわけにはいかない。
と、理屈では分かるが俺の心が納得出来ない。
……ヴィーも”シル”なんて愛称で呼ばせて、何も言わないとか何だよ。しかもネーミングセンス悪くない? ”汁”にしか脳内変換されないんだけど。
それに、召使いじゃないんだから、全部言うこと聞かなくても……。
これが嫉妬による怒りなんて事は百も承知だ。
だから表に出さないように頑張っているのだ。
リョウコがまたシルバリウスを連れて違うテーブルに行った。
銀髪に準正装をした今この国で一目置かれているシルバリウスと、シルバリウスの腕に絡みつくようにくっ付いている、黒いロングヘアーで守って上げたくなるようなのに実際は強い小柄なリョウコ。
……シルバリウスの事は信じているが、その後ろ姿はとても似合っていて、何だか声をかけ辛かった。
先程までの嫉妬心は急激に冷え、何だか虚しくなる。
所詮俺は死ぬ予定だったモブなのだ。
リョウコに言われなくとも、俺がモブな事なんて俺が一番わかっている。
あの後ろ姿は、もしシルバリウスが生きる未来があったのなら、これが正道なんじゃないかと思わせるものだった。
それに、この国では同性婚が認められているが、俺ではシルバリウスに子供を与えてあげる事は出来ない。
リョウコが絶対産めると決まった訳ではないが、全く可能性がない俺と違って、リョウコならシルバリウスに子供を作ってあげる事も出来るかもしれない。
国としても、隣国との架け橋になるし、お互い強い者同士の子供は国に利益をもたらす。
お互い思い合っていると信じたい。
だけど、国からの命令やゲームの強制力なんてものがあるのであれば抗えないだろう。
覚悟しておいた方が良いのだろうか……?
いや、まだ決まった訳ではないから、今日話し合おう。
逃げる案が有効であれば、逃げる事も出来るだろうし。
……今のシルバリウスは一緒に逃げてくれるのだろうか?
取り敢えずは俺も挨拶周りをしないといけない。
不安を隠しながら、調査隊メンバーや学者達へ挨拶を行い夜に備えたが、その日シルバリウスが俺の部屋に帰ってくる事はなかった。
――2ヶ月後。あるゴシップ紙がローワン王国で発行されていた。
“フォゼッタ王国で最大級のダンジョンが見つかる”
ローワン王国とフォゼッタ王国共同で行っていたダンジョン探索だが、無事発見されたとの事。ダンジョン魔力石は濃い橙色になっており予断を許さない状況だが、発見したのは我らが勇者パーティと、バジリスクを倒したフォゼッタ王国の英雄だ。
因みにこの勇者と隣国の英雄の2人は度々街中でデートしている姿を目撃されており、2人の手首にはシルバーの揃いの腕輪がきらりと光っているそうな。婚約秒読みと言われている2人のその後にも注目だ。
現在、橙色と言う事でダンジョンは危うい状況ではあるものの、ダンジョン魔力石が発見できれば、ダンジョンの入口も近くにある筈だから、引き続き調査は続けるものの一区切りと言った所か。
漆黒の森の規模を考えると、2ヶ月で発見できたのはとても順調と言わざるを得ないだろう。
……俺とシルバリウスの関係以外はね!!
調査隊メンバーが発表された日、愕然としてエドガーに詰めよってシルバリウスの事を聞いたら、勿論勇者であるリョウコからも話はあったが、シルバリウス自身からの申し出もあり編成したと。
調査隊としても戦力を分散させるより、少数精鋭とサポート部隊に分けた方が良いのではという意見があった為シルバリウスの申し出は通ったらしい。
勿論、シルバリウスにも直接聞いたが”勇者関係で調べたい事があるから、申し訳ないが少しの間側を離れさせて欲しい”と言われてしまったのだ。
勿論調査ならプロのサスケ等も協力して貰う事も出来ると言ったが、”すまない”の一言でそれ以上踏み込んで欲しそうになく拒絶されたように感じた為、俺も何も言えなかった。
その日以来、森の奥深くに入ってしまうシルバリウス達調査隊は帰ってきても直ぐにまた森に入ってしまうし、俺の方もこんな時なのに長男が留学先からまだ帰ってきていない為、俺がダンジョン発見後の運営や必要な資材投入等の準備を主導で進めていくように言われ(エドガーは脳筋だし、調査隊の方をメインで運営、父親は隣国とのダンジョンにおける利権関係など国を相手に協議中)お互い忙しくてゆっくりする時間もなく2人の仲は未だギクシャクしたままとなっている。
実際調査隊がダンジョン魔力石を発見して一昨日一度全員帰ってきたのだが、本日慰労会的なものを主催する為に俺はバタバタしている。
一昨日も昨日も久しぶりにシルバリウスと同じベッドに入ったものの、妙な緊張感があり大した事は何も話していない。
シルバリウスを信じているから、待っていようと思ったものの、俺には2ヶ月が長く若干心が折れかけている気がする。
それもこれも、屋敷の大広間で開催している無礼講の立食慰労会という場で、目の前でイチャイチャする姿を見せられれば仕方ないだろう。
「シル、この料理がとっても美味しいですよ」
「ああ」
「シル、あそこの料理とってくださらない? 遠くて届かなくて」
シルバリウスが皿に料理を乗せてリョウコに渡す。
「シルありがとう」
リョウコはそう言ってわざとシルバリウスに手を触れたり、皿を持っていて貰ったり、飲み物を取って来させたりシルバリウスを良いように使っている。
……俺は何を見せられているんだろう?
リョウコはチラチラこちらを見ているから、わざとやっている事は分かる。シルバリウスも一応リョウコは隣国の勇者だから立てているのも分かる。
慰労会だから、屋敷に滞在している各専門家や少数とはいえローワン王国の貴族なども参加しているから蔑ろにするわけにはいかない。
と、理屈では分かるが俺の心が納得出来ない。
……ヴィーも”シル”なんて愛称で呼ばせて、何も言わないとか何だよ。しかもネーミングセンス悪くない? ”汁”にしか脳内変換されないんだけど。
それに、召使いじゃないんだから、全部言うこと聞かなくても……。
これが嫉妬による怒りなんて事は百も承知だ。
だから表に出さないように頑張っているのだ。
リョウコがまたシルバリウスを連れて違うテーブルに行った。
銀髪に準正装をした今この国で一目置かれているシルバリウスと、シルバリウスの腕に絡みつくようにくっ付いている、黒いロングヘアーで守って上げたくなるようなのに実際は強い小柄なリョウコ。
……シルバリウスの事は信じているが、その後ろ姿はとても似合っていて、何だか声をかけ辛かった。
先程までの嫉妬心は急激に冷え、何だか虚しくなる。
所詮俺は死ぬ予定だったモブなのだ。
リョウコに言われなくとも、俺がモブな事なんて俺が一番わかっている。
あの後ろ姿は、もしシルバリウスが生きる未来があったのなら、これが正道なんじゃないかと思わせるものだった。
それに、この国では同性婚が認められているが、俺ではシルバリウスに子供を与えてあげる事は出来ない。
リョウコが絶対産めると決まった訳ではないが、全く可能性がない俺と違って、リョウコならシルバリウスに子供を作ってあげる事も出来るかもしれない。
国としても、隣国との架け橋になるし、お互い強い者同士の子供は国に利益をもたらす。
お互い思い合っていると信じたい。
だけど、国からの命令やゲームの強制力なんてものがあるのであれば抗えないだろう。
覚悟しておいた方が良いのだろうか……?
いや、まだ決まった訳ではないから、今日話し合おう。
逃げる案が有効であれば、逃げる事も出来るだろうし。
……今のシルバリウスは一緒に逃げてくれるのだろうか?
取り敢えずは俺も挨拶周りをしないといけない。
不安を隠しながら、調査隊メンバーや学者達へ挨拶を行い夜に備えたが、その日シルバリウスが俺の部屋に帰ってくる事はなかった。
――2ヶ月後。あるゴシップ紙がローワン王国で発行されていた。
“フォゼッタ王国で最大級のダンジョンが見つかる”
ローワン王国とフォゼッタ王国共同で行っていたダンジョン探索だが、無事発見されたとの事。ダンジョン魔力石は濃い橙色になっており予断を許さない状況だが、発見したのは我らが勇者パーティと、バジリスクを倒したフォゼッタ王国の英雄だ。
因みにこの勇者と隣国の英雄の2人は度々街中でデートしている姿を目撃されており、2人の手首にはシルバーの揃いの腕輪がきらりと光っているそうな。婚約秒読みと言われている2人のその後にも注目だ。
応援ありがとうございます!
20
お気に入りに追加
1,308
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる