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調査隊到着
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そんなこんなで急ピッチで準備。
結局このままでは人数が多すぎて受け入れられない為、今まで使用していなかった別館も整え、足りない使用人は臨時で実家から派遣して貰ったりして、何とかギリギリ整った。
客を迎え入れる準備が整った所で、調査隊が到着したと連絡を受け、屋敷の外へ。
一応この屋敷の責任者的立場にあるからね。
今は使用人の指示に従って、馬や馬車などそれぞれ置いてきているようだ。
しばらく待っていると今回の調査隊代表者と何人かがやってきた。
「よう。この間ぶり」
茶髪の男、エドガーが声をかけてきた。
並び順的にエドガーが今回の責任者のようだ。
まさかまだ20歳(だった筈)のエドガーが責任者だとは思わなかった。
「……ようこそいらっしゃいました。準備は整えておりますので、まずはゆっくりおくつろぎください。
私はこれで失礼させていただきますが何かございましたら、連絡いただければと思います。それでは部屋の案内等させていただきます。スチュアートよろしく」
あとはスチュアートに頼むと、そそくさと逃げようとした。
……のだが、
――ガシッ
しっかり手を掴まれ言葉を投げかけられる。
「ちょっと待てよ」
……ですよね~。前世のアイドル兼俳優でこの言葉が有名な人が居たような気がすると現実から思考を飛ばしつつ、憂鬱な気分になりながら、振り返ると意外にもエドガーはばつの悪そうな顔をしていた。
少し驚きながらも、言葉を待っているが一向に話さないので、“先日まで寝込んでいて、病み上がりなので部屋に戻らせていただいても?”と言うと、ギョッとされ手を離してくれたので、これ幸いと逃げ出した。
今度は捕まらなかった。
とぼとぼ自室に向かう。
暫くは顔を合わせないといけない事に憂鬱だ。
何か小言を言われる事は無さそうだが、家族の事は蟠りになったまま。
逃げ出したくなる位心は乱れるし、出来れば関わらずに生きたい位なのに……。
「……イ、リューイ」
ハッと顔を上げると、いつの間にか自室に居て、シルバリウスが目の前に立っていた。
「どうしたリューイ」
ほっとする低い声。心配そうに声をかけてくれる。
うん。心配してくれる人はここにいる。
「今回の調査隊の責任者がエドガー兄上だったみたい。これから関わるとなるとそれがちょっと憂鬱でね」
「そうか。……その、兄上殿とは昔から仲が悪かったのか?」
珍しく、シルバリウスが踏み込んだ内容を聞いてくる。
「うーん。仲は良かった気がする……。外へ探検に出て迷子になって、一緒に父上に怒られたりしたような……。魔力枯渇症を発症する前の記憶があまりなくて、覚えていないけど」
「それでは、兄上殿も辛かっただろうなぁ」
辛い?
……でも、確かに本当に仲が良かったなら、俺は記憶が無いわ、治らない病気だわで家族も辛かったのかなぁ。
俺が悪いの?
でも見舞いにも来なかったのは、向こうだよね?
家族との深い思い出を思い出さなかったから、3年弱この屋敷で家族と会わずに過ごせたと思う。
そうしないときっと寂しくて、耐えられなかったから。
でも、思い出さなきゃいけなかった?
思い出せば来てくれた?
いや、思い出しても来なかっただろう。
だって、途中で思い出す可能性もあるのに、結局手紙が減り、誕生日プレゼントだけになったのだから。
今更どんな顔をして喋れば良いのか分からない。
いっそ要らないなら、要らないと切り捨ててくれれば良かったのに……。
今回はまた俺の価値が上がったから、接近してくるようになった?
有用だから、切り捨てるのをやめた?
魔力枯渇症になった俺は価値がないから切り捨てられた?
また利用価値がなくなったら捨てられる?
負の思考がぐるぐる回る中、ふいに唇に柔らかい何かが触れた。
視線を上げると、目の前にはシルバリウスの真剣な表情。
「また、難しく考えてないか?」
「そうかな? 俺の価値について考えていたんだよ。今は俺に価値ができたから利用する為に来たのかな? とか。俺がまた無価値になったら捨てられるのかな? とか思って。まぁ、俺も実家の力を存分に利用しているから、利用するなとは言えないけどさ」
シルバリウスは困った顔をしながら言う。
「確かに、利用し利用される関係もあるだろう。それが家族だとしてもあるかもしれないし、それがリューイの家族に当てはまるかもしれないし、当てはまらないかもしれない。
ただ、利用し、利用されるだけの関係だけが存在するということでもないと思う。それに価値の判断は人によって違う筈だ。
リューイはとても価値のある人間だよ。そうでなければ、スチュアートはじめ、リューイの周りにあんなに人は集まらない。もっと自信を持って大丈夫だ」
「そうなのかな。自信……」
……必要とされる人になりたい。
「大丈夫だ。遅くなってすまないな。今夜リューイの初めてを貰い受ける」
……ん?
何故、自信をつけるからその話へ?
ちょっと理解は及び難いが、ずっとお預け状態だったシルバリウスとの情事が行えるなら良いかと流す事にした。
決してシルバリウスの曇りない笑顔に流された訳じゃない。
結局このままでは人数が多すぎて受け入れられない為、今まで使用していなかった別館も整え、足りない使用人は臨時で実家から派遣して貰ったりして、何とかギリギリ整った。
客を迎え入れる準備が整った所で、調査隊が到着したと連絡を受け、屋敷の外へ。
一応この屋敷の責任者的立場にあるからね。
今は使用人の指示に従って、馬や馬車などそれぞれ置いてきているようだ。
しばらく待っていると今回の調査隊代表者と何人かがやってきた。
「よう。この間ぶり」
茶髪の男、エドガーが声をかけてきた。
並び順的にエドガーが今回の責任者のようだ。
まさかまだ20歳(だった筈)のエドガーが責任者だとは思わなかった。
「……ようこそいらっしゃいました。準備は整えておりますので、まずはゆっくりおくつろぎください。
私はこれで失礼させていただきますが何かございましたら、連絡いただければと思います。それでは部屋の案内等させていただきます。スチュアートよろしく」
あとはスチュアートに頼むと、そそくさと逃げようとした。
……のだが、
――ガシッ
しっかり手を掴まれ言葉を投げかけられる。
「ちょっと待てよ」
……ですよね~。前世のアイドル兼俳優でこの言葉が有名な人が居たような気がすると現実から思考を飛ばしつつ、憂鬱な気分になりながら、振り返ると意外にもエドガーはばつの悪そうな顔をしていた。
少し驚きながらも、言葉を待っているが一向に話さないので、“先日まで寝込んでいて、病み上がりなので部屋に戻らせていただいても?”と言うと、ギョッとされ手を離してくれたので、これ幸いと逃げ出した。
今度は捕まらなかった。
とぼとぼ自室に向かう。
暫くは顔を合わせないといけない事に憂鬱だ。
何か小言を言われる事は無さそうだが、家族の事は蟠りになったまま。
逃げ出したくなる位心は乱れるし、出来れば関わらずに生きたい位なのに……。
「……イ、リューイ」
ハッと顔を上げると、いつの間にか自室に居て、シルバリウスが目の前に立っていた。
「どうしたリューイ」
ほっとする低い声。心配そうに声をかけてくれる。
うん。心配してくれる人はここにいる。
「今回の調査隊の責任者がエドガー兄上だったみたい。これから関わるとなるとそれがちょっと憂鬱でね」
「そうか。……その、兄上殿とは昔から仲が悪かったのか?」
珍しく、シルバリウスが踏み込んだ内容を聞いてくる。
「うーん。仲は良かった気がする……。外へ探検に出て迷子になって、一緒に父上に怒られたりしたような……。魔力枯渇症を発症する前の記憶があまりなくて、覚えていないけど」
「それでは、兄上殿も辛かっただろうなぁ」
辛い?
……でも、確かに本当に仲が良かったなら、俺は記憶が無いわ、治らない病気だわで家族も辛かったのかなぁ。
俺が悪いの?
でも見舞いにも来なかったのは、向こうだよね?
家族との深い思い出を思い出さなかったから、3年弱この屋敷で家族と会わずに過ごせたと思う。
そうしないときっと寂しくて、耐えられなかったから。
でも、思い出さなきゃいけなかった?
思い出せば来てくれた?
いや、思い出しても来なかっただろう。
だって、途中で思い出す可能性もあるのに、結局手紙が減り、誕生日プレゼントだけになったのだから。
今更どんな顔をして喋れば良いのか分からない。
いっそ要らないなら、要らないと切り捨ててくれれば良かったのに……。
今回はまた俺の価値が上がったから、接近してくるようになった?
有用だから、切り捨てるのをやめた?
魔力枯渇症になった俺は価値がないから切り捨てられた?
また利用価値がなくなったら捨てられる?
負の思考がぐるぐる回る中、ふいに唇に柔らかい何かが触れた。
視線を上げると、目の前にはシルバリウスの真剣な表情。
「また、難しく考えてないか?」
「そうかな? 俺の価値について考えていたんだよ。今は俺に価値ができたから利用する為に来たのかな? とか。俺がまた無価値になったら捨てられるのかな? とか思って。まぁ、俺も実家の力を存分に利用しているから、利用するなとは言えないけどさ」
シルバリウスは困った顔をしながら言う。
「確かに、利用し利用される関係もあるだろう。それが家族だとしてもあるかもしれないし、それがリューイの家族に当てはまるかもしれないし、当てはまらないかもしれない。
ただ、利用し、利用されるだけの関係だけが存在するということでもないと思う。それに価値の判断は人によって違う筈だ。
リューイはとても価値のある人間だよ。そうでなければ、スチュアートはじめ、リューイの周りにあんなに人は集まらない。もっと自信を持って大丈夫だ」
「そうなのかな。自信……」
……必要とされる人になりたい。
「大丈夫だ。遅くなってすまないな。今夜リューイの初めてを貰い受ける」
……ん?
何故、自信をつけるからその話へ?
ちょっと理解は及び難いが、ずっとお預け状態だったシルバリウスとの情事が行えるなら良いかと流す事にした。
決してシルバリウスの曇りない笑顔に流された訳じゃない。
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