悪のそし記

蟹虎 夜光

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序章・成長編

第11話 統べるものと捨てるもの

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第11話 統べるものと捨てるもの

 数年前。ヒロイックアジト。
「本当に君はここを抜けるつもりなのかね?」
 長嶋はある男と社長室で会話をする。夕焼けが彼らの会話にアクセントを与えるように二人を照らす。
「なんか……あれから変わりましたよ。貴方もこの組織も。」
「時の流れが悪いんだよ。」
「……それで貴方はこの事件をまとめるつもりで?」
「責任転嫁よりかは世間的に有耶無耶にするのが私的には良いんだよ……だから良い事も悪い事も私は有耶無耶にして終わらせる。」
「そうですか……」
「君もいずれわかるさ……。」
「俺にも?」
「上に立つ人に必要な『責任感』という存在がね。」
「……」
「起業してみたいんだろ……三ツ矢くん。」
 長嶋は三ツ矢にそう言うと、見透かした表情で彼の顔を見つめた。三ツ矢も苦笑いをしながらその視線を浴びた。
「少なからず僕は部下に裏切られる上司にはなりたくないですね……」
「そうか……」

「そうね……。」
 戦いの中で長嶋は過去を思い出した。
「正闘会か……あの頃は。」
 そう言い、長嶋は能力を発動する。
「能力を見せられたら能力を発動するのが筋ってもんだよな!」
 その発言とともにまるで電車の線路そのものを彼は組み立てる。
「私は模型を作るのが好きなんだ……。鉄道模型なんてロマンが溢れるよなぁ。」
 と言いながら模型は完成し、気付けば自分の身体に見に付け始めた。
「私はこの力で世界を変える。変えてみせる。この姿を列車将軍と名付け、私が圧倒的な力を示してやる。」
「列車将軍……?」
「あの男が能力で作り出す最終形態だ。倒せるか?」
「……か?じゃないよ。やるんだよ!」
 巨大な相手だろうとなんだろうと目の前の敵を倒すことに変わりはない!
「グルルルルォォォォォォ……!!!」
「私この人嫌い!」
 などと言って僕の攻撃を弾く。
「君達は私には勝てない……一人だろうと二人だろうとね」
「なら……三人でお相手しましょうか。」
 カリアが現れ、鎌を長嶋に向ける。
「私は結城光の妹でも八幸第三位でもない……カリアそのものです。」
「それがなんだというんだね、道具。」
「……は?」
 鎌の向きを変え、切り裂き始める。その姿はまるで暗殺者のように素早い身のこなしだ。
「貴様を斬ることなど容易いですよ。」
「……育ててもらった恩とか!貴様には!」
「ないですよ。だって私は道具も同然ですから。」
 その発言とともに腕は真っ直ぐに切られた。
「……ほう。貴様の妹なかなかやるね。」
「……フン、八幸第三位さんはさすがだね。」
 僕らは他人のように扱っている。圧倒的強者が自分の尊い何かと思いたくない僕と誇らしげにしたいものの、自分がこれから組織を切られるが故に自分のマウントにならないからと他人ヅラする白夜。
「……だからッ!私はッ!カリアそのもの!肩書きと血筋で私を呼ばないでください!」
「「あっ……はい」」
 僕達は綺麗に怒られた。

 一方その頃、特命依頼屋。
「電車の化け物VS狼男とその仲間たち。うへぇ……何だこのニュース。」
 モリさんはこのニュースを一人観ていた。
「どんなニュースなんだい?」
「……んまぁあれだな。このニュースは俗に言うコミカル的な何かで」
「ふぅん……これうちの新人だ。」
 冷静に三ツ矢はそう言うと小森に鍵を渡す。
「……出かけないかい?小森さん。君の仕事だよ。」
「わかった。」
「なぁ俺も連れてけよ!」
「分かってるカイス、行こうか。」
「俺も!連れてけ!」
「そうだな……クームには君を置いて勝手に戦い始めた彼の説教を頼むよ。」
「なら私は留守番かな。電話担当がいなきゃ困るだろ?」
「助かるよぉ。」
「俺に出番くれよォ。」
「……そうだな。鎌子、君にはこれを。」
「ん?」
 三ツ矢はこの会話の中で鎌子に何かを渡す。
「なんだこれ。」
「おかまタクシーサービスドライブ。」
「ふざけんな!」

「「「オリャア!!!」」」
 列車将軍を大きく吹っ飛ばし、気付けば街中で戦いを始める3人。
「なんなんだ……この三人から溢れる力は。」
「……分からない。でも、今目の前にいる僕達は貴方を倒す為だけにここまで力を出している。」
 ボロボロの列車将軍相手にゆっくりと近づき、無言で殴り始める。
「これは妹の分!」
 ゆっくりと一人一人の感情を込めて殴り始める。
「これはあんたに『教育』された人達の分!」
 長嶋は一人一人ぼかされた顔が浮かぶ。
「これは理不尽に殺されたさゆきさんの分!」
 殴られ続けた長嶋はここで倒れ始める。
「そしてさゆきさんを殺された……モリさんの」
「やめれって!」
 モリさんに止められ、僕は押さえつけられる。
「光くん……己の正義は使い方を間違えてはいけない。」
「三ツ矢さん!でも僕は……」
「確かにこの人は平然と部下を殺すクズ野郎だ。でも、簡単に死を選ばせる事で周りの人やこの人に殺された人が……報われると思うかい?」
「それは……」
「それに一応……僕はこの人に育てられた恩がある。立てますか?長嶋さん。」
「……」
 震えた足で立ち上がろうとする何も喋らない長嶋。そんな彼が立ち上がる途中で三ツ矢さんは顔に回し蹴りをした。
「無礼講はこのくらいにしておくよ。」
「……エグい。」
 僕は思わずそう呟いた。
「さてとモリさん……ココからは君の仕事だね。」
「んですな……」
 そう言うとモリさんは手錠をかける。
「えー……17時48分現行犯逮捕。」
「まさか……モリさんって……」
「表向きは特命依頼屋の可哀想な人。その裏は異能力者専用の警察署所属の警官。」
「……え?」
「秘密にしていたのは君を試していたのもある。」
「……人が悪いですよ。」
「……そうかな。あくまで試用期間というものだよ。」
「試用期間……」
「……人によってはここで審査される。けど君は……合格というところかな。」
「……え?」
「一緒に過ごしてて大きな問題が起きるか起きないか……ざっと調べたくらいさ。けど特に問題はなかった。だからこれからもよろしくね。」
 僕はこれで正式に特命依頼屋のメンバーの一人になった……という形でいいのだろうか?まだ試されている気がして気が気ではない。

「お目覚めですか?元上司。」
 数分後、三ツ矢は一人で目が覚めた長嶋に声をかける。
「君か……三ツ矢くん。」
「覚えてもらって何よりですよ。さてと……うちの部下がお世話になったようですね。」
「……君は相変わらず面倒見がいいね。」
「さぁ……なんのことでしょうか。」
「フン……そう言えばにここはどこだ……」
「僕のコネに警察が今してね……ここは異能力者専用の留置所です。」
「はぁ……君も人が悪い。私のような老いた人間をこんな所に閉じ込めるというのか。」
「やっぱ長嶋さんは勘が鋭いなぁ。相変わらずですね。」
「話をそらすな!」
 その声を聞くとふふっと笑い、三ツ矢はその場を去ろうとする。
「おい待て!私を置いてくな!話は終わってない!」
「正闘会の頃の貴方はもう終わったんだよ。貴方から権力を奪えば貴方はただの老いぼれ……それをわかった上でこれからを考えてください。ごきげんよう。」

 異能力留置所を出た三ツ矢は白虎と対面する。
「マリオネットから解かれた気分はどうだ、ヒーロー。」
「別に……あまり良い気はしません。」
「当時の俺もあんたみたいになってたよ。」
 過去を思い出しながらクスリと笑い歩き始める三ツ矢。
「貴方の部下が鬼畜だと言ってましたけど将来そうなると?」
「俺にだって分からないさ……未来は神のみぞ知る答えだよ」
「長嶋さんみたいな事いいますね」

 to be continued
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