病弱モブは推しのサポキャラを助ける為に、お金も積むし、ゲームのシナリオも改変します

あやまみりぃ

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ちょっと休憩したら日常へ

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 ……眩しい。
 カーテンの隙間から光が入り込んでいるが、まだ朝が早いのか辺りは静かだ。
 結局昨日は夕食も食べずに寝落ちしたらしい。
 特技は”寝落ち”かな?
 泣くと疲れるって言うしね。
 大分早く寝たから早く起きてしまったみたい。

 そして、隣にはシルバリウス。
 横から見ると鼻が高いのがより分かる。
 もぞもぞと近寄り、ピタッとくっつく。
 ……昨日はこの腕が物理的にも精神的にも守ってくれたな。
 家族に会って自分があんなに取り乱すとは思わなかった。
 もっとドライに接する事が出来ると思ったのに。
 
 服越しに感じる人肌はとても温かく、眠気を誘い……
 再び寝た。

 ***
 
 ――ゆさゆさ、ゆさゆさ
 ゆっくり、目蓋を開けるとシルバリウスがまだ寝転びながらこちらを見ていた。
「朝だぞ」
 シルバリウスが身を起こさないなと思っていたら、俺が両手でがっしりとシルバリウスのシャツを掴んでいたようだ。

 ダンジョン……。
 行くのやだなぁ……。
 実家にも連絡行くだろうしなぁ……。

 ――もぞもぞ、ぎゅっ
 シルバリウスの胸に顔を埋める。

 このまま逃げちゃっても良いかなぁ……。
 そうだなぁ。
 スタンピートだって俺が対処する必要は無いんだし、シルバリウスと国外逃亡しても良いかなぁ?
 幸い、ダンジョンでのお金の稼ぎ方も覚えたし、家事とかは全く出来ないけど、家事だったら人を雇っても良いわけだし。
 ここにこだわる意味なくない?

「リューイ」
 そうだよね!
 俺にはシルバリウスが居るんだから、さっさと国外逃亡しちゃえば良いじゃないか!

「リューイ」
 辺境伯爵家の死にそうだった三男が行方不明になった所で誰も困らないさ。
 うんうん。
 シルバリウスと愛の逃避行全然良いじゃないか。

「リューイ。……また余計な事考えているのか?」
 余計な事って!
 思わずムッとして、シルバリウスの胸に埋めていた顔を上げる。
「余計な事じゃない。ヴィー。この国から逃げよう!」
「……ダンジョンは?」
「もういい」
「スタンピートの対処をしたかったんじゃないのか?」
「もういい」
「国を出てどうする予定だ?」
「お金はあるし、ローワン王国じゃない方の隣国に行けばダンジョンあるし。ヴィーは付いて来てくれるだろ?」
 シルバリウスは一瞬考えた後、再び言葉を紡ぐ。
「……それがリューイが本当に望む事なのか?」
「……うん」
「スタンピートを放置して、故郷を捨てるのが本当にリューイのやりたい事か?」
 そんな言い方は酷い。
 思わずシルバリウスを睨む。いつもは俺に甘いシルバリウスなのに……
「リューイのやりたい事は違うだろう?」
 そう言われても、答えられない。
 自然と顔が俯く。
 しばらくした後、ぽつりと呟く。
「……だって、もうやだ。分かんない」
 シルバリウスが俺の頭をそっと撫でてくれる。
「難しい事を考える必要は無い。リューイは私の容姿がすきだろう?」
「うん」
 ……本心なので思わず即答してしまった。
 容姿が好きなことバレてる。
 もう本当大好きです。まぁ勿論、容姿だけじゃなくて全てだけど。
「私が戦っている所も好きだろう?」
「うん」
 めちゃくちゃ格好良いのだ、そりゃ好きになるだろう。
「私が時属性魔法の”加速”を使う所見たいだろう?」
「うん」
 昨日は自分の事で必死だったから、ちゃんとじっくりみたい。
「私が”加速”を使いこなせる姿を見たくないか?」
「みたい」
 “加速”を使って、戦場を駆け抜ける……絶対格好良いに決まっている!
「私も昨日掴んだものを自分のものにしたいなぁ」
「うん」
 俺もぜひ”加速”をシルバリウスのものにして欲しい!
「移動してしまえば、しばらく使う機会がないから忘れてしまうかもしれないなぁ」
「む……」
 確かに他国へ逃げるなら移動自体時間がかかるし、出国手続きや他のダンジョンに入るのも手続きが必要で、すぐに入れないだろう。
「どうしても、早く移動したいならしょうがないが、使った感覚が消えてしまうのは残念だなぁ」
「むむむ……」
 確かにせっかく掴んだ感覚を忘れてしまうのはとても勿体ないかもしれない。
「あぁ、私も早くリューイに”加速”を使う所を見て欲しいのに残念だなぁ」
「……見て欲しいの?」
「そりゃ、あんなに目を輝かせてくれるリューイが可愛いのもあるが、今までずっとアドバイスをくれて支えてくれたのだ。
 やはり今まで私を信じて一番応援してくれた人に成果を見てもらいたいな」
「む……」
 それは”推し活”をした結果をファンに還元してくれるってこと?
 なんて尊いんだ!
 そうだ、俺はシルバリウスの近くで一番応援してきた。
 シルバリウスに貢ぐことと愛でる事は誰にも負けていない自負がある。
 その尊いシルバリウスが頑張っているのにファンである俺が足を引っ張るなんて論外じゃないか!!
 スキルアップの機会をただの一ファンが阻むなんてファンにあらず!
 早く自分のものにしてもらう為にも、移動なんかで時間を費やすのは勿体ない!
「……ダンジョンいく?」
「良いのか?」
「うん。ヴィーの”加速”みたい! 絶対格好良いだろうな! 急に敵に背を向けたと思ったら、後ろで一斉にドザドサッと敵が倒れる……。絶対格好良い!! ご飯3杯はいける!」
 さっきまで心が重苦しかった筈が、今は推しの格好良いシーンを早く見たくてたまらない。
「……声、漏れてるぞ」
「ん? じゃ、準備しようか~。あ”、昨日帰還報告とかしてないけど大丈夫かなぁ」
「大丈夫だろう」
「……はぁ、なんも無いと良いなぁ」
 ダンジョン協会のことを考えるだけで、またテンションが下がってくる。
 そんな俺にシルバリウスから再び素敵な提案が。
「アップルパイが美味しいという店の情報を聞いたから帰りに寄って行かないか?」
「行くー!! アップルパイも良いよねー。楽しみだなぁ」
 シルバリウスは微笑み、俺の頭をポンポンと二回優しく撫でてからベッドをおり準備をはじめた。
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