レディ・クローンズ

蟹虎 夜光

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Headed for the truth

第9話 問題 あなたの父さんは

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 広く綺麗な研究所。ここで行われるのはそれはそれは驚きでいっぱいのクイズ番組。
「「クイズ!福瀬ショック!」」
 鏡リマと謎のタヌキはそう言うと研究所の空気はクイズ番組そのものへと変わった。
「ど、どうなってんだこれ……」
 俺はただただ困惑していた。今がどんな状態かもしれず。

「どうだどうだ!魔法少女と対等に戦える強化人間の力は!最高に最悪だろ?」
『憎悪』の力を持つ猫宮にとって魔法少女はもはや敵では無いのである。
「俺の『憎悪』は全世界の相手を憎む感情が強ければ強いほど……それは強さを増していく。人間ってのは悪い生物なんだよ。人は他人の成功を誰もが喜べるわけじゃない、争いは誰かが勝てば誰かは負ける……己を憎むか相手を憎むかどちらにせよ終わりだ。」
 強大な相手を見るほど人は恐れていく。彼女達四人の魔法少女は今、強大な相手を前に心では戦いたいと思いながらも恐怖に怯えている。それどころか相手を憎む世界の人々の怨念が強いために生まれた縄により、行動が何もかも制限されているのである。
「お前らチャーシューにでもなるかもな。」

「ここが研究所よ。」
 ホプスの車で連れられた研究所は広大である。東京ドーム何個分だろうか。俺はこの大きさに心底圧倒された。
「すっごい。」
「着いてきて、私の兄や貴方のお父さんが開発に携わったシステムの完成するところを一緒に行いましょう。」
 ……と言って何が起きたかと思えば。
「さぁやってまいりました!クイズ!福瀬ショック!司会は全タヌキの憧れ!わのぽん太と!」
「鏡リマでお送りしまーす。」
 クイズ!福瀬ショック!が始まったのである。
「ぽん太さん!今回のチャレンジ方法は?」
「福瀬さんの息子さんに答えてもらおーう!」
 ……このノリでどうやって進めてくの?怖い、怖すぎる。
「こんなんでいいんですか本当に!?」
 俺は思わずツッコミを入れてしまった。
「……気持ちは分かる。だが落ち着け少年。お前がクイズに答える前に教えてやる。人生に正解も不正解もねえ。」
「ぽ、ぽん太さん……!」
 あんた今最高にかっこいい台詞を言ってるよ!
「さ、クイズをやっていきましょう。十二問間違えずに答えることが出来たらセンキシの力が解放!そして協力金としておよそ百万円の贈呈!」
 ぽん太さんの情緒がおかしすぎて怖いが……お小遣い欲しいからやってやろうじゃねえか。
 一之輔の財布内にある所持金、3,520円。へそくりもなし。

「お前ら魔法少女はここで終わりなんだよ!」
 縛られ続けている四人の魔法少女。彼女達はどうにかして戦おうとする。
「ストーム・ヴォルケーノ……!」
 四人の縄を解くように燃やしたセカンダ。
「ありがとうセカンダ。次は私の出番ね。」
 そう言うと呪文を唱えるサーディ。
「テクニック・メディック」
 回復していく四人の魔法少女。
「なら次は私かな。アイツにいち早く当てるには……」
 元気になったフォーサーはそういうと魔法を唱える。
「ペガサス・ブリザード」
 天馬のように飛び込んでく馬を模した氷の生命体。猫宮目掛けて飛び込んでくその姿は獲物を狙うようだ。
「グハッ!」
 猫宮は血を出した。
「そして次は私ね!狙った獲物は逃がさない!」
 ファスタは待っていたかのように喜びながら呪文を放つ。
「シャイニー・ランチャー!」
 光弾が飛び出す姿は相手が逃げられないスピードで迫り来る容赦のない速さ。
「やった!撃てた!」
 喜ぶファスタとみんなで達成した喜びで集まる一同。
「勝ったつもりか……雑魚がよ。」
「いや、まだまだこれからだ!」
 セカンダの叫びにより、士気が上がる四人のクローン兼魔法少女。そう、彼らの戦いが始まるのは今だ。

「第一問、お前の父の名前は?」
「……福瀬功」
 一方その頃、機械音声に従いクイズをしていた俺。正直これを問題にするなんて身内として恥ずかしい。
「第二問、お前の父親の誕生日は?」
「……1月30日。」
「第三問、お前の父親の口癖は?」
「考えてる……」
「第四問、お前の父親が大切にしていた宝物は?」
「母さんと赤ん坊の俺が寝ている写真。」
 俺自身、なんで覚えているのか分からない。でもこのクイズ答えてて顔が赤くなるのは身に染みてわかる。
「第五問、お前の幼少期に起きたお前の父親が恥ずかしいと思ったエピソードは?」
「雨上がりに滑り台で遊んで父親のズボンが濡れて、その日の帰りに全裸で運転した話。」
 恥ずかしい。
「……ププッ」
 酷すぎてリマさんに笑われた。これいつまで続くんだ。
「第六問、お前が父親にやった最初のイタズラは?」
「……全部のズボンの股間部分にファブ〇ーズかけておもらししてるように見せた。」
 あれ、根に持ってたの?それで今クイズに入れたって仕打ち?嘘でしょ?
「……プププッ」
 クールな顔がどんどん笑顔になってくリマさんを見てなんだかこっちも笑いそうになった。
 さぁ残り半分になったな。あんたの醜態晒す勢いでこっちはクイズしてやるよ!

「憎悪がコレで終わりなわけねえだろ!」
「くっ……」
 力を拡大させ、広げていく姿は悪夢そのもの。人の憎しみが魔術に変わっていくのを実感する。そして再び縄によって縛られる魔法少女四人。
「さっきまでの威勢は?おいおいどこに行ったんだよ!」
「離しなさいよ……」
「離さねえよ。お前らはこのまま終わるんだからよ!」
「終わらせない!」
 どこかから違う女性の声が聞こえた。ショートヘアーのボーイッシュな性格の女性だ。
「魔法少女軍二番隊隊長……二井原ろここ、助太刀する。」
 その掛け声とともに大量に走り出す二番隊。まるで不良の抗争のような空気へと変わる。
「おもしれぇ……やってみろ!」
「二番隊……突撃!」
 一人の強化人間を相手に少なからず50人はいる魔法少女軍の彼女たち。この指示をしたのは魔法少女会のトップであるアラタカである事を彼女達は知らない。

「ブブラ様、正気ですか!?」
 魔法少女会のトップの指示に疑問を抱く一人の男。名をザーモという。
「ザーモ……まさか、私を信用出来ないの?」
 アラタカの顔を見るザーモ。決断力が凄まじいと思えるほどの目力である……しかし何故だろうか。それよりも気になるのは、彼女が緊張からなのか手の位置が落ち着いていないという点である。
「しかし何故二番隊を出すのですか!?」
「……彼女達を助けられるのは並の魔法少女では不可能に近い。相手が強化人間と呼ばれる存在なら尚更無理ね。なら隊を出してまで彼女達を助けるしかない。」
「ですが、何故あの四人にそこまで……!?」
「……決まってるじゃない。」
 そう言うと手が慌てなくなり、顔の前で組み始める。
希望ホプスが見つけた魔法少女には意味がある。」
 ニヤリと笑う彼女は策士のようだ。
「あとそれともうひとつ……」
 椅子から起き上がり、彼女はザーモに近付く。そして肩に手を置いて耳元に近付く。
「この提案を彼女達には貴方の指示にしてくれないかしら?」
「……何故ですか?」
「彼女達を率いるリーダーの二井原ろここは責任感の強い女。自分たちに上の者から指示が来たかと思って期待したら何処から来たか不明な魔法少女の救助……彼女達より後に立てられた隊ではなく二番隊……自分達の実力不足とでも考えて勘違いするはず。」
「……はぁ。」
 確かに彼女達は戦績も最近低い。そのため責任感もより感じるだろう。

「……二番隊、突然だが今から送る座標に行って救助に行けるか?」
「……僕たちで?上からの指示ですか?」
「……いや、俺の案だ。」

 つづく
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