66 / 69
2章ローゼンベルト王国
【番外編】*小話*ヨハンの事情〈ヨハン視点〉
しおりを挟む
※「処遇」のアレクの部屋から出て行った直後のヨハン側の話です。
--------------
――パタン。
アレクの部屋から出たヨハンは、先程綾人に確認した事項を関係各所へ連携する為に、足早に廊下を歩きながら先程の事を思い出す。
綾人が目覚めたと聞いてから、アレクに会わせて欲しいと頼んで5日目、やっと面会が叶った。
部屋に入って、顔色も良く元気そうなアヤト様を見てほっとしたのも束の間、目に入ってきたのは無駄に高級そうなミスリルの足枷。
ヨハンの頭にはこの2ヶ月の間にあった、アレクとのやり取りが走馬灯のように流れた。
~走馬灯開始~
――綾人が廃人になって数日。
アレクの自室をすぐ出た所でヨハンは話す。
必要な打ち合わせの後、ずっと気になっていた事を言ったのだ。
「……アレクセイ殿下、アヤト様に付きっきりでは貴方も壊れてしまいますよ。それに目覚めてからすぐ動けるように、今のうちに関係各所と申し合わせてしまえば、アヤト様が目覚めた時、アヤト様の側にいられる時間が増えると思いますよ?」
「……そうだな。ただ、もうひと時だって、時間の許す限り一緒にいたいのだ。もう離れたくない」
「まぁ、分からなくも無いですが、重すぎる愛は相手に負担がかかってしまうものです。あまり重すぎるとアヤト様に逃げられちゃいますよ」
「…………そうなのか。……分かった」
酷く青ざめたアレクは、その日の話は終わりとばかりに室内に戻って行った。
――翌日。
相変わらず登城しないアレクの為に、ヨハンがアレクの屋敷へ赴き、必要な確認が終わった後、珍しくアレクから質問され不意に雑談が始まった。
「ヨハン、金にいとめは付けないとして、硬くて頑丈で軽い金属といえばなんだ?」
「? やはりミスリルですかね? 魔法付与をされないのでしたら、多少重くなりますが、オリハルコンもですかね」
「そうだよな……。では、一番頑丈で重い金属はやはりアダマンタイトか?」
「そうだと思います。が、何か?」
「いや、何でもない」
――ある日のアレクの屋敷の使用人が話していた噂話。
「病み上がりのアレクセイ殿下、ベットの支柱を全てアダマンタイトに変えたそうよ」
「それは……、随分重そうだな。それでなくてもベットは重いのに、アダマンタイトの支柱だと持ち上げるのも一苦労だな」
「だから、組み立ては直接アレクセイ殿下の部屋で行われたそうよ。その時騎士6人で持ち上げてやっと数センチ浮いたとか」
「でもいきなり、何で支柱をアダマンタイトにするんだろうね? 健康にいいのだろうか?」
「さあ? お偉いさんの考えることはわからないわ」
極一部を除き、表向きはアレクは重い病に伏せっていた事になっている。
ヨハンはたまたま居合せ、何とはなしに、使用人達の話を最後まで聞いてしまったが、何でベットの支柱をアダマンタイトに? と同じ疑問を抱いた。
すぐに別の仕事があった為に忘れてしまったが。
――ある日の街の噂
「大量のミスリル発注がきたと思ったら、今度はそれで早急に鎖をつくる用に指示があったそうよ」
「鎖とは、なんか大きい魔物でも捕まえるのかね?」
「どうなのかしら? それならミスリルじゃなくても良いと思うんだけど、どうやら魔法付与もされるらしいのよね」
「お貴族様が考える事はわからんね」
ヨハンは仕事で街へ出た時、最近出た話題の金属の話が聞こえ、またしても最後まで会話を聞いてしまった。
そして、ヨハンもミスリルの鎖で何をするんだ? と思ったが、すぐに頭の片隅に追いやり、仕事を進めた。
――別の日
登城しないアレクの為に、ヨハンがアレクの屋敷へ赴くのも慣れた頃。
「そうだ、明日以降は必要であれば、登城しよう。必要であればだがな」
唐突にアレクから登城する旨の連絡を受けヨハンは喜んだ。
「それは助かります。やはり、その場で議論した方が良い事もありますからね」
「ああ。準備が整ったからな」
ヨハンはなんの準備だろう? と思ったものの、何故だか、深く突っ込んではいけないような気がして、話を流したのだった。
~走馬灯終了~
走馬灯が流れ終わり再度、綾人を見る。
綾人の足には、光り輝く長い鎖付きの足枷。
……重くは無さそうだ。
そして、その鎖の行先は、ベットの支柱。
……ベットの支柱が無駄に重々しい雰囲気を醸し出している。
点と点が線に繋がってしまった瞬間だった。
明らかにヨハンのせいである。
監禁生活が終わった後のまた監禁。
ヨハンは申し訳無さで一杯になった。
――アヤト様すみません。
ただ、こればかりはもうヨハンの手を出せる範囲を超えているため、綾人が早く解放される事を祈るばかりだった。
--------------
――パタン。
アレクの部屋から出たヨハンは、先程綾人に確認した事項を関係各所へ連携する為に、足早に廊下を歩きながら先程の事を思い出す。
綾人が目覚めたと聞いてから、アレクに会わせて欲しいと頼んで5日目、やっと面会が叶った。
部屋に入って、顔色も良く元気そうなアヤト様を見てほっとしたのも束の間、目に入ってきたのは無駄に高級そうなミスリルの足枷。
ヨハンの頭にはこの2ヶ月の間にあった、アレクとのやり取りが走馬灯のように流れた。
~走馬灯開始~
――綾人が廃人になって数日。
アレクの自室をすぐ出た所でヨハンは話す。
必要な打ち合わせの後、ずっと気になっていた事を言ったのだ。
「……アレクセイ殿下、アヤト様に付きっきりでは貴方も壊れてしまいますよ。それに目覚めてからすぐ動けるように、今のうちに関係各所と申し合わせてしまえば、アヤト様が目覚めた時、アヤト様の側にいられる時間が増えると思いますよ?」
「……そうだな。ただ、もうひと時だって、時間の許す限り一緒にいたいのだ。もう離れたくない」
「まぁ、分からなくも無いですが、重すぎる愛は相手に負担がかかってしまうものです。あまり重すぎるとアヤト様に逃げられちゃいますよ」
「…………そうなのか。……分かった」
酷く青ざめたアレクは、その日の話は終わりとばかりに室内に戻って行った。
――翌日。
相変わらず登城しないアレクの為に、ヨハンがアレクの屋敷へ赴き、必要な確認が終わった後、珍しくアレクから質問され不意に雑談が始まった。
「ヨハン、金にいとめは付けないとして、硬くて頑丈で軽い金属といえばなんだ?」
「? やはりミスリルですかね? 魔法付与をされないのでしたら、多少重くなりますが、オリハルコンもですかね」
「そうだよな……。では、一番頑丈で重い金属はやはりアダマンタイトか?」
「そうだと思います。が、何か?」
「いや、何でもない」
――ある日のアレクの屋敷の使用人が話していた噂話。
「病み上がりのアレクセイ殿下、ベットの支柱を全てアダマンタイトに変えたそうよ」
「それは……、随分重そうだな。それでなくてもベットは重いのに、アダマンタイトの支柱だと持ち上げるのも一苦労だな」
「だから、組み立ては直接アレクセイ殿下の部屋で行われたそうよ。その時騎士6人で持ち上げてやっと数センチ浮いたとか」
「でもいきなり、何で支柱をアダマンタイトにするんだろうね? 健康にいいのだろうか?」
「さあ? お偉いさんの考えることはわからないわ」
極一部を除き、表向きはアレクは重い病に伏せっていた事になっている。
ヨハンはたまたま居合せ、何とはなしに、使用人達の話を最後まで聞いてしまったが、何でベットの支柱をアダマンタイトに? と同じ疑問を抱いた。
すぐに別の仕事があった為に忘れてしまったが。
――ある日の街の噂
「大量のミスリル発注がきたと思ったら、今度はそれで早急に鎖をつくる用に指示があったそうよ」
「鎖とは、なんか大きい魔物でも捕まえるのかね?」
「どうなのかしら? それならミスリルじゃなくても良いと思うんだけど、どうやら魔法付与もされるらしいのよね」
「お貴族様が考える事はわからんね」
ヨハンは仕事で街へ出た時、最近出た話題の金属の話が聞こえ、またしても最後まで会話を聞いてしまった。
そして、ヨハンもミスリルの鎖で何をするんだ? と思ったが、すぐに頭の片隅に追いやり、仕事を進めた。
――別の日
登城しないアレクの為に、ヨハンがアレクの屋敷へ赴くのも慣れた頃。
「そうだ、明日以降は必要であれば、登城しよう。必要であればだがな」
唐突にアレクから登城する旨の連絡を受けヨハンは喜んだ。
「それは助かります。やはり、その場で議論した方が良い事もありますからね」
「ああ。準備が整ったからな」
ヨハンはなんの準備だろう? と思ったものの、何故だか、深く突っ込んではいけないような気がして、話を流したのだった。
~走馬灯終了~
走馬灯が流れ終わり再度、綾人を見る。
綾人の足には、光り輝く長い鎖付きの足枷。
……重くは無さそうだ。
そして、その鎖の行先は、ベットの支柱。
……ベットの支柱が無駄に重々しい雰囲気を醸し出している。
点と点が線に繋がってしまった瞬間だった。
明らかにヨハンのせいである。
監禁生活が終わった後のまた監禁。
ヨハンは申し訳無さで一杯になった。
――アヤト様すみません。
ただ、こればかりはもうヨハンの手を出せる範囲を超えているため、綾人が早く解放される事を祈るばかりだった。
応援ありがとうございます!
26
お気に入りに追加
1,632
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる