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1巻
1-2
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――ここがどんな世界かわからない以上、身を守る術が多いに越したことはないだろう。
綾人は複数ある建物のうち一際綺麗な建物に連れていかれ、豪華な部屋に通された。
そこで早速従業員が一人ずつ部屋に奴隷を連れてきて面談がはじまった。……のだが、のし上がってやるという意思で目がギラギラした女性や、あきらかに綾人を性的な対象として見てくるような色気のある男性、目が死んでいる者など、とても一緒に過ごせる気がしない者ばかりだった。
常識を学ぶ上で半年くらいは生活をともにすると思うが、身の危険を感じる相手といるくらいならリスクを背負ってでも職業斡旋所で普通の使用人を雇ったほうがいいかと、紹介された人数が十人を超えた時点で思いはじめていた。
そんな綾人の様子に気がついたのか、案内役が一つ提案してきた。
「一度、今までとは毛色が違うものをお連れしてもよろしいでしょうか?」
「ああ」
しばらく待っていると綾人より一回り以上大きい、一九〇センチはありそうな男性が長い鎖に繋がれて部屋に入ってきた。
これまでの奴隷たちは鎖など繋がれておらず豪華な服を着ていたが、入ってきた男は服もあまりよさそうではなく、本当に今までとは毛色が違った。
奴隷は綾人の前で跪いて膝立ちになるよう命じられ、伏せていた顔を従業員が上げさせる。
肩につくかつかないかくらいの長さの赤い髪。左側だけ頬まで伸びた前髪で顔の半分は隠れているものの、顔立ちは西洋人のように彫りが深い。それに形の良い眉に、鋭く澄んだ青い瞳。
綾人は一瞬にして目を奪われ、その青い瞳から目が離せなくなった。
「これは隣国のさる貴族に仕えていた奴隷で、主人に歯向かって処分されるところだったのです。元々どこかの貴族だったようで、左目は潰れて喉も焼かれたようで声を発せませんが、処分してしまうには惜しい素材でしょう。ラスニア王国なら隷属魔法契約が使えるのでどうとでもなると、二週間前に連れてきたばかりなのですよ。少々おいたが過ぎるために枷をつけておりますが、体力も魔力も高いので、護衛にはよろしいかと。……いかがでしょうか?」
綾人が今までと違う反応を見せたからか、案内役がすかさず売り込んでくる。
「うーん。でも反抗的なんだよね?」
普段の綾人なら敬語で喋るが、案内役は綾人をどこかの子息のぼんぼんだと思っているようなので、それに合わせて振る舞っている。
「本人曰く性奴隷でなければ従うとのことですが……性奴隷としての使用をお望みでしたら、しばらくお時間をいただければ調整も可能でございます」
要するに拷問でもして隷属魔法契約を結ばせて無理矢理従うようにさせるということだろう。
(……拷問とか、考えるだけで背筋が寒くなる)
「この国や隣国の話を聞きたいのだけど、喋れないのに使えるかな?」
「この者は読み書きができます。字も綺麗で博識のようです。喋ることはできませんが、筆記でのやりとりは可能でしょう」
「うーん……。ちょっと二人きりにさせてもらえるかな?」
「ええ。ただし、お客様はそのテーブルより前には行かないようにお願いしますね。お話が終わりましたらそちらのベルでお呼びください」
テーブルを挟んで綾人の向かい側に椅子が用意された。それから奴隷の男に首の枷を追加し、椅子と床に繋げて身動きできないようにしてから従業員と案内役は退出していった。
改めて目の前の男を見る。
質素な服でも、鎖に繋がれていても、目に傷があっても、その誇り高い狼のような雰囲気はとても奴隷には見えない。誰もが惚れてしまうのではないかと思うほど人を惹きつける魅力を持った美しい男性だった。
男もじっと綾人を見ている。
「お名前は?」
男は少し驚いたような表情を見せながら、先ほど案内役が置いていった紙に文字を書いていく。
名乗りもせずに相手の名前を聞くのは失礼だったかと思いながらも、まだ購入を決めたわけではないので自分の情報を出すのは避けた。
視線を紙に移すと、案内役が言うように確かに綺麗な字だった。
名前はアレクというらしい。
「アレクというんだね。よろしく。私は遠い国から来たもので、常識を教えてほしいんだ。物知らずだから迷惑をかけると思うけど、その辺りの面倒も見てほしい。期間はそうだな……一年でどうだろう」
アレクは怪訝そうな顔をしている。わかりにくかったかと思い、綾人は補足する。
「あぁ、一年というのは、いわば契約期間かな。一年経ったら奴隷から解放する。ただ、隷属魔法契約は結んでもらう予定だ。内容は私に関して、許可したこと以外喋らないことかな。もちろん命の危機がある時はその限りではないけど。これは私が解除するかアレクが死ぬまで守ってもらうことになる」
目の前の男は、「奴隷から解放」という言葉で少し目を開き、隷属魔法契約の話で目を伏せ、契約内容で無表情に戻った。
はたから見れば表情はあまり変わっていないようだが、片方だけ見える澄んだ青い目はしっかり感情を物語っていて、なんだかほっこりする。
「聞きたいことはあるかな? 気になることは先に聞いておいて。答えられないこともあるけどね」
アレクはまた驚いたようで、目を瞬かせている。
質問を考えているのかしばらくじっとした後、紙に書き出す。
《一年ではシンタイキンを払えないと思います。その場合は延長ですか? それともここへ返却ですか?》
しんたいきん? そんな日本語ないぞと思っていたら、脳内で身体金と漢字に変換された。
――スキルの〈言語理解〉が働いたらしい。日本語の単語としては存在しないと思うが、どうやら身請け金と同じような意味のようだ。
ん? それを払うのが俺じゃないの? と綾人は思ったが、主人から自由になるのに奴隷が自分自身の身体を買い上げる、というものだと気がついた。
案内役に聞いたアレクの値段は四千五百万Gだった。それをいきなり無償で解放と言われたら、なにをやらされるのかと不安になるのも当然だ。
「あー。その身体金? はナシでいいよ。多分迷惑をかけると思うし、護衛もしてほしいんだ。それに一生私のことを他人に喋っちゃいけないって制約もあるから、その代金かな。うーん。私も訳ありなんだ。一年間、私を守ってくれれば契約達成ということにしよう。その条件も隷属魔法契約に盛り込むよ」
綾人の話を聞いてますます怪訝な雰囲気を出すアレクに、ちょっと訳あり感を出した上で、それ相応の負担もあるんだとアピールをする。
(確かに、タダより怖いものはないって言うしね)
実際、四千五百万Gは安くない。それとは別にアレクの首についている奴隷紋の除去に千三百万Gかかるらしいのだ。普通なら子供がぽんっと払う値段ではないだろう。
――まぁ、実際子供ではないし、所持金が四億でなければもう少し慎重だったとは思うが。
アレクはしばらく考えていたようだが、しばらく経つと綾人を見て深くうなずいた。
無事、了承してくれたようだ。
ベルを鳴らして先ほどの案内役を呼ぶ。奴隷の購入と、隷属魔法契約の手続きを行うのだ。
「お気に召す商品があってよかったです。隷属魔法契約はこちらの内容でよろしいでしょうか?」
「ああ」
案内役はこの店のオーナーだったらしい。オーナー自ら案内してくれたのかと少し驚いた。
隷属魔法契約には、『生涯、または綾人自身が解除を申し出ない限り、許可した事柄以外の綾人に関するあらゆる情報を他人に流すことを禁ずる。ただしアレクの命に関わる場合を除く』、『綾人は一年後にアレクを奴隷から解放する』という事柄を入れ、あとは隷属魔法契約おすすめ文言セットの中から支障のない文章だけを入れた。たとえば『主人を故意に害さない』、『自害禁止』などだ。
ただ、綾人はなんでも言うことを聞く人形が欲しいわけではないので、『命令したことは反抗することなく実行する』など、アレクの意思を無視するような文言は入れていない。
隷属魔法契約は主人から奴隷に一方的に契約を取りつけるという、魔法をかけられた側だけが遵守しなければいけない契約なので、実は『綾人は一年後にアレクを奴隷から解放する』という内容は効力を発揮しない。たとえ綾人がこれを守らなかったとしても代償があるわけではない。
それでも、アレクに対して誠意を見せておきたいと思って入れたのだ。
それからオーナーとはアレクの奴隷紋を除去するための契約を取り交わした。
普通は主人が直接奴隷を連れて奴隷販売所を訪れればいいのだが、人生なにがあるかわからないから、アレクが一人で訪れても奴隷紋を除去できるように契約が必要だと思ったのだ。
もちろんすべての代金は先払いで、しめて五千八百万G。チップ兼口止め料を含めて六千万Gを渡した。懐の温かくなったオーナーが他に必要なものはないかを聞いてきたので、アレクが着る服や綾人の平民用の着替えなど一通りの日用品を頼んだ。
ついでにスキル一覧や魔法一覧が載っているような本が手に入るところがないか聞いたところ、契約手続き中にどこからか購入してきてくれた。
手続きを終え、アレクは今まで着ていた質素な服から綺麗な服に着替えただけで、格段に見目がよくなった。
これで目の傷と首の奴隷紋がなければなおよかっただろうと思ったところで出る準備が整ったので、奴隷販売所を後にした。
店の外に出るともう暗くなっていた。ずいぶん長居したようだ。
さっそくアレクの出番だ。
「アレクー。さっそく出番だよ! 今日の宿屋を探したいんだけど、どこら辺にあるとかどこに聞けば案内してくれるかとか、わかる?」
アレクは少し驚いたような顔をした後、フリップボードのような板に字を映し出す。
《観光案内所で聞きます》
これはアレクのように喋れない人用の、魔力を通すと一瞬で文字が表示されるという優れた魔道具だ。
奴隷販売所でアレクがつけていた枷は魔力制御をするものだったため紙を使ったが、契約で危害を加える心配もない今はこのような魔道具も使用できるのだ。
ただ文字数制限があり、長文は分けて書かなければならない。筆談よりは効率がいいものの、やはり喋りに比べると不便ではある。
アレクもこの街は二週間前に来たばかりだろうに、迷う様子もなく進んでいく。宿は大体駅の近くにある、など定番の場所があるのだろうか? 疑問に思いつつも黙ってついていった。
昼間に通ったバザールの近くまで戻り、奴隷販売所とは逆のほうへ向かうと、ドアが開け放たれている建物があった。
ドアには『ドネステラ観光案内所』と記載がある。どうやらここが目的の場所らしい。
綾人が室内を見回している間にアレクと観光案内所の人が宿を手配してくれたようで、《宿へ向かう》とフリップの表示を見せられ、人通りの多いほうへ向かって再び歩き出す。
綾人はアレクの後ろを歩いているのだが、アレクは少し進んでは振り返って綾人がついてきているか都度確認してくる。
(うーん。やっぱり子供に見えてるのかな?)
そう思っていると、いつの間にか歩く速度を合わせてくれていた。
アレクが気を遣ってくれているのがわかってほっこりした綾人だった。
大通りから少し外れた場所にある宿屋が今夜の宿のようだ。
受付では綾人が直接やりとりした。一泊二食付きで一万G。少し高めで長期滞在はしづらいが、せっかくアレクが探してきてくれたのだし、大人が二人なら妥当なところだ。
綾人は三泊分の代金を支払い、部屋の鍵を受け取った。
夕食の時間は過ぎていたが、余りがあるというのでパックに詰めてもらって部屋で食べることにした。
そして、部屋へ向かう。
ドアを開けると小さめのテーブルセットに大きいベッドが一つ。一人で過ごすにはちょっと広めで、過ごしやすそうだ。
(ん? 一人? ベッド一つ!?)
中のドアを一つずつ開けても洗面所やクローゼットがあるだけで、どう見てもワンルームだった。
「あれ? 二部屋借りたんだっけ?」
と、綾人が混乱気味に言う。
《いえ、一部屋です》とアレクが律儀にフリップボードで答えてくれた。
「だ、だよね? アレクはどこで寝る?」
《床です》
《廊下のほうがよろしいですか?》
アレクは、なぜそんな当たり前のことを聞くのだろう、とでも言うような顔をしている。
綾人にしてみれば、これが日本の家屋であればまだ床で寝るのもありだと思う。
だが、ここは異世界。部屋の中は土足なのだ。
そんな床に人を寝かせることなんてできない。
しかも廊下なんて選択肢がある時点で、馬車に乗せてくれたオルが言った通り奴隷は物扱いなのだとカルチャーショックを受けた。
この世界で生きていくには、早急に奴隷の認識について情報を得る必要があると思った。
小さめのテーブルセットに先ほどもらった夕食を並べる。奴隷販売所でお菓子をいただいたとはいえ、この世界に来てからちゃんとした食事をしていないため、腹はとても空いていた。
テーブルセットには椅子が二脚あったのでアレクに座ってもらい、一緒に食べる。
初めこそ綾人の指示に戸惑っていたようだが、アレクは意外と柔軟性があるのか素直に食べてくれた。
アレクの食事の仕方は元貴族らしいという前情報通り、とても洗練されている。気づけば綾人は、アレクが食事する様子をじっと見ていた。
食事を済ますと、本題とばかりにさっそく常識の確認を始める。
この世界での奴隷はやはり人ではなく物の扱いだそうだ。最近は奴隷にも人権をという主張が叫ばれるようになり、隣の国では隷属魔法契約を禁止しているほどだが、実際はまだまだ物という認識が一般的だという。
そして奴隷の中にもグレードがある。
グレードが高いのは性奴隷、愛玩奴隷、戦闘奴隷の三種。
それらは主人が身請けする場合が多いこともあり、平民になりやすい。また、主人が許可すれば、主人がいる間だけは人間扱いされるらしい。
真ん中のグレードで、最も数が多いのが一般奴隷。
彼らは完全に物扱いなので、主人がどう扱おうが誰も咎めない。ただ、他人の物を壊せば器物損壊の罪に問われることになるため、周囲は他人の奴隷を助けないが害することもない。
奴隷が宿屋の個室を一人で使うなどよほどのことがない限り無理で、食事も主人の残飯をもらうことはあれど奴隷用の食事は用意されない。
奴隷は食事の代わりに栄養剤のような丸薬を飲む。綾人は知らなかったが、奴隷商から渡された荷物の中に結構な日数分の丸薬が入っているらしい。
丸薬と聞いた時に、思わず「忍者かよ!」と突っ込みそうになったのは内緒だ。
一番グレードが低い奴隷は、賎奴隷と呼ばれる。
主に罪を犯した者が落とされる、家畜以下という位置づけの奴隷だそうだ。基本的に所有者はおらず、人間様の言うことを聞かないといけないという。
その話を終えたアレクはフリップを置き、おもむろにシャツのボタンを外していく。
このタイミングで脱ぎだすなんて、まさか……と綾人が思っていると、アレクが胸元を広げて肌を晒した。
筋肉質な体の一点。心臓あたりに、円形の刺青があった。
そしてアレクが手繰り寄せたフリップに《これが賎奴隷の奴隷紋です》という文字が表示される。
綾人は視線を胸元の奴隷紋へ向けた。
――賎奴隷ということは……。あの澄んだ目を持つ、気高い狼のような雰囲気のアレクが犯罪者?
驚愕で声が出ない。
目の前では、綾人の反応を少しも見逃すまいとするかのようにアレクが昏い目でじっと見ている。
綾人はしばらく固まっていたが、よく見るとアレクの昏い目の中に諦めと悲しみが混じっていることに気がついた。
(きっと、なにか事情があったんだ)
唐突にそう思った。
綾人は一時期、人間不信に陥っていたことがある。そんな時は一人で町に出ては、ぼーっといろいろな人を観察していた。その観察は他人だけではなく周囲の人間にも及び、両親や友人、知人と多くの人を観察し、心理学の本も持ち出して分析していた。
気がつくと、目を見ればその人となりがわかるようになっていて、これが割と当たるのだ。
綾人は自分の感覚を信じることにした。
日本に住んでいても冤罪の話を聞く機会は多い。あんなに科学技術が発達した世界でも絶えることがないのだ。この魔法の世界に冤罪がないとは言い切れない。
それに、たとえアレクが大悪党だとしても、この澄んだ目を持つ青年の味方がいてもいいのではないだろうか。
綾人だって犯罪に手を貸す気は全くないが、会って半日もしないアレクに魅了されている自分がいた。アレクの心ごと救いたいとさえ願ってしまう。
綾人はそっと椅子を立ち、ゆっくりとアレクに近づいた。彼は椅子に座りながら顔だけ動かして、綾人をじっと見る。立っている綾人を、座ったままのアレクが見上げている。
綾人はそっと両手を差し出し、アレクの頭をそっと触る。
それから胸元に包み込むように抱き締めた。
「辛かったね」
綾人はアレクの過去になにがあったか知らない。ただ昏い目の奥に、助けてと縋るような色が見えた気がしたのだ。
そうしたら、自然と出てきたのはその一言だった。
アレクの赤髪に指を通しては、撫でるように梳く。じわっと胸元が湿ってきた。アレクが泣いているのだろう。
まさか泣くとは思わず少し驚いたが、安心させるように燃えるような赤い髪を梳いた。
(湿ったの、涙だよね? 鼻水だったらちょっとやだなぁ)
そんなことを思いながら、アレクが落ち着くのを待った。
すっかり落ち着いた様子のアレクは胸元のボタンを再び閉めて、澄まし顔で椅子に座っている。
目元だけが赤く、泣いた後なのが丸わかりなアレクが可愛い……って、男相手になにを思っているんだ俺は! と軽く焦ったが、改めて綾人もアレクに自己紹介をすることにした。
今さらだが、名乗ってすらいなかったのだ。
アレクの事情は聞かなかった。本人が話したければ話すだろうし、話したくなければ話さなくていいと思っている。それに余計な情報を得たがためにスローライフを手放す羽目になりたくない。
――もうすでに厄介事の臭いがするなんて気のせいだ。
賎奴隷に関する常識についても聞いた。通常、賎奴隷の奴隷紋は見えるところに刻印されるらしいので、アレクは特殊な例のようだ。
賎奴隷の紋には誰もが知っている共通の呪文がある。魔力を込めてその呪文を唱えると、紋を刻まれた者に五分間心臓が締めつけられるような痛みが走るらしい。
(異世界の奴隷事情、マジ怖い)
それから、奴隷紋の除去が千三百万Gしたのもアレクが賎奴隷だったからだという。
一般的に通常の奴隷紋を除去するなら三百万Gするかしないかだが、賎奴隷だけは行政手続きがあるようで、簡単に平民にすることができない。
(まぁ、犯罪者を簡単に野放しにするわけにはいかないしね)
ただ、中央に強いコネがある一部の奴隷販売所では金さえ払えば秘密裏に除去が可能だそうだ。
――手間が省けたからラッキーなんだろうけど、つまり法的にはグレーな行為なので、なんとも言えない後味の悪さはある。
その辺りの奴隷事情を聞いたところで綾人は眠気に負けて、他の話は次の日に回すことにした。
異世界転生に強制ハイキングに奴隷うんぬんと一日の内容が濃すぎて、脳がこれ以上の情報は入れるなとシャットダウンを求めたようだ。
風呂またはシャワーも浴びたかったが浴室なんてものはなかったので、その辺も明日考えることにする。
そして、後回しにしていたベッドが一つしかない問題。
二人分のベッドがないのなら、同じベッドに寝るしかない。
綾人としては奴隷とはいえ、明日からお世話になる人を床で寝させるなんてありえないのだ。
ここまで従順だったアレクは珍しく抵抗したが、眠さの限界が来た綾人が何度もあくびを噛みしめながらなかば命令のように言ったら諦めたのか、寝る準備を始めていた。
ベッドはこの世界の住人に合わせてか、とても広い。小柄な綾人とアレクが寝る分には問題ないだろう。
眠すぎて後半なにを言ったか覚えていないが、ベッドに横になった瞬間、寝落ちた。
――人生の中で、眠りに落ちるまでの最速記録を更新した気がする。
***
アレクは目の前で寝こける自らの主人を見て思考停止しつつも、どうするべきか模索するべく頭の片隅でこれまでのことを振り返った。
アレクの奴隷生活は三年ほど前からになる。
奴隷に落ちた時、アレクはすでに喋れない状態になっていた。
その現実を、すぐには受け入れられなかった。
しかしどれだけ抵抗しても誰も助けてはくれない。その事実に気がついてからは諦めを覚え、奴隷教育も受け入れた。
あまり自覚はなかったが、どうやらアレクの顔は整っているほうらしい。周りから言われて、そうなのだと理解した。
そのせいか、よく性対応を期待されながら一般奴隷として購入された。そして夜這いを仕掛けてきた主人に賎奴隷紋を見られ、「騙していたのか」と逆上されては暴行を受け、ボロボロになって奴隷商のもとに戻された。
奴隷商はそうなることがわかっていてアレクを性奴隷より安い一般奴隷として販売するのだ。
たとえ返品されても奴隷商が返金する必要はない。初めから性対応をしない一般奴隷として安く販売している以上、購入した側が訴えようとしても一般奴隷に対して性対応を求めたという契約違反が先にくるからだ。購入者は皆、泣き寝入り状態だった。
だがそんな商売をしていては、当然周りから疎まれる。
購入されてはすぐ返品を繰り返すうちに、しばらくして奴隷商は殺された。
新しい奴隷商に引き取られたものの、その時アレクはすでに顔の綺麗な賎奴隷と水面下で噂されていた。新しい奴隷商はそんなアレクの扱いに手を焼いて、近頃奴隷の人権擁護が活発な隣国の奴隷商に売り払った。
今度はそこで貴族に買われた。今まで男主人にも女主人にも買われ、賎奴隷だとバレては返却されていたので、今度の男性貴族もそうなるとアレクは思っていた。
だが、この男はアレクが賎奴隷であっても気にしなかった。
本気で貞操の危機を感じたアレクは、初めて主人に抵抗してしまった。恵まれた体のアレクが払った手は男の顔を張り飛ばし、ベッドから叩き落とした。
当然、主人は逆上し、その日から毎日のように賎奴隷紋の呪文の詠唱に鞭打ちと、アレクは死を身近に感じるほどに痛めつけられた。
奴隷紋によって自死は禁じられている。だからこそ、そのゆっくりと迫りくる死は過酷な生からの解放であり、アレクにとって救いだった。
しかし、あと数日もすれば死ぬだろうというところで横槍が入り、また別の国に連れていかれた。
そのラスニア王国では隷属魔法契約の使用が認められていると聞いた。ならば今度こそ無理矢理体を開かれるかもしれないし、それ以外もなにをさせられるかわからない。体が回復してしまう前になんとか死ねないかと抵抗したもののあっさり封じられ、大人しくするほかなかった。
それから二週間。商品として店に出せるようにとポーションを与えられ、鞭打たれた傷がすっかり癒えた頃、奴隷商に呼び出された。
いろいろ質問されて答えたところ、今までの何十倍もの値段で売られることを聞かされた。
この国では隷属魔法契約で奴隷を縛る場合、奴隷は奴隷商のもとに戻されることはなく、一生をその主人のもとで終えるのが普通らしい。
そのため、奴隷と主人との相性を見定めて相互に良い関係を築けるように売買を行うことが奴隷商――この国では奴隷販売所というらしいのだが――の仕事の一つだという。
そしてとうとう、アレクの一生を縛る相手が現れた。
奴隷販売所の使用人に連れられて豪華な部屋に入る。
入る時に少し見た印象では、客は小柄なようだった。
客の前で膝立ちになった後、伏せていた顔を上げさせられる。
そこにいたのは、まだ成人前の子供に見えた。黒に近い焦げ茶の髪色は艶やかで、焦げ茶の瞳も綺麗ではあるが、東の島国の血でも入っているのか顔立ちはあっさりしている。特別目を引くかというとそうでもなく、見慣れない顔立ちという以外あまり印象に残らない雰囲気だった。
ただ、ピシッと整えられた黒いズボンに真っ白なシャツ、その上にはなんの生地なのか、光沢のあるあまり見たことのない形のネクタイを結んでいる。姿勢よく座る姿はとても平民には見えない。
貴族令息の道楽だろうか? この値段の奴隷を購入できるとは、実家は相当な資産家なのだろう。
目の前の子供はずっとアレクを見ている。
(気に入られたのだろうか?)
アレクも目の前の人物をじっくり見る。
見慣れない顔立ちという以外、やはり特出したものはない。凡庸な焦げ茶色の瞳……のはずなのに、なぜか惹かれる気がした。
奴隷が許可なく主人の目を見つめることは失礼にあたる。やめなければと思いつつ、どうしてもその瞳から目を逸らすことができない。
奴隷商の言葉で我に返り、アレクは目線を下げた。
そして二人で話すことになった。二人きりになると、突然客に名前を問われた。
名前を問われるなんて三年ぶりだった。
奴隷は物である。物に名前はない。物好きな主人が名前をつけることはあっても奴隷に問うことはしない。
だが、体は勝手に昔の愛称を紙に書きつけていた。
そして常識を教えてほしいと言い、さらには一年でアレクを奴隷から解放するという。
解放なんて甘い言葉で釣っておいて土壇場になって手のひらを返し、絶望に歪む顔を見て楽しむつもりなのだろうか。それとも、本気で言っているのか……
――本気なら、本当に常識が欠如しているようだ。
話を聞く間、客の瞳を見つめ続けていたアレクは、この焦げ茶の瞳が自分を物ではなく人として見てくれているのだと気がついた。
紡がれる言葉は夢物語のようで、あまりに条件がよすぎる。
きっと叶うはずがない。わかっていても、久しぶりの人間扱いに感覚がおかしくなったのだろう。少し悩んだ末、一瞬でも夢を見せてくれた礼にと、この主人のもとへ行くことにした。
通例よりも条件の少ない隷属魔法契約。そして、奴隷販売所のオーナーと結ばれた奴隷紋除去の魔法契約。それらがすべてアレクの目の前で交わされた。
この主人は一体なにをさせようとしているのだろう? アレクは死ぬ前提なのだろうか? いや、それなら奴隷紋除去の代金はあとで払うことにすればいいだろうに、先払いしている。
――なにを考えているのか全くわからない。
そして気がついた。彼は自分で言うように、十歳の子供でも知っているような奴隷の常識すら全く知らないのだ。
しかし奴隷販売所のオーナーと対等に交渉し、契約の取り交わしも難なくこなしていた。信じがたい話だが、本当に常識だけがぶっ飛んでいるのだ。
おそらく奴隷に階級があるのも知らないだろう。アレクが賎奴隷だと知ったら人間扱いは終わりだ。
少し寂しい気もしたが常識を教える契約なので、宿について奴隷の話になった時にさっさと奴隷の階級について話した。
アレクは淡々と賎奴隷の説明と、自分が賎奴隷であることを主人に告げた。
結論から言おう。
なぜか、主人に慰められてしまった。
主人に「辛かったね」と言われた時、初めて理解者を得られたと感じた。
そう、ずっと辛かったのだ。
アレクは三年前まで、人だったのだ。
品行方正とまではいかなくても、罪は犯していない。
綾人は複数ある建物のうち一際綺麗な建物に連れていかれ、豪華な部屋に通された。
そこで早速従業員が一人ずつ部屋に奴隷を連れてきて面談がはじまった。……のだが、のし上がってやるという意思で目がギラギラした女性や、あきらかに綾人を性的な対象として見てくるような色気のある男性、目が死んでいる者など、とても一緒に過ごせる気がしない者ばかりだった。
常識を学ぶ上で半年くらいは生活をともにすると思うが、身の危険を感じる相手といるくらいならリスクを背負ってでも職業斡旋所で普通の使用人を雇ったほうがいいかと、紹介された人数が十人を超えた時点で思いはじめていた。
そんな綾人の様子に気がついたのか、案内役が一つ提案してきた。
「一度、今までとは毛色が違うものをお連れしてもよろしいでしょうか?」
「ああ」
しばらく待っていると綾人より一回り以上大きい、一九〇センチはありそうな男性が長い鎖に繋がれて部屋に入ってきた。
これまでの奴隷たちは鎖など繋がれておらず豪華な服を着ていたが、入ってきた男は服もあまりよさそうではなく、本当に今までとは毛色が違った。
奴隷は綾人の前で跪いて膝立ちになるよう命じられ、伏せていた顔を従業員が上げさせる。
肩につくかつかないかくらいの長さの赤い髪。左側だけ頬まで伸びた前髪で顔の半分は隠れているものの、顔立ちは西洋人のように彫りが深い。それに形の良い眉に、鋭く澄んだ青い瞳。
綾人は一瞬にして目を奪われ、その青い瞳から目が離せなくなった。
「これは隣国のさる貴族に仕えていた奴隷で、主人に歯向かって処分されるところだったのです。元々どこかの貴族だったようで、左目は潰れて喉も焼かれたようで声を発せませんが、処分してしまうには惜しい素材でしょう。ラスニア王国なら隷属魔法契約が使えるのでどうとでもなると、二週間前に連れてきたばかりなのですよ。少々おいたが過ぎるために枷をつけておりますが、体力も魔力も高いので、護衛にはよろしいかと。……いかがでしょうか?」
綾人が今までと違う反応を見せたからか、案内役がすかさず売り込んでくる。
「うーん。でも反抗的なんだよね?」
普段の綾人なら敬語で喋るが、案内役は綾人をどこかの子息のぼんぼんだと思っているようなので、それに合わせて振る舞っている。
「本人曰く性奴隷でなければ従うとのことですが……性奴隷としての使用をお望みでしたら、しばらくお時間をいただければ調整も可能でございます」
要するに拷問でもして隷属魔法契約を結ばせて無理矢理従うようにさせるということだろう。
(……拷問とか、考えるだけで背筋が寒くなる)
「この国や隣国の話を聞きたいのだけど、喋れないのに使えるかな?」
「この者は読み書きができます。字も綺麗で博識のようです。喋ることはできませんが、筆記でのやりとりは可能でしょう」
「うーん……。ちょっと二人きりにさせてもらえるかな?」
「ええ。ただし、お客様はそのテーブルより前には行かないようにお願いしますね。お話が終わりましたらそちらのベルでお呼びください」
テーブルを挟んで綾人の向かい側に椅子が用意された。それから奴隷の男に首の枷を追加し、椅子と床に繋げて身動きできないようにしてから従業員と案内役は退出していった。
改めて目の前の男を見る。
質素な服でも、鎖に繋がれていても、目に傷があっても、その誇り高い狼のような雰囲気はとても奴隷には見えない。誰もが惚れてしまうのではないかと思うほど人を惹きつける魅力を持った美しい男性だった。
男もじっと綾人を見ている。
「お名前は?」
男は少し驚いたような表情を見せながら、先ほど案内役が置いていった紙に文字を書いていく。
名乗りもせずに相手の名前を聞くのは失礼だったかと思いながらも、まだ購入を決めたわけではないので自分の情報を出すのは避けた。
視線を紙に移すと、案内役が言うように確かに綺麗な字だった。
名前はアレクというらしい。
「アレクというんだね。よろしく。私は遠い国から来たもので、常識を教えてほしいんだ。物知らずだから迷惑をかけると思うけど、その辺りの面倒も見てほしい。期間はそうだな……一年でどうだろう」
アレクは怪訝そうな顔をしている。わかりにくかったかと思い、綾人は補足する。
「あぁ、一年というのは、いわば契約期間かな。一年経ったら奴隷から解放する。ただ、隷属魔法契約は結んでもらう予定だ。内容は私に関して、許可したこと以外喋らないことかな。もちろん命の危機がある時はその限りではないけど。これは私が解除するかアレクが死ぬまで守ってもらうことになる」
目の前の男は、「奴隷から解放」という言葉で少し目を開き、隷属魔法契約の話で目を伏せ、契約内容で無表情に戻った。
はたから見れば表情はあまり変わっていないようだが、片方だけ見える澄んだ青い目はしっかり感情を物語っていて、なんだかほっこりする。
「聞きたいことはあるかな? 気になることは先に聞いておいて。答えられないこともあるけどね」
アレクはまた驚いたようで、目を瞬かせている。
質問を考えているのかしばらくじっとした後、紙に書き出す。
《一年ではシンタイキンを払えないと思います。その場合は延長ですか? それともここへ返却ですか?》
しんたいきん? そんな日本語ないぞと思っていたら、脳内で身体金と漢字に変換された。
――スキルの〈言語理解〉が働いたらしい。日本語の単語としては存在しないと思うが、どうやら身請け金と同じような意味のようだ。
ん? それを払うのが俺じゃないの? と綾人は思ったが、主人から自由になるのに奴隷が自分自身の身体を買い上げる、というものだと気がついた。
案内役に聞いたアレクの値段は四千五百万Gだった。それをいきなり無償で解放と言われたら、なにをやらされるのかと不安になるのも当然だ。
「あー。その身体金? はナシでいいよ。多分迷惑をかけると思うし、護衛もしてほしいんだ。それに一生私のことを他人に喋っちゃいけないって制約もあるから、その代金かな。うーん。私も訳ありなんだ。一年間、私を守ってくれれば契約達成ということにしよう。その条件も隷属魔法契約に盛り込むよ」
綾人の話を聞いてますます怪訝な雰囲気を出すアレクに、ちょっと訳あり感を出した上で、それ相応の負担もあるんだとアピールをする。
(確かに、タダより怖いものはないって言うしね)
実際、四千五百万Gは安くない。それとは別にアレクの首についている奴隷紋の除去に千三百万Gかかるらしいのだ。普通なら子供がぽんっと払う値段ではないだろう。
――まぁ、実際子供ではないし、所持金が四億でなければもう少し慎重だったとは思うが。
アレクはしばらく考えていたようだが、しばらく経つと綾人を見て深くうなずいた。
無事、了承してくれたようだ。
ベルを鳴らして先ほどの案内役を呼ぶ。奴隷の購入と、隷属魔法契約の手続きを行うのだ。
「お気に召す商品があってよかったです。隷属魔法契約はこちらの内容でよろしいでしょうか?」
「ああ」
案内役はこの店のオーナーだったらしい。オーナー自ら案内してくれたのかと少し驚いた。
隷属魔法契約には、『生涯、または綾人自身が解除を申し出ない限り、許可した事柄以外の綾人に関するあらゆる情報を他人に流すことを禁ずる。ただしアレクの命に関わる場合を除く』、『綾人は一年後にアレクを奴隷から解放する』という事柄を入れ、あとは隷属魔法契約おすすめ文言セットの中から支障のない文章だけを入れた。たとえば『主人を故意に害さない』、『自害禁止』などだ。
ただ、綾人はなんでも言うことを聞く人形が欲しいわけではないので、『命令したことは反抗することなく実行する』など、アレクの意思を無視するような文言は入れていない。
隷属魔法契約は主人から奴隷に一方的に契約を取りつけるという、魔法をかけられた側だけが遵守しなければいけない契約なので、実は『綾人は一年後にアレクを奴隷から解放する』という内容は効力を発揮しない。たとえ綾人がこれを守らなかったとしても代償があるわけではない。
それでも、アレクに対して誠意を見せておきたいと思って入れたのだ。
それからオーナーとはアレクの奴隷紋を除去するための契約を取り交わした。
普通は主人が直接奴隷を連れて奴隷販売所を訪れればいいのだが、人生なにがあるかわからないから、アレクが一人で訪れても奴隷紋を除去できるように契約が必要だと思ったのだ。
もちろんすべての代金は先払いで、しめて五千八百万G。チップ兼口止め料を含めて六千万Gを渡した。懐の温かくなったオーナーが他に必要なものはないかを聞いてきたので、アレクが着る服や綾人の平民用の着替えなど一通りの日用品を頼んだ。
ついでにスキル一覧や魔法一覧が載っているような本が手に入るところがないか聞いたところ、契約手続き中にどこからか購入してきてくれた。
手続きを終え、アレクは今まで着ていた質素な服から綺麗な服に着替えただけで、格段に見目がよくなった。
これで目の傷と首の奴隷紋がなければなおよかっただろうと思ったところで出る準備が整ったので、奴隷販売所を後にした。
店の外に出るともう暗くなっていた。ずいぶん長居したようだ。
さっそくアレクの出番だ。
「アレクー。さっそく出番だよ! 今日の宿屋を探したいんだけど、どこら辺にあるとかどこに聞けば案内してくれるかとか、わかる?」
アレクは少し驚いたような顔をした後、フリップボードのような板に字を映し出す。
《観光案内所で聞きます》
これはアレクのように喋れない人用の、魔力を通すと一瞬で文字が表示されるという優れた魔道具だ。
奴隷販売所でアレクがつけていた枷は魔力制御をするものだったため紙を使ったが、契約で危害を加える心配もない今はこのような魔道具も使用できるのだ。
ただ文字数制限があり、長文は分けて書かなければならない。筆談よりは効率がいいものの、やはり喋りに比べると不便ではある。
アレクもこの街は二週間前に来たばかりだろうに、迷う様子もなく進んでいく。宿は大体駅の近くにある、など定番の場所があるのだろうか? 疑問に思いつつも黙ってついていった。
昼間に通ったバザールの近くまで戻り、奴隷販売所とは逆のほうへ向かうと、ドアが開け放たれている建物があった。
ドアには『ドネステラ観光案内所』と記載がある。どうやらここが目的の場所らしい。
綾人が室内を見回している間にアレクと観光案内所の人が宿を手配してくれたようで、《宿へ向かう》とフリップの表示を見せられ、人通りの多いほうへ向かって再び歩き出す。
綾人はアレクの後ろを歩いているのだが、アレクは少し進んでは振り返って綾人がついてきているか都度確認してくる。
(うーん。やっぱり子供に見えてるのかな?)
そう思っていると、いつの間にか歩く速度を合わせてくれていた。
アレクが気を遣ってくれているのがわかってほっこりした綾人だった。
大通りから少し外れた場所にある宿屋が今夜の宿のようだ。
受付では綾人が直接やりとりした。一泊二食付きで一万G。少し高めで長期滞在はしづらいが、せっかくアレクが探してきてくれたのだし、大人が二人なら妥当なところだ。
綾人は三泊分の代金を支払い、部屋の鍵を受け取った。
夕食の時間は過ぎていたが、余りがあるというのでパックに詰めてもらって部屋で食べることにした。
そして、部屋へ向かう。
ドアを開けると小さめのテーブルセットに大きいベッドが一つ。一人で過ごすにはちょっと広めで、過ごしやすそうだ。
(ん? 一人? ベッド一つ!?)
中のドアを一つずつ開けても洗面所やクローゼットがあるだけで、どう見てもワンルームだった。
「あれ? 二部屋借りたんだっけ?」
と、綾人が混乱気味に言う。
《いえ、一部屋です》とアレクが律儀にフリップボードで答えてくれた。
「だ、だよね? アレクはどこで寝る?」
《床です》
《廊下のほうがよろしいですか?》
アレクは、なぜそんな当たり前のことを聞くのだろう、とでも言うような顔をしている。
綾人にしてみれば、これが日本の家屋であればまだ床で寝るのもありだと思う。
だが、ここは異世界。部屋の中は土足なのだ。
そんな床に人を寝かせることなんてできない。
しかも廊下なんて選択肢がある時点で、馬車に乗せてくれたオルが言った通り奴隷は物扱いなのだとカルチャーショックを受けた。
この世界で生きていくには、早急に奴隷の認識について情報を得る必要があると思った。
小さめのテーブルセットに先ほどもらった夕食を並べる。奴隷販売所でお菓子をいただいたとはいえ、この世界に来てからちゃんとした食事をしていないため、腹はとても空いていた。
テーブルセットには椅子が二脚あったのでアレクに座ってもらい、一緒に食べる。
初めこそ綾人の指示に戸惑っていたようだが、アレクは意外と柔軟性があるのか素直に食べてくれた。
アレクの食事の仕方は元貴族らしいという前情報通り、とても洗練されている。気づけば綾人は、アレクが食事する様子をじっと見ていた。
食事を済ますと、本題とばかりにさっそく常識の確認を始める。
この世界での奴隷はやはり人ではなく物の扱いだそうだ。最近は奴隷にも人権をという主張が叫ばれるようになり、隣の国では隷属魔法契約を禁止しているほどだが、実際はまだまだ物という認識が一般的だという。
そして奴隷の中にもグレードがある。
グレードが高いのは性奴隷、愛玩奴隷、戦闘奴隷の三種。
それらは主人が身請けする場合が多いこともあり、平民になりやすい。また、主人が許可すれば、主人がいる間だけは人間扱いされるらしい。
真ん中のグレードで、最も数が多いのが一般奴隷。
彼らは完全に物扱いなので、主人がどう扱おうが誰も咎めない。ただ、他人の物を壊せば器物損壊の罪に問われることになるため、周囲は他人の奴隷を助けないが害することもない。
奴隷が宿屋の個室を一人で使うなどよほどのことがない限り無理で、食事も主人の残飯をもらうことはあれど奴隷用の食事は用意されない。
奴隷は食事の代わりに栄養剤のような丸薬を飲む。綾人は知らなかったが、奴隷商から渡された荷物の中に結構な日数分の丸薬が入っているらしい。
丸薬と聞いた時に、思わず「忍者かよ!」と突っ込みそうになったのは内緒だ。
一番グレードが低い奴隷は、賎奴隷と呼ばれる。
主に罪を犯した者が落とされる、家畜以下という位置づけの奴隷だそうだ。基本的に所有者はおらず、人間様の言うことを聞かないといけないという。
その話を終えたアレクはフリップを置き、おもむろにシャツのボタンを外していく。
このタイミングで脱ぎだすなんて、まさか……と綾人が思っていると、アレクが胸元を広げて肌を晒した。
筋肉質な体の一点。心臓あたりに、円形の刺青があった。
そしてアレクが手繰り寄せたフリップに《これが賎奴隷の奴隷紋です》という文字が表示される。
綾人は視線を胸元の奴隷紋へ向けた。
――賎奴隷ということは……。あの澄んだ目を持つ、気高い狼のような雰囲気のアレクが犯罪者?
驚愕で声が出ない。
目の前では、綾人の反応を少しも見逃すまいとするかのようにアレクが昏い目でじっと見ている。
綾人はしばらく固まっていたが、よく見るとアレクの昏い目の中に諦めと悲しみが混じっていることに気がついた。
(きっと、なにか事情があったんだ)
唐突にそう思った。
綾人は一時期、人間不信に陥っていたことがある。そんな時は一人で町に出ては、ぼーっといろいろな人を観察していた。その観察は他人だけではなく周囲の人間にも及び、両親や友人、知人と多くの人を観察し、心理学の本も持ち出して分析していた。
気がつくと、目を見ればその人となりがわかるようになっていて、これが割と当たるのだ。
綾人は自分の感覚を信じることにした。
日本に住んでいても冤罪の話を聞く機会は多い。あんなに科学技術が発達した世界でも絶えることがないのだ。この魔法の世界に冤罪がないとは言い切れない。
それに、たとえアレクが大悪党だとしても、この澄んだ目を持つ青年の味方がいてもいいのではないだろうか。
綾人だって犯罪に手を貸す気は全くないが、会って半日もしないアレクに魅了されている自分がいた。アレクの心ごと救いたいとさえ願ってしまう。
綾人はそっと椅子を立ち、ゆっくりとアレクに近づいた。彼は椅子に座りながら顔だけ動かして、綾人をじっと見る。立っている綾人を、座ったままのアレクが見上げている。
綾人はそっと両手を差し出し、アレクの頭をそっと触る。
それから胸元に包み込むように抱き締めた。
「辛かったね」
綾人はアレクの過去になにがあったか知らない。ただ昏い目の奥に、助けてと縋るような色が見えた気がしたのだ。
そうしたら、自然と出てきたのはその一言だった。
アレクの赤髪に指を通しては、撫でるように梳く。じわっと胸元が湿ってきた。アレクが泣いているのだろう。
まさか泣くとは思わず少し驚いたが、安心させるように燃えるような赤い髪を梳いた。
(湿ったの、涙だよね? 鼻水だったらちょっとやだなぁ)
そんなことを思いながら、アレクが落ち着くのを待った。
すっかり落ち着いた様子のアレクは胸元のボタンを再び閉めて、澄まし顔で椅子に座っている。
目元だけが赤く、泣いた後なのが丸わかりなアレクが可愛い……って、男相手になにを思っているんだ俺は! と軽く焦ったが、改めて綾人もアレクに自己紹介をすることにした。
今さらだが、名乗ってすらいなかったのだ。
アレクの事情は聞かなかった。本人が話したければ話すだろうし、話したくなければ話さなくていいと思っている。それに余計な情報を得たがためにスローライフを手放す羽目になりたくない。
――もうすでに厄介事の臭いがするなんて気のせいだ。
賎奴隷に関する常識についても聞いた。通常、賎奴隷の奴隷紋は見えるところに刻印されるらしいので、アレクは特殊な例のようだ。
賎奴隷の紋には誰もが知っている共通の呪文がある。魔力を込めてその呪文を唱えると、紋を刻まれた者に五分間心臓が締めつけられるような痛みが走るらしい。
(異世界の奴隷事情、マジ怖い)
それから、奴隷紋の除去が千三百万Gしたのもアレクが賎奴隷だったからだという。
一般的に通常の奴隷紋を除去するなら三百万Gするかしないかだが、賎奴隷だけは行政手続きがあるようで、簡単に平民にすることができない。
(まぁ、犯罪者を簡単に野放しにするわけにはいかないしね)
ただ、中央に強いコネがある一部の奴隷販売所では金さえ払えば秘密裏に除去が可能だそうだ。
――手間が省けたからラッキーなんだろうけど、つまり法的にはグレーな行為なので、なんとも言えない後味の悪さはある。
その辺りの奴隷事情を聞いたところで綾人は眠気に負けて、他の話は次の日に回すことにした。
異世界転生に強制ハイキングに奴隷うんぬんと一日の内容が濃すぎて、脳がこれ以上の情報は入れるなとシャットダウンを求めたようだ。
風呂またはシャワーも浴びたかったが浴室なんてものはなかったので、その辺も明日考えることにする。
そして、後回しにしていたベッドが一つしかない問題。
二人分のベッドがないのなら、同じベッドに寝るしかない。
綾人としては奴隷とはいえ、明日からお世話になる人を床で寝させるなんてありえないのだ。
ここまで従順だったアレクは珍しく抵抗したが、眠さの限界が来た綾人が何度もあくびを噛みしめながらなかば命令のように言ったら諦めたのか、寝る準備を始めていた。
ベッドはこの世界の住人に合わせてか、とても広い。小柄な綾人とアレクが寝る分には問題ないだろう。
眠すぎて後半なにを言ったか覚えていないが、ベッドに横になった瞬間、寝落ちた。
――人生の中で、眠りに落ちるまでの最速記録を更新した気がする。
***
アレクは目の前で寝こける自らの主人を見て思考停止しつつも、どうするべきか模索するべく頭の片隅でこれまでのことを振り返った。
アレクの奴隷生活は三年ほど前からになる。
奴隷に落ちた時、アレクはすでに喋れない状態になっていた。
その現実を、すぐには受け入れられなかった。
しかしどれだけ抵抗しても誰も助けてはくれない。その事実に気がついてからは諦めを覚え、奴隷教育も受け入れた。
あまり自覚はなかったが、どうやらアレクの顔は整っているほうらしい。周りから言われて、そうなのだと理解した。
そのせいか、よく性対応を期待されながら一般奴隷として購入された。そして夜這いを仕掛けてきた主人に賎奴隷紋を見られ、「騙していたのか」と逆上されては暴行を受け、ボロボロになって奴隷商のもとに戻された。
奴隷商はそうなることがわかっていてアレクを性奴隷より安い一般奴隷として販売するのだ。
たとえ返品されても奴隷商が返金する必要はない。初めから性対応をしない一般奴隷として安く販売している以上、購入した側が訴えようとしても一般奴隷に対して性対応を求めたという契約違反が先にくるからだ。購入者は皆、泣き寝入り状態だった。
だがそんな商売をしていては、当然周りから疎まれる。
購入されてはすぐ返品を繰り返すうちに、しばらくして奴隷商は殺された。
新しい奴隷商に引き取られたものの、その時アレクはすでに顔の綺麗な賎奴隷と水面下で噂されていた。新しい奴隷商はそんなアレクの扱いに手を焼いて、近頃奴隷の人権擁護が活発な隣国の奴隷商に売り払った。
今度はそこで貴族に買われた。今まで男主人にも女主人にも買われ、賎奴隷だとバレては返却されていたので、今度の男性貴族もそうなるとアレクは思っていた。
だが、この男はアレクが賎奴隷であっても気にしなかった。
本気で貞操の危機を感じたアレクは、初めて主人に抵抗してしまった。恵まれた体のアレクが払った手は男の顔を張り飛ばし、ベッドから叩き落とした。
当然、主人は逆上し、その日から毎日のように賎奴隷紋の呪文の詠唱に鞭打ちと、アレクは死を身近に感じるほどに痛めつけられた。
奴隷紋によって自死は禁じられている。だからこそ、そのゆっくりと迫りくる死は過酷な生からの解放であり、アレクにとって救いだった。
しかし、あと数日もすれば死ぬだろうというところで横槍が入り、また別の国に連れていかれた。
そのラスニア王国では隷属魔法契約の使用が認められていると聞いた。ならば今度こそ無理矢理体を開かれるかもしれないし、それ以外もなにをさせられるかわからない。体が回復してしまう前になんとか死ねないかと抵抗したもののあっさり封じられ、大人しくするほかなかった。
それから二週間。商品として店に出せるようにとポーションを与えられ、鞭打たれた傷がすっかり癒えた頃、奴隷商に呼び出された。
いろいろ質問されて答えたところ、今までの何十倍もの値段で売られることを聞かされた。
この国では隷属魔法契約で奴隷を縛る場合、奴隷は奴隷商のもとに戻されることはなく、一生をその主人のもとで終えるのが普通らしい。
そのため、奴隷と主人との相性を見定めて相互に良い関係を築けるように売買を行うことが奴隷商――この国では奴隷販売所というらしいのだが――の仕事の一つだという。
そしてとうとう、アレクの一生を縛る相手が現れた。
奴隷販売所の使用人に連れられて豪華な部屋に入る。
入る時に少し見た印象では、客は小柄なようだった。
客の前で膝立ちになった後、伏せていた顔を上げさせられる。
そこにいたのは、まだ成人前の子供に見えた。黒に近い焦げ茶の髪色は艶やかで、焦げ茶の瞳も綺麗ではあるが、東の島国の血でも入っているのか顔立ちはあっさりしている。特別目を引くかというとそうでもなく、見慣れない顔立ちという以外あまり印象に残らない雰囲気だった。
ただ、ピシッと整えられた黒いズボンに真っ白なシャツ、その上にはなんの生地なのか、光沢のあるあまり見たことのない形のネクタイを結んでいる。姿勢よく座る姿はとても平民には見えない。
貴族令息の道楽だろうか? この値段の奴隷を購入できるとは、実家は相当な資産家なのだろう。
目の前の子供はずっとアレクを見ている。
(気に入られたのだろうか?)
アレクも目の前の人物をじっくり見る。
見慣れない顔立ちという以外、やはり特出したものはない。凡庸な焦げ茶色の瞳……のはずなのに、なぜか惹かれる気がした。
奴隷が許可なく主人の目を見つめることは失礼にあたる。やめなければと思いつつ、どうしてもその瞳から目を逸らすことができない。
奴隷商の言葉で我に返り、アレクは目線を下げた。
そして二人で話すことになった。二人きりになると、突然客に名前を問われた。
名前を問われるなんて三年ぶりだった。
奴隷は物である。物に名前はない。物好きな主人が名前をつけることはあっても奴隷に問うことはしない。
だが、体は勝手に昔の愛称を紙に書きつけていた。
そして常識を教えてほしいと言い、さらには一年でアレクを奴隷から解放するという。
解放なんて甘い言葉で釣っておいて土壇場になって手のひらを返し、絶望に歪む顔を見て楽しむつもりなのだろうか。それとも、本気で言っているのか……
――本気なら、本当に常識が欠如しているようだ。
話を聞く間、客の瞳を見つめ続けていたアレクは、この焦げ茶の瞳が自分を物ではなく人として見てくれているのだと気がついた。
紡がれる言葉は夢物語のようで、あまりに条件がよすぎる。
きっと叶うはずがない。わかっていても、久しぶりの人間扱いに感覚がおかしくなったのだろう。少し悩んだ末、一瞬でも夢を見せてくれた礼にと、この主人のもとへ行くことにした。
通例よりも条件の少ない隷属魔法契約。そして、奴隷販売所のオーナーと結ばれた奴隷紋除去の魔法契約。それらがすべてアレクの目の前で交わされた。
この主人は一体なにをさせようとしているのだろう? アレクは死ぬ前提なのだろうか? いや、それなら奴隷紋除去の代金はあとで払うことにすればいいだろうに、先払いしている。
――なにを考えているのか全くわからない。
そして気がついた。彼は自分で言うように、十歳の子供でも知っているような奴隷の常識すら全く知らないのだ。
しかし奴隷販売所のオーナーと対等に交渉し、契約の取り交わしも難なくこなしていた。信じがたい話だが、本当に常識だけがぶっ飛んでいるのだ。
おそらく奴隷に階級があるのも知らないだろう。アレクが賎奴隷だと知ったら人間扱いは終わりだ。
少し寂しい気もしたが常識を教える契約なので、宿について奴隷の話になった時にさっさと奴隷の階級について話した。
アレクは淡々と賎奴隷の説明と、自分が賎奴隷であることを主人に告げた。
結論から言おう。
なぜか、主人に慰められてしまった。
主人に「辛かったね」と言われた時、初めて理解者を得られたと感じた。
そう、ずっと辛かったのだ。
アレクは三年前まで、人だったのだ。
品行方正とまではいかなくても、罪は犯していない。
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