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金策

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 1日休日を挟み翌日、シルバリウスにいっぱい働いて貰う宣言をした通り、金策を兼ねて地下21階に降りたあと、地下20階へ移動し1時間に1回ほどのペースでボス戦に挑みつつ、休憩をしっかり挟みつつのんびりとリピートした。
 因みに、オリハルコンの剣は今迄使っていたものより少し重いと言っていたが、ミノタウルスの首をバターのように綺麗に一刀両断出来る様になっており、良い武器を買って正解だったなと思った。
 シルバリウスが購入した剣は品質は良いがやはり普通の鉄の剣で、予備用としてシルバリウス自身の魔法収納鞄に入れてある。
 そしておなじみダンジョン(金策)日誌
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・1/11お休み
・1/12ボス部屋5回
 白金貨1枚、金貨55枚(小手調べ。取りあえず5回は問題なさそう。因みにボス踏破は25分程になった。受付に驚愕された)
・1/13ボス部屋6回
 白金貨1枚、金貨74枚(10時、11時、12時、お昼、14時、15時、16時と6回が理想そう)
・1/14お休み
・1/15ボス部屋3回
 金貨71枚(昼休憩から戻ると、他パーティがボス戦に挑んでいた。1時間待っても終わらなさそうだったので、帰ることにした)
・1/16ボス部屋6回
 白金貨1枚、金貨74枚、銀貨5枚(一度15分でボスを倒してしまったが、そうするとジャイアントバッドの討伐数が減る為、早すぎるのは良くなさそう)
・1/17お休み
・1/18ボス部屋6回
 白金貨1枚、金貨77枚、銀貨5枚(時々、シルバリウスの体に魔力が溜まる瞬間があるが、まだ「時」属性の発動には至っていないようだ)
・1/19ボス部屋6回
 白金貨2枚、金貨5枚(過去最高額行った)
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 白金貨2枚と過去最高額を記録した日、喜んでいたら、精算カウンターの人に”貢献いただき大変有難いのですが、他の攻略者への支払いが難しくなる可能性がありますので1週間ほどお休みとっていただけませんか?”と言われてしまった。
 ……ちょっとやり過ぎたらしい。
 最近仲良くなった受付カウンターの気弱そうな男性職員のハルさんが、俺たちの非常識っぷりを見かねたのか最近は常識を教えてくれるようになった。
 それによると、普通はボス戦に挑んだら武器や防具のメンテナンスを兼ねてパーティメンバー全体的で何日か休息を取るそうだ。
 ……防具も武器も最高級のものを用意してしまった為、特にメンテナンスの必要性を感じない。
 2人とも防具はダンジョンのトラップエリアを通過した時に、熱風に当たった位で、未だに敵の攻撃が直接当たったこともなく、メンテナンスの必要が無さそうだし、同じ理由で救急箱の中身が減る事も必要物資が減る事もない。
 オリハルコンの剣は毎日シルバリウス自身がメンテナンスしていて刃こぼれが起こるとか切れ味が悪くなると言うことも無さそう。
 敢えて言うなら俺の補助媒体を一応見て貰った方が良いのだろうか? 確かに酷使はしているかも。
 帰ったらスチュアートに相談だ。

 まぁ、金策もうまくいってこの街で使用した分は取り戻したし、しばらくお休みして、その後は通常通りダンジョン攻略の方に進むかな。
 シルバリウスもヒモを脱して嬉しそうだったし、この街へ来て生活をするのに必要な経費をスチュアートが立て替えてくれていたのだが、それについてはせめてもという事で俺の代わりにシルバリウスが多めに渡していた。

 こちらに来て約一ヶ月。
 当初のシルバリウスの「時」属性魔法発動の目的は達していないものの、せっかく首都に来ているのだし、観光しても良いかもしれない。
 休息は必要だろう。観光となるとまたウキウキしてきた俺だった。

 ***

〈???視点〉

「ローブの悪魔達の調査? なんだそりゃ?」
 濃い茶髪に緑目の青年が怪訝そうに、目の前で報告をしてくる緑髪に青目の眼鏡の青年に問うた。
「今ダンジョン協会職員から、悲鳴が上がっているそうで。この名称は職員達が付けた通称らしいですが。
 なんでも、このローブの悪魔のパーティが何度も地下20階のボス戦を行う為に、ダンジョン協会の現金が足りなくなりそうだとか」
「は? そもそも、ボス戦はそんなに何度も挑戦出来るのか?」
「そのようです。新しい発見ですが、知ったところで何度も挑戦する方がいるかどうか……」
「何度も挑戦するったって、週に一度とかだろ? それで、王都に次ぐ大きい協会の現金が無くなるほどか?」
「いえ、5回とか6回だそうで……」
「……ほぼ毎日じゃねぇか」
「いえ、1日で5回とか6回だそうです……」
「……」
「……」
「それ見間違いじゃなくてか?」
「ええ。先に問い合わせましたが、事実だそうです。今は、他の冒険者への支払いに影響が出てしまう可能性があり、1週間程休みを取って欲しいとお願いした所、特に文句を言うことなく休みを取っていただけるそうです。
 こちらは対応出来るように異例ですが、納品物を一度引き取り、急いで現金を増やしたいと思います。
 幸い、ここ近年の魔物発生率の高さの影響か、良質な魔石の需要は高まっていますからね」
「ああ」
「ただ、地下20階のボス戦を何度も挑める戦力を持っていると考えられる為、念の為に調査をとの事でした」
「あぁ。そうだな。ただのダンジョン攻略者なら良いが、他国の間者やその訓練に使われていても困るしな。
 そんな大人数がフォンデルク辺境伯領の首都に潜伏なんて物騒な話だし……」
「あ、いいえ、大人数パーティではなく2人組です」
「は? 1日に何回もボス戦を挑むってのは大人数パーティが入れ替わり立ち替わりでやってるんじゃないのか?」
「はい。職員も確かに2人の討伐記録を確認しているため確かかと」
「……2人。……マジか」
「大きい男性”シルバリウス”と小柄な少年”リューイ”という2人組です」
 茶髪の青年は名前に一瞬反応するも、眼鏡の青年は気が付かずに説明を続ける。
「フォンデルク上級ダンジョンには最近来られたようです。来た当初も少々噂にはなっていたようで、2日置きにダンジョン攻略をするのですが、1日で2階層攻略していっていたそうです。地下19階まで」
「……1日で2階層?」
「ダンジョンカードの改竄も考えられますが、今まで改竄されたこともなく、そのような形跡も見られておりません。
 そして、他の攻略者達からも”子供を抱いて走る不思議な攻略者”を見たという複数の証言が取れています。
 一部の攻略者達の間では”サンタークロウス”という渾名で呼ばれていたそうです」
「”サンタークロウス“ってあの神話に出てくる、聖夜の夜に良い子達へプレゼントを配る赤い衣を身に纏った神の話か? なんで?」
「なんでも、ダンジョン攻略を急いでいる為か、魔物と遭遇して倒しても、魔石を拾わずに先に行くそうで。
 魔物を他の攻略者へなすりつけるようでしたら問題でしたが、きっちり倒してから去る為問題にはならず、近くにいた攻略者はプレゼントを貰ったと喜んでいるそうです」
「それで”サンタークロウス“か……因みに少年の方も討伐はしてるんだよな?」
「はい。記録から見るに遠距離攻撃タイプのようで、ジャイアントバットの討伐数が凄い事になっているようです」
「(まぁじゃぁ違うか)仕事抜きでも会ってみてえな。幸い来月から休みだから久しぶりにダンジョンに向かうか。すぐに行けるように用意しておいてくれ」
「かしこまりました」
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