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始まりのスタンピート事前準備

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 エドガーと話し合った日、家族の状況等聞いたら、泣き疲れてまたいつの間にか寝ていたみたい。
 ……寝るの早すぎるね。
 結局詳しく話せなかったなぁと思ったら、翌日エドガーの方の予定は全部潰して、改めて時間を取ってくれたよ!
 エドガーには”調査より何よりお前の話の方が確実性が高いんだから、優先度は断然上だろ”と言われた。
 因みに他の人達は、エドガーと俺との微妙な雰囲気を察していて、病弱な弟との会合に賛成だったのもあったそうな。
 そして、今回は具体的な対策の話をする為、エドガーの信用のおけるあの眼鏡の副官クリスも同席したうえで話し合いをした。
 大方元々俺が考えていた作戦通りではあるが、エドガーの用意した騎士団と兵団の混成部隊にもスタンピートを経験させたいとの事でちょっと内容を変え、応援が間に合った場合のプランについても話し合い、翌日は騎士団と兵団で詳細の情報共有を行う事で話がまとまった。
 クリスは終始、俺とエドガーが急いで具体的な作戦を練っている事に不思議そうではあったけど、エドガーが上手く説明しといてくれるだろう。

 ***

 ――翌日

 パチリ。
 陽は昇り始めた所で、まだまだ朝早い時間だろう。
 珍しく、シルバリウスより早く目覚める。
 体を繋げてから、シルバリウスがより光り輝いて見えてしょうがない。朝日も眩しいがシルバリウスも同じ位眩しい。
 もっと見ていたいが、我慢してムクっと起きる。
「……おはよう。どうした?」
 俺が起きた事で、シルバリウスも起きたようだ。
「今日っぽい?」
 シルバリウスは一瞬固まった後、俺の言葉で何が今日なのか気が付いたようで、シルバリウスも朝の準備をしだす。
「すぐか?」
 目を瞑ってゲームの描写を思い出す。始まりのスタンピートは勇者召喚をする説明部分で少しだけ映像が出ていたのだ。魔物が活性化するのは夜だが、スタンピート自体は昼間だったように思う。
「いやぁ、もっと陽が昇ってからかな?」
 被害を極力出さない為にも、夜までには全て始末したい所だ。
 まずは、戦闘をこなす使用人達に、屋敷業務は他の者達に引継ぎ、スタンピートの事前準備をする様にサスケを経由してスチュアートに言って貰うよう指示を出す。
 そして、まだ寝ているかと思いきやもう起きていたエドガーに、おそらく今日がスタンピートだと言うと”はぁ~? マジかよ。昨日応援要請の手紙出したばっかなのに意味ねー。それにぶっつけ本番かよ”とぶつぶつ言っていた。
 次に、この屋敷の料理担当のカーラの元へ向かう。
 本来なら今頃朝食の準備をしている頃だろうが、先ほどの指示によりおそらく自室にいるはずだ。
 シルバリウスを伴い、使用人のいる区画に行く。
 
 ――コンコン
「はぁい」
「俺だけど、今いいかな?」
「あらぼっちゃま、ちょっと待ってね~」
 暫くした後、部屋のドアがあく。
「ごちゃごちゃしているけど、どうぞ」
 ドアを開けた先には、紫色の髪を持つ美しい女性がいる。全く料理人っぽくないが、まさしく本職は料理人ではない。
 俺は遠慮なく、部屋に入らせて貰う。
「例の物出来た?」
「うふふ、試作品は出来たわ。ハワードに使って貰う予定なの」
 カーラが持ってきたのは、ドロドロした緑色の液体? のようなもの。
 凄く草の匂いがする……。
「あー、これそのまま飲むの?」
「いいえ、薄めて使う予定よ。ただどの位薄めても問題ないかの実験が間に合ってないのと、味の改良には手を付けられていないの。まぁ実地で確認させて貰うわ」
「ハワード……ご愁傷様」
 このカーラの本職は錬金術師である。
 そして、この世界所謂HP回復薬を兼ねる前世で言うリポ○タンDみたいなのはあるのに、魔力回復薬が存在しなかったのだ。
 ゲームのようにステータスは見えないが、HP回復薬みたいなものはある。そして、ゲームでは魔力回復薬も普通にあった。ならば魔力回復薬もまだメジャーじゃないのか、まだ作られていないだけではないかと思ったのだ。
 そして、幸い近くには”漆黒の森”という大抵の薬草と量が揃う豊富な資源があり、うちの屋敷には未来の勇者パーティメンバーになり得た筈の錬金術師が居ると言う事で魔力回復薬の概念を説明し、開発して貰っていたのだ。
 とりあえず間に合って良かった。
 ……俺はまだ試作品は飲みたくないけど。
「じゃ、午前中に状態異常の沼の作成とハワードの囲い作成よろしく、出来たら都度地図に記載してエドガー兄上に情報共有しといて」
「分かったわぁ」
 漆黒の森の入り口は屋敷から近いと言っても、2キロはある。
 漆黒の森までは開けた土地になっており、戦闘にはもってこいだが、こちらは人数が少ないのだ。
 おそらくこの屋敷の方へめがけて来るとは思うが、森は横に広がっていて縦横無尽に来られても困る。
 その為、屋敷1.5キロ手前から屋敷500メートル前までカーラの「毒」と「水」属性を活かした状態異常を起こす沼を至る所に作り、更にハワードの「植物」と「土」属性を活かした囲いを作る事で、魔物をこちらが意図的に誘導し、道を狭める事で少数ずつ相対出来る様にした。即ち屋敷500メートル手前が防衛ラインで、騎士団と兵団が待機する場所である。
 もし撃ち漏らしがあれば、屋敷手前にいる俺と俺の護衛のスチュアートが最終防衛ラインになり、そもそも囲いを外れた魔物等の全体のはぐれ魔物についてはサスケと「音」属性魔法をもつロイの2人で対応するように言ってある。
 シルバリウスは当然漆黒の森付近で遊撃、そもそもの魔物数を減らす役割である。
 遊撃は騎士団と兵団からも何人か有用なスキルを持つ者が配置され、何故かシルバリウスに対抗意識を持つエドガーも指揮をクリスに任せて、遊撃部隊に参加する予定だ。
 本当は俺もそっちへ回りたかったが、全員の反対を受け今回は大人しくしている事にした。
 因みに、ニアは死んだ魔物を燃やす係として、屋敷待機である。
 ダンジョン内では消えてしまう魔物だが、スタンピートなどダンジョン外でも実態を保てる魔物は普通の魔物同様、死骸が残るのだ。

 何処か屋敷全体がソワソワする雰囲気の中、ダンジョンに詳しい学者が”漆黒の森”方面の魔力数値が異常である事を発見し、今後のスタンピート対策に魔力計測が役立つ事を提唱するきっかけになったスタンピートが始まる。
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