病弱モブは推しのサポキャラを助ける為に、お金も積むし、ゲームのシナリオも改変します

あやまみりぃ

文字の大きさ
上 下
60 / 83

勇者パーティ現る

しおりを挟む
 さて、早いもので勇者パーティの3人が屋敷に訪れた。
 取り敢えず、出迎えに出ればやはりリョウコは俺の隣にいるシルバリウスに見惚れていたんたけど、シルバリウスと共に屋敷を案内すればする程なんか壊れていった。
 “は? なんでロイが従僕?”、”え? なんかハワードっぽいのが庭に居たような。気のせいよね……”、”ニアがメイドって……似合うけどさ……”、”カーラが料理長? え? 錬金術師だよね? え? 錬金術で料理作ってる? ”、”まさかサスケまでは居ないわよね”
 よく分からないテンションで辺りを見回しながらブツブツ言うものだから、同じ勇者パーティのカメルとルドルフも若干引いていた。
 ……まぁ、2人以外の勇者パーティメンバー候補が1つの屋敷に全員居たらそうなるよね(笑)
 
 そして当然の事ながらその日の晩餐ではエドガーとの言い合い合戦が勃発。
「やっぱり転生者でしょ」
「何の話か分かりかねます」
「これだけ、屋敷にパーティメンバー揃えておいて何言ってるのよ? この1ヶ月パーティメンバー探す為にどれだけ国中を回ったと思っているのよ!」
「分かりかねます」
 エドガーはこめかみをピクピクはさせながらも冷静に回答する。
「居るはずの場所に誰1人居ないと思ったら、ここに全員集合って、何なの? 自分が勇者になって無双しようとしていたわけ? 残念ねぇ。私が現れちゃって」
「……マジ意味わからん」
「ほら! それ! “マジ”とか共通大陸言語には無い筈よ! 白状なさい!」
「……知らないものは知らねぇんだよ」

 エドガーがチラッと俺を見たものの、辟易したようにリョウコの相手をする。
 “マジ”とか教えたのは俺だからね、エドガーは何か勘付いたのかもしれない。
 分かった上で矢面に立ってくれるようなので、取り繕っていた仮面が早々に剥がれ、地が出てしまっている件は他の人には内緒にしといてあげよう。
 まぁ、スチュアート経由で父親にバレるかもしれないが。

 それにしても、勇者は能力は高そうだが、マナーは全然なっていないようだ。
 いくら客人とは言え、招かれた家の晩餐でギャーギャー騒ぐのはあり得ない。
 それも、この屋敷の主人として何度か話を逸らそうとしているにも関わらず、話を戻すし果ては聞こえないフリ。
 一応勇者は18歳設定で俺より年上の筈なんだけど、マナー所か一般常識もあるのか怪しげだ。
 因みに俺を邪険に扱う素振りの勇者に、シルバリウスの表情は無だ。

 そして、あっさりシルバリウスの誕生日が過ぎ、勇者は調査の合間に暇があればエドガーやシルバリウスに絡みにいっていた。
 ……本当はシルバリウスの誕生日も質素でも素敵な誕生日を用意しようと思っていたんだよ? とりあえず、今は語りたくない程リョウコが邪魔だったとだけ言っておく。
 リョウコの残念さとエドガーとシルバリウスへの纏わり付きに屋敷の雰囲気もぎこちない雰囲気になっていく中、年明けから本格的に調査をする為に、隊を編成するとなった時、やっと俺の事に勘付いたのか勇者に”2人で会いたい”と呼び出された。
 シルバリウスを誤魔化すのが大変だったけど、俺の使用人も駆使して同じ屋敷内だし何とか1人で会いに行ったとも。
 
 そして今。
 ドアは開けっぱなしの使われていない客室。
「あんたが転生者なんでしょ? そもそもあんたゲームに居なかったもんね。モブでシルバリウス様の婚約者ポジとかありえない!」
「……」
2週間も屋敷で過ごしていてやっと気が付いたのか
「シルバリウス様は私の前世の最推しなのよ! 銀髪に青目に端正な顔立ち、普段は無表情でたまに出る表情が何とも素敵で、主役級なのに奴隷身分っていうのがまたイケナイ関係を匂わせるようで背徳的なのよね」
「……」
 前半部分は分かる! 今も生で見る笑顔は鼻血が出ないようにするのに大変なのだ
「だから、召喚されてこの世界に来たと分かった時、シルバリウス様をお助けして、最後死なせない為に必死でレベル上げをしたのよ。助けて冤罪も晴らしたら私に惚れるはず。もうイケメン奴隷が心から主人に尽くすとかもう夢の世界よね」
「……」
この勇者痛くないか? 助けさえすれば自分に惚れると思っている?
しかも奴隷から解放はしないんだ。
……そういえば、そういう同人誌もあるって前世で誰かに聞いたことがあったような。
「なのにいつまで経ってもシルバリウス様は現れないから、城の人に聞けば死んだ事になっているし、じゃあさっさと終わらせるかと思えば、こんな所にいるし。
既に奴隷から解放されているのは残念だったけど、まぁゲームより表情が豊かそうでプラマイゼロってところかしら。
という事で、転生者でもどうでも良いんだけどモブのあなたは要らないの。婚約破棄してくれるかしら?」
 ここまで高圧的に言い切る勇者に唖然とする。
 頭が足りないかなとは薄々思っていたが、いくら勇者といえど権力を振りかざして他国の貴族の息子の婚約者を奪い取ろうなんて、国の代表として来ている自覚はあるのだろうか?
「すみません。あなたの仰っている事は分かりかねますが、シルバリウスとは既に結婚を前提とした婚約を結んでおり、国王陛下と教会の承認もある為そんなに易々と婚約破棄する事は出来ません。それに私もシルバリウスも同意しないでしょう」
 国王陛下への根回しは父親がしっかりやってくれているため、正式な反論が可能なのだ。
 まぁ国としてもよその国にシルバリウスをやってしまうよりは、自国の貴族の息子の婚約者にする方が良かったのだろう。
「あなたがシルバリウス様の何が分かるって言うのよ? シルバリウス様は私と結婚するのよ」
「……」
は? それは俺が言いたい事だわ。
勇者の行動で屋敷の雰囲気が悪くなっても気付かない位だから空気読めないんだろうなとは思ってだけど、ここまでとは。
「国の奴隷という枷は無くなったけど、あなたという枷が付けられて、そこから助け出すのは私。私が来たからにはあなたはもう退場して良いのよ。私が円満に言っているうちに婚約破棄しなさい。それとも悪役として断罪されたいの? あなた死ぬ筈だった所をせっかく生き延びたんでしょう? このままだと今度は乙女ゲームの悪役みたいに断罪されかねないわよ?」
そういう理屈ね! って乙女ゲーム? この世界は俺のやっていたRPGじゃないのか?
「……”乙女ゲーム”?」
「あら転生者の癖に知らないの? まあ、男だったら知らないか、この元のゲームはRPGだけど、テンプレ的には私が主人公なんだから乙女ゲーム要素も入るでしょう。そういう同人誌もいっぱい出ていたし」
「……」
 ちょっと一安心。確かにこの世界がゲームだけを元にした世界とは限らないけど、同人誌の世界とも限らない。
 そして、俺はこの世界で生きてきたのだ。元の世界はどうであれ、今生きている人達がこの世界を作っていると言うことを知っている。
「私もあなたを断罪したいとは思わないわ。でも今のままだとあなたの命の保証はできない。うちの国王にも、婚約者がいる人とは縁談を認められないとか言われてるし」
「……」
 再び唖然。
 ナチュラルに他国の貴族を脅しているんだけど。この勇者。しかも国王は婚約者がいる人は除外という意味で非常識な勇者に常識を言っただけで、婚約破棄させてこいという意味では無いと思うよ?
「だから別れてね。まぁ、あなたが未練たらたらでも、近いうちにシルバリウス様は私を選ぶと思うわ。そうしたら下手な足掻きなどせず、さっさと婚約破棄するのがお互いの為にも良いと思うの。私も無駄に傷付けたいわけじゃ無いから、モブはモブらしく慎ましく生きていくのが良いと思うわ。では失礼します」
 勇者は一方的に言いたいことだけ言って去っていった。
 ――シュタッ
 天井からサスケが降りてきた。
「殺ル?」
 多分通じて無い話もあるだろうけど、主人が侮辱されている事や今後の生命を脅かす発言はわかったのだろう。なんか影が蠢いていて心なしかカタコトのように聞こえたけど大丈夫だろうか。
「いや、自滅するだろうから放っておこう」

 ――そして数日後、年明けからの調査隊メンバーにエドガー率いる調査隊のメンバーにシルバリウスの名前はなく、リョウコ率いる調査隊のメンバーに名前があった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人リトと、攻略対象の凛々しい少年ジゼの、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です(笑) 本編完結しました! 『伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします』のノィユとヴィル 『悪役令息の従者に転職しました』の透夜とロロァとよい子の隠密団の皆が遊びに来る、舞踏会編はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 舞踏会編からお読みいただけるよう、本編のあらすじをご用意しました! おまけのお話の下、舞踏会編のうえに、登場人物一覧と一緒にあります。 ジゼの父ゲォルグ×家令長セバのお話を連載中です。もしよかったらどうぞです! 第12回BL大賞10位で奨励賞をいただきました。選んでくださった編集部の方、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです。 心から、ありがとうございます!

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

処理中です...