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思い出す
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――生き物が焼ける臭い。
辺りは死んだ魔物達だらけだが、その一角に勇者、神官、魔法使いが居て、一人の倒れた奴隷を囲んでいる。
「……カケル、無事、で良かった」
「シルバリウス……、なんで、庇って……、うぅ」
倒れた奴隷の右半身は焼けていて、服も何もかも汚れているのに、首に付いている太い無骨な赤銅色の首輪だけが爛々と光っている。
「う、シルバリウス、冤罪は、必ず晴らすから……」
いつも無表情な奴隷は口の端だけ上げ、静かに目を閉じていった。
仲間たちが泣く中、静かに画面が動き周囲の状況を映すようにシルバリウスからフェードアウトしていく。
――なんで!
シルバリウスだけじゃなくて、全員あんなに、ステータスも上げたのに、なんで死ぬんだ!
死んでから冤罪が晴れても意味ないだろ!
あんな馬鹿王女の為に、主人公でもおかしくない銀髪最強キャラなのに……
***
「マジ! あれはない!」
ガバッと身を起こしたものの、急に動き過ぎたのか、目眩がした為ベッドに逆戻りをする。
視界に入る自分の水色の髪。
水色の髪とか、アニメとかゲームの世界じゃん。
……ん? アニメ? ゲームってなんだっけ?
暫くうんうん唸りながら頭を整理した結果。
俺はフォンデルク辺境伯爵家の三男リューイ・フォンデルクなのだが、”前世でやったゲームの世界”にいるようだった。
これが所謂前世の記憶であり、転生か? と思いつつも、前世本人自体の記憶はほぼなく性別も年齢も死因すら分からない。
取り敢えずわかるのは、この世界がその前世で特に好きだったゲームとほぼ同じである事、ゲームではシルバリウスという銀髪剣士キャラが好きで、彼を生かす為に何度もゲームを繰り返していた事で、ゲームに関する記憶が中心だ……。
因みに俺はゲームに全く出てこないモブです。
あ、チラッと領地名だけは出るけどね。
ゲームのストーリーはこうだ。
ゲームの舞台は、俺のいるフォゼッタ王国の隣の国ローワン王国。
最近、近隣諸国でも国内でも魔物の増加が確認されつつある中、ローワン王国の隣国フォゼッタ王国のフォンデルク領で所謂スタンピードが発生。(ここが今、俺がいる領地)
最近の魔物増加と遂に発生してしまったスタンピードで、焦ったローワン王国は勇者召喚を行う。
その召喚された勇者がプレイヤーね。
世界観的には”チュウセイヨーロッパ”のような見た目だけど、“ニホン”のように四季があり、時間も暦の進み方も同じで“カガク”の代わりに魔法が発展していて、そんなに不自由はない世界という設定らしい。(今を生きている俺には“ニホン”も“カガク”も”チュウセイヨーロッパ”がどんな所か分からないけど)
勇者は約3ヶ月のチュートリアルを兼ねた修行期間を過ごした後、約1年をかけて調査という名の各種クエストを受け、仲間やアイテムを集めつつ国内を周りレベルアップをはかり、ローワン王国過去最大のスタンピードである最終決戦で魔物の王を討つという、よくあるようなゲームである。
そして、勇者パーティメンバーは最少2名から最大9名まで編成出来るが、旅の初めからいるのが件の剣士シルバリウスである。
そんな初めからいるキャラクターなのに必ず最後は死んでしまうシルバリウス。
前世の俺? はシルバリウスを生かすために何度もゲームを繰り返したようだが一度も救えた事はない。
因みになんで必死になって救おうとしたのかと言うと、銀髪キャラがめちゃくちゃ好きだったという理由以外にも、シルバリウスの冤罪が晴れるのは本人が死んだ後というのがどうしても許せなかったからだ。
シルバリウスの最盛期は騎士団のエースと言われていて、剣の腕は国の最高峰であり、次期騎士団長候補とも言われていたのが、冤罪で奴隷落ち。奴隷に落ちた後も、その剣の腕を活かさないのは勿体無いと、幽閉されていた所から、前線へ、前線から勇者パーティに強制参加させられていたのだ。勿論奴隷の為、拒否権等はなく酷い扱いを受けていた事を仲間に吐露する過去回想シーンがある。
スタンピードを収めた後、つまりゲームクリア後、シルバリウスが冤罪だったという事を突き止めて、ハッピーエンドな雰囲気を醸し出していたが、当の本人は冤罪が晴れたのかも分からず、何も報われずに死んでいくのだ。
許せん!
と、いう理由でどうにか出来ないのかと必死にシルバリウスの死の回避を模索していたらしい。
そんな当時の感情も思い出した今、俺の最後にやりたい事は決まった。
――コンコン
部屋のドアの外から入室を求める声がしたので、許可を出す。
ベッドサイドにやってきたのは、この別宅を纏める執事兼リューイの侍従兼護衛のスチュアートである。
このスチュアート、元々母の侍従だったようだが、母が亡くなって以後は、辺境伯爵家に仕え、今はリューイの専属になった。
もう50歳になっただろうか、元は黒だった髪に白髪が大分混じりグレーっぽく見えるが、その所作等はまだ若々しい。
「ぼっちゃま、お誕生日おめでとうございます。お加減はいかがですか?」
「昨日魔力を貰ったからかな。比較的元気だよ」
「それは良かったです。本日はぼっちゃまの15歳のお誕生日ですので、ご家族の皆様から色々とプレゼントが来ていますよ。後で見に行きましょう」
そう言いながら着替えを手伝ってくれる。
「そうそう、スチュアートお願い聞いてくれる?」
「なんでしょう?」
「ローワン王国に銀髪で水色目のシルバリウスって名前の騎士が何処かの牢獄か、前線に奴隷としているらしいから何処にいるのか調査してほしい」
「……調査してどうするのでしょうか?」
「ちょっと考える」
「かしこまりました。まずは朝食を食べましょう」
そう、やりたい事とはシルバリウスを助ける事だ。
辺りは死んだ魔物達だらけだが、その一角に勇者、神官、魔法使いが居て、一人の倒れた奴隷を囲んでいる。
「……カケル、無事、で良かった」
「シルバリウス……、なんで、庇って……、うぅ」
倒れた奴隷の右半身は焼けていて、服も何もかも汚れているのに、首に付いている太い無骨な赤銅色の首輪だけが爛々と光っている。
「う、シルバリウス、冤罪は、必ず晴らすから……」
いつも無表情な奴隷は口の端だけ上げ、静かに目を閉じていった。
仲間たちが泣く中、静かに画面が動き周囲の状況を映すようにシルバリウスからフェードアウトしていく。
――なんで!
シルバリウスだけじゃなくて、全員あんなに、ステータスも上げたのに、なんで死ぬんだ!
死んでから冤罪が晴れても意味ないだろ!
あんな馬鹿王女の為に、主人公でもおかしくない銀髪最強キャラなのに……
***
「マジ! あれはない!」
ガバッと身を起こしたものの、急に動き過ぎたのか、目眩がした為ベッドに逆戻りをする。
視界に入る自分の水色の髪。
水色の髪とか、アニメとかゲームの世界じゃん。
……ん? アニメ? ゲームってなんだっけ?
暫くうんうん唸りながら頭を整理した結果。
俺はフォンデルク辺境伯爵家の三男リューイ・フォンデルクなのだが、”前世でやったゲームの世界”にいるようだった。
これが所謂前世の記憶であり、転生か? と思いつつも、前世本人自体の記憶はほぼなく性別も年齢も死因すら分からない。
取り敢えずわかるのは、この世界がその前世で特に好きだったゲームとほぼ同じである事、ゲームではシルバリウスという銀髪剣士キャラが好きで、彼を生かす為に何度もゲームを繰り返していた事で、ゲームに関する記憶が中心だ……。
因みに俺はゲームに全く出てこないモブです。
あ、チラッと領地名だけは出るけどね。
ゲームのストーリーはこうだ。
ゲームの舞台は、俺のいるフォゼッタ王国の隣の国ローワン王国。
最近、近隣諸国でも国内でも魔物の増加が確認されつつある中、ローワン王国の隣国フォゼッタ王国のフォンデルク領で所謂スタンピードが発生。(ここが今、俺がいる領地)
最近の魔物増加と遂に発生してしまったスタンピードで、焦ったローワン王国は勇者召喚を行う。
その召喚された勇者がプレイヤーね。
世界観的には”チュウセイヨーロッパ”のような見た目だけど、“ニホン”のように四季があり、時間も暦の進み方も同じで“カガク”の代わりに魔法が発展していて、そんなに不自由はない世界という設定らしい。(今を生きている俺には“ニホン”も“カガク”も”チュウセイヨーロッパ”がどんな所か分からないけど)
勇者は約3ヶ月のチュートリアルを兼ねた修行期間を過ごした後、約1年をかけて調査という名の各種クエストを受け、仲間やアイテムを集めつつ国内を周りレベルアップをはかり、ローワン王国過去最大のスタンピードである最終決戦で魔物の王を討つという、よくあるようなゲームである。
そして、勇者パーティメンバーは最少2名から最大9名まで編成出来るが、旅の初めからいるのが件の剣士シルバリウスである。
そんな初めからいるキャラクターなのに必ず最後は死んでしまうシルバリウス。
前世の俺? はシルバリウスを生かすために何度もゲームを繰り返したようだが一度も救えた事はない。
因みになんで必死になって救おうとしたのかと言うと、銀髪キャラがめちゃくちゃ好きだったという理由以外にも、シルバリウスの冤罪が晴れるのは本人が死んだ後というのがどうしても許せなかったからだ。
シルバリウスの最盛期は騎士団のエースと言われていて、剣の腕は国の最高峰であり、次期騎士団長候補とも言われていたのが、冤罪で奴隷落ち。奴隷に落ちた後も、その剣の腕を活かさないのは勿体無いと、幽閉されていた所から、前線へ、前線から勇者パーティに強制参加させられていたのだ。勿論奴隷の為、拒否権等はなく酷い扱いを受けていた事を仲間に吐露する過去回想シーンがある。
スタンピードを収めた後、つまりゲームクリア後、シルバリウスが冤罪だったという事を突き止めて、ハッピーエンドな雰囲気を醸し出していたが、当の本人は冤罪が晴れたのかも分からず、何も報われずに死んでいくのだ。
許せん!
と、いう理由でどうにか出来ないのかと必死にシルバリウスの死の回避を模索していたらしい。
そんな当時の感情も思い出した今、俺の最後にやりたい事は決まった。
――コンコン
部屋のドアの外から入室を求める声がしたので、許可を出す。
ベッドサイドにやってきたのは、この別宅を纏める執事兼リューイの侍従兼護衛のスチュアートである。
このスチュアート、元々母の侍従だったようだが、母が亡くなって以後は、辺境伯爵家に仕え、今はリューイの専属になった。
もう50歳になっただろうか、元は黒だった髪に白髪が大分混じりグレーっぽく見えるが、その所作等はまだ若々しい。
「ぼっちゃま、お誕生日おめでとうございます。お加減はいかがですか?」
「昨日魔力を貰ったからかな。比較的元気だよ」
「それは良かったです。本日はぼっちゃまの15歳のお誕生日ですので、ご家族の皆様から色々とプレゼントが来ていますよ。後で見に行きましょう」
そう言いながら着替えを手伝ってくれる。
「そうそう、スチュアートお願い聞いてくれる?」
「なんでしょう?」
「ローワン王国に銀髪で水色目のシルバリウスって名前の騎士が何処かの牢獄か、前線に奴隷としているらしいから何処にいるのか調査してほしい」
「……調査してどうするのでしょうか?」
「ちょっと考える」
「かしこまりました。まずは朝食を食べましょう」
そう、やりたい事とはシルバリウスを助ける事だ。
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