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お茶会

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 ハワードが綺麗に整えてくれている庭には現在大きめの白い丸テーブルが設置されている。

 シルバリウスに支えられながら歩いて行くと他の人はすでにテーブルの近くに居た。

 席に着くと、すかさずメイドのニアが全員分の紅茶を用意してくれて、そのあと自分も席についた。

 俺の右隣にはシルバリウスが座り、左にはスチュアートが座っている。

 スチュアートの隣には茶髪・茶色目のメイドのニアが座り、その隣にはまだ若いオレンジ髪・茶色目の従僕をやってくれている少年ロイが落ち着かなさそうに座っており、その隣には紫色の髪に黒目のセクシーお姉さん的な存在の料理人カーラがいて、ハワード、サスケという並びで座っていた。

 隣にいるシルバリウスはこのような席に少し驚いているようだった。

 まぁ、とても自由だがリューイは貴族である。

 普通は貴族と同じ席で使用人が食事をしたりお茶なんてしない。

 そればかりではなく、リューイは敬語の有無も特に気にしないばかりか、人として非常識な態度でなければ、貴族相手として相応しくない態度でも気にしないのだ。

 まぁ、おそらく前世身分制度がない時の価値観が色濃く残ってしまっていたからだろう。

 どうやら、魔力暴発を起こす前までは前世のことを前世と理解しないまま、色々やらかしていたらしい。

 

 スチュアートが喋りだしたので、遠い目になりそうなのを引き戻す。



「まずリューイ様のご快癒、おめでとうございます。使用人一同大変嬉しく思っております」

 ロイはパチパチと手を叩き、カーラは笑顔でサムズアップをしニヤリと笑う。

「この不便な土地・屋敷で約3年間も世話してくれてありがとう。

 無事に生きていけることになったのは、ここにいる皆のおかげだから、感謝しても感謝しきれないよ。

 本当にありがとう。これからも良かったら、僕の我儘に付き合ってね」

 ニアは目元をハンカチで押さえながら微笑んでいる。

「それでは、報告をさせていただきます。ここ最近魔物の発見が相次いでおります」

 スチュアートの言葉に続くようにハワードが話す。

「ここは森に近いとはいえ、最近はこの屋敷の周りにも小さな魔物が現れるようになりました。先週は3体、今週は既に2体屋敷に入ろうとしていました」

 庭師であるハワードの魔法属性は「植物」、屋敷の庭が要塞の役割をしていて、外敵の侵入を防いでくれているのだ。

「森を調べた。浅い箇所に”ブラッドベア”1体と”ブラッドボア”3体がいた」

 サスケも森を調べてくれていたらしい。

 ブラッドベアは3メートルを超える熊で、ブラッドボアも2メートルを超える猪であり、通常森の浅い部分には出てこない。

 食べ物がなくなる冬になると、確かにたまに出現したりするが基本的には森の奥から出てこないはず。

 スチュアートが続ける。

「状況を鑑みるに、首都のご家族の元へ戻られた方が良いのではと提案させていただきます。

 魔物の発生について、一時的なものか、増え続けるものか分かりませんので、万が一を考えてこの地を離れるのがよろしいかと。原因も未だ分かりませんので」

 今はちょうど9月に入ったばかり。

 まだ、餌が少なくなる前のこの時期に多数の魔物発見情報。

 これは……

「来春、スタンピードが起こるからねぇ」

「「「……」」」

 一気に静まり、皆の驚きの視線がリューイに集まる。

 

 そう、リューイの考えなければいけない大事な事と同じ件だった。

 ゲームでは”始まりのスタンピード”と言われていたが、このスタンピートをきっかけにローワン王国は勇者召喚をするのだ。

 それが来春に迫っていた為、徐々に魔物が増えてきていたのだろう。

「取り敢えず、近隣の村には極力こっちの森へ入らないように通達してもらえる?

 どうしても入りたい場合は、首都じゃなくていいから事前にこっちに申請してもらうようにしようか。取りまとめはスチュアートよろしく。

 その為の人材、お金が必要だったら、まぁうちの実家使っていいから。

 サスケはちょっと定期的に森の魔物間引きと、引き続き調査で。

 あ、カーラも森に入る時はサスケ連れてってね。

 ニアとロイも屋敷の外に出る時は気をつけて、夜遅くなりそうな時は無理して帰らず泊まって帰ってきて。

 ハワードは引き続き屋敷の守りよろしく。

 シルバリウスは……取り敢えず勘を取り戻す所からかな。

 もし、余裕があったら、皆戦えるように準備しておいて。体の鍛錬についてはスチュアートに、魔法関連の相談とかあれば直接声かけて。

こっちから呼ぶかもしれないけど、その時は業務都合つけて予定調整を頼むね」



 俺が突拍子もない事を言うのに慣れている使用人達はそれぞれの指示に頷いたり返事をくれたりしたが、シルバリウスはまだ驚きが抜けていないようだ。

 まぁ、これでも領主の息子だから、人を使うのは慣れてるんだよね(ドヤっ)



「あと、まだ決定じゃないけど、首都には戻らないと思う。

 成人したら、ここに独立して住みたいなと思ってる。

 皆今は実家に雇われていると思うから、まぁ考えといて」

 貴族が通う学園は12歳で既に辞めている。

 本来貴族は10歳から15歳までの初等教育は義務で、その後の16歳から20歳までの高等教育は跡取りや国の高官になりたい者が通うようになっている。まぁ、高位貴族は大体高等教育も行うが。

 12歳から15歳まで殆ど勉強もして来なかった俺がこの年齢から今更学園に入り直すのも辛いものがあるし、だからと言って高等教育から入れる程頭が良いわけでもない。

 それに、貴族の友達も居ないし、社交なども面倒臭い。

 幸い、前世と意識せずやらかした特許みたいなものがあるので、慎ましく生きていく位の金には困っていない。

 死にそうな原因になっていた魔力量も今後使いこなせば武器になる。

 なら、無理して普通の貴族になる必要はないだろうと判断したのだ。

 ゲームの強制力的なものも発動されてしまうのか気になるし。

 幸い、上の兄2人は健康を損なう事もなく、王都の学園に通っているので跡継ぎで困った事もないだろう。



 その後は久しぶりに使用人の皆と楽しくお喋りに興じた。
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