病弱モブは推しのサポキャラを助ける為に、お金も積むし、ゲームのシナリオも改変します

あやまみりぃ

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始まりのスタンピート

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 各場所への配置が終わり、太陽が真上に差し掛かり緊張感が高まって行く中、それは起こる。
 森全体がドドドと音を立て始め、地面が微かに揺れ始めたのだ。
 現在の騎士団と兵団にはスタンピートを実際に経験した者は居ない。
 リューイの周りが緊張していても、騎士団や兵団の大半は、そもそも信じて居なかった。
 それに、突然午前中に今日だと思うと知らされて、戸惑いの方が強かったのだ。
 そんな集団も、流石にこの雰囲気で悟ったようだ。
 暫くして森から、大量の魔物がこちらに出てくるのが見えた。
 遮蔽物が無いので遠くても良く見えるのだ。そして遊撃部隊が動き出す。
 流石遊撃部隊、魔物を倒していくのが遠くからでも分かるが、今回は魔物の総数が違う。
 遊撃部隊を抜けてくる魔物が増えて来たものの、毒の沼や麻痺する沼にかかり、倒れる魔物が増えてきた。
 だがそれも時間が経てば、倒れた魔物を踏み越えて来る魔物が増えた。
 確かにダンジョンでは魔物が消える為、有効打だっただろうが、ダンジョン外では魔物の死体は残るのである。
 せっかくの毒沼利用されないのは勿体ないという事で、ニアを呼び出し、「熱」と「火」を操り、安全圏から毒沼に倒れる魔物の処理を頼んだ。
 ハワードは魔物に押されてイバラと土で作った囲いが壊されかけては随時修復するという、大変な役割をカーラとタッグを組んで行なっている。
 ニヤニヤしながら、魔力回復薬(試作品)を持つカーラと、青白い顔で必死に魔法を操作するハワードの対比がなんとも言えず、そっと目を離した。
 防衛ラインでは、先程から戦闘が始まり、今の所は撃ち漏らしはない。
 が、普段からシルバリウスやサスケやスチュアートを見ているからだろうか? 本当に騎士団や兵団の人? という位に無駄な動きが多く、長時間戦えないのでは無いかと思う。
 確かに連携は上手いのだが、案の定2時間経つ頃には怪我人がチラホラ出はじめ、疲れを見せ始めていた。
 今やっと三分の一程倒した所だろうか。
 あまり口出しはしたくなかったが、死人が出てからでは遅いと、スチュアートに目配せをして騎士団や兵団を指揮しているクリスの元に向かう。
「クリスさん」
「リューイ様」
「我々がサポートに入るので、遠距離タイプと近距離タイプを均等に3つのチームに分けてくれる? おそらく今やっと三分の一って所だけど、このままじゃ死人が出そうだから、3つのチームに分けて30分ずつ交代にすると良いと思う。1チーム30分戦闘したら、1時間休めるように」
「何故三分の一と……いえ、聞いてはいけないのでしたね。なんでもありません。前回のスタンピートの数値を参考に考えてしまいましたが、これ以上長期戦になるならばとこちらも同じ事を考えていましたので、そうさせていただきます」
 クリスは驚いた顔をしながらも、あまり詮索しないようにでもエドガーに言われたのか、素直に隊を編成しなおした。
 人数が減った分防衛ラインを突破しそうな魔物が出て来るが、それはリューイとスチュアートで屠った。
 怪我人には、速攻で俺の白の補助媒体で治癒魔法を飛ばしたが、速攻すぎて怪我をした筈が怪我がなく、首を傾げるという光景が多数発生したのは余談だ。
 そして、邪魔な死体の処理をサスケと非戦闘員にも手伝って貰いつつ、3時間とちょっと。
 もう夕暮れになる頃、魔物の発生が止まったようでこちらの防衛ラインまで来る魔物が居なくなった。
 それは漆黒の森付近にいる遊撃部隊も同様だったようで、魔物がいない事を確認したからかこちらに向かって来ていた。
「終わりましたかね」
 クリスの一言にそれフラグじゃない?
 と思って周りを見回したものの何も起こらず、ふぅと一息ついた。
「スチュアート屋敷の方の被害が無いか確認して来て」
「かしこまりました」
 スチュアートが現場を離れ、皆んなも終わったことが分かったのか、歓声が上がる。
 と、森の奥からすごい速さで何か飛んでくる。
 ……やっぱりフラグだったか!
「遠距離攻撃部隊、狙撃準備!」
 急いで叫んだものの、歓声に声がかき消され、近くに居た人しか聞こえていなかったが、クリスがハッとしたように気付き、部隊を整えるものの、敵はもう数秒もせずにこちらへ来るだろう。
 
 やっぱり最後は大物なのか……。
 勇者パーティが最後に戦って、シルバリウスが死んだのも魔物の王とされるドラゴンだったが、こちらに来たのは全長30メートル程のバジリスクだった。
 蛇のように長い体と尻尾の割には胴体はトカゲのようでもあり、ドラゴンの劣化版と言われればそうとも見えそうな感じである。
 ゲームでも、クエストで出てきては居たが、サイズは今見ている目の前の魔物の三分の一以下だったような気がするんだが……。
 
「目を見るな! 石化の呪いがかかるぞ!」
 周りを見渡すも遠距離攻撃は間に合わなさそうで、このままの勢いだと自分達の頭上をそのまま飛び去って街まで行ってしまいそうである。
 遊撃部隊も恐らく気が付いたようだがまだ1キロは離れているだろう。
 使用人達もそれぞれ別の場所にいるようだ。
 地に落としてしまえば何とかなるし、シルバリウスが来れば一太刀で屠れるだろう。
 そこまでを一瞬で考え、補助媒体をホルスターにしまい、頭上を通り過ぎようとしたバジリスクの翼を目標に右手を突き出し氷魔法をかける。
「ぐっ」
 動きが止まるまで出力最大でかけ続けた為、無事にバジリスクの飛行を止める事には成功し、20メートルほど離れた所に墜落したが、地上でまだ暴れている。
 流石ボス的存在である。
 いち早く近付いて行った混成部隊の面々が吹っ飛ばされているようだ。
 再び飛び立とうとしていたバジリスクの足元にもう一度氷魔法を放ち、凍らせて物理的に足止めをする。
 出来ればその凶悪な縦横無尽に動く尻尾も凍らせたかったのだが、全体を凍らすまでは出力が足りず、キープをするので精一杯。
 歯を食いしばりながら断続的に氷魔法をかけ続けるが、氷魔法への魔力消費だけでなく、それとは別に体から急速に魔力が抜けて行くのが分かった。
 それでも、せめてハワードの「植物」魔法かサスケの「闇」魔法で足止めを俺の代わりに出来る人が来るまでと氷魔法を発動し続ける。
「ゴフッ」
 吐血した。
 ……えー。何このヒロイン属性的なやつ。吐血って。
 口の中が錆の味で苦しい。
 そういえば魔力一割は絶対切るなと言われていたっけ。

 回らない思考に、だんだん視界が暗くなっていき、体の感覚がなくなっていく。
 視界の端に、イバラがすごい速さでバジリスクに進んで行くのと、バジリスクの足に影が纏わり付いているのが見えた気がしてちょっと安心した。
 最後に銀の髪を持つ最愛の姿を見たくて探したが、結局視界が暗くなる方が先で見えなかった。
 少しの寂しさを感じつつも
 ……後は頼んだよヴィー
 と心で語りかけるとリューイの体は静かに地面へ倒れていった。
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