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序章・成長編
第10話 ヒーローとヒール
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第10話 ヒーローとヒール
数分前。ヒロイックアジトにて。
「長嶋さん……お呼びですか。」
「うん、君を呼んだ。」
長嶋は自らの社長室に白夜だけを呼んだ。
「ご要件は……」
「はっきり言おう。カリアにはまた『教育』をする必要がある。この間の失敗作のように彼女を殺したくはない。」
「はぁ……」
失敗作が何か……それは一瞬で理解した。あの事件は起きた時に冷静に理解出来たが後々考えると自分の上司が恐怖でしかない。
「元々幼子のまま彼女は死んでいた存在。そこに一人の霊を入れて『教育』をした……言わば作られた人間ということだ。クローンと同じね。」
「……」
「んでだよ。私的に考えはあるけど……せっかくだし賭け事にしようと思ってね。」
「賭け事……?」
「彼女を生かすか殺すか……君たちの決闘で決めようと。」
「悪趣味ですね……」
「面白いだろう……君が勝ったら彼女は生きる。でも君が負けたら彼女は……。」
「……負けられない。」
「そうね。その意気だよ。もちろんそもそも決闘仕掛けようとしなきゃ…君も一緒に。」
この人は絶対にやると言ったらやる。さゆきのようにはしたくない……あの子のためにも決闘しなくては。彼の心の中で決闘をしかけ絶対に勝たなくてはいけないという気持ちが強くなった。
「私は出来る人間しか必要としない……。もう決めたんだ。」
「……正々堂々戦います。」
白夜はその場を去る。
それから現在。
「くっ……なんて強さなんだ!」
「そっちこそ……なんなら思い強くない!?」
僕はブライトソルジャーの熱気に完全に負けそうである。思いが強すぎる。何かを抱えているような思いだ。
「……グルルルルォォォォォォ!!!!!」
でも僕だって負けない。背負うものは無いけど……こんな奴に負けるつもりは無い。
「これは与えられた試練なのだ……許せ狼怪人。カリアのためなんだ。」
「カリアの……ため?」
「あいつは俺達の戦いで天秤をかけられている。俺が勝てば生きるしお前が勝てば彼女は死ぬ。」
「……なんだよそれ。」
僕は段々と狼の姿から人に戻っていく。
「罠だろ!騙されるつもりは……」
「罠じゃないんだ!!!!!」
僕は唖然とした。罠じゃないなら……一体この決闘はなんだというのだ。
「だったら……こんな決闘間違ってるだろ!」
「何?」
「間違ってんだよ!なんでそんな仕事引き受けた!ヒーローなんだろ!?」
「あぁ……」
「あぁじゃないんだよあぁじゃ!そもそもヒーローだったらこんな賭け事する前にこの話がおかしいことに気付けよ。」
「っ!?」
「人の命を賭け事に使うやつに正義感があるのか?そもそも逆らえない相手だからか?」
「……れ。」
「は?」
「黙れ。貴様に何がわかる!ヒーローだから?逆らえないから?あー!そうだよ!あーもう俺ってなんでいつも!」
ブライトソルジャーはそう言うとゆっくりと戦意を喪失していった。それどころか光身を解除した。
しばらくして、白夜は事情を話してくれた。
「……先程はすまなかった。」
「良いんだよ……それにカリアの事は僕にも関係がある。」
「良い兄妹愛だな……」
「……そりゃどうも。さて、こうなった以上やることは一つしかないね。」
「策でもあるのか?」
「長嶋を二人で倒す。」
「……本気か?」
「本気じゃなきゃ提案できないでしょ。」
「フッ、それもそうだな……」
こうして僕達は同盟を組むことにした。相性だとかそんなのは分からない。でも……僕達はヒーローとヒールだった二人なんだ。そんな僕らが組んだら真の敵はきっと混乱する。
面白い……。やっぱ展開はこうじゃなきゃ。
「……決着、着いたの?」
数時間後、ヒロイックアジトにて。僕たち二人で考えた作戦を決行することにした。
「まぁ……はい。とりあえずカリアは生かしてくれますよね?」
「……証拠は?」
一瞬だけグキっと驚くも冷静な顔で対応する白夜。
「コ、コチラニナリマス……」
ねぇなんでそんな大根役者なの!?とつっこみたいが恐らくそれは出来ない。……白夜は作戦通りに証拠になりそうなのを提案してボコボコにした僕を投げ出す。
「ぐ、ぐはっ……」
これは重症だなんて思わせるのはお手のものである。
(お、おい……大丈夫なんだよな。)
(安心しろ……治療くらいうちの組織で出来る猿がいる。)
(猿だと!?)
僕はそんな小声の彼も無視し、作戦通りの台詞を言う。
「オイ!ココカラダセ!オレニナニヲスルキダ!」
すまん白夜……。どうやら僕も……大根かもしれない。
「ふぅん……そうね。白夜、今後君を使うことは無い。」
「な……何故ですか!私は今まで貴方に貢献してここまで来たのです!それなのに決着をつけたかと思えばどのような理由で」
「……うるさいよ。彼は骨が折れてるけどこの血は紛れもなく赤ペンキだ。再現するために黒でも混ぜたんですか?」
ず、図星だ。この男、頭が冴えまくってる。
「君……特命依頼屋の結城光くんだっけ。私にも妹がいてねぇ、君の気持ちはわかるんだ。父よ母よ妹よってね。」
「……」
「でも私は君とは違う。だから気持ちがわかっても同情はしない。それどころか君を助けたいとすら思わない。いやいやこの組織に入っていやいやあーでもないこーでもない言われてさっさとやめろ馬鹿って思ったらいやいや上に立たされて気付けば周りに私より上はいなくなった……。君はその逆。同情できません。」
「……何が言いたいんですか?」
「そうね……って言いたいことつい忘れちゃったよ。私のばーかばーか。」
「んじゃカリアを殺すとするか……下のやつは私を騙しやがった。カリアを殺せば次は……君だ。」
そう言うと急いでどこかに行こうとする長嶋。
「ちょっと待て!貴様……どこに行く気だ!」
「え?」
「カリアを殺すというなら止めますよ!」
「ぼくかえるよ。」
「「……は?」」
何を考えてるんだこの人は。頭を読み取ろうとしたくてもそれが出来ない。ネジを入れる場所にモーターで回った何かが近くにある状態でマトモに入れることが難しいように彼の頭の中には何者も入ることは出来ない。
「あ、そうだ。そろそろ夏が始まるよね。」
「えぇ……それがどうしたのですか。」
「もし君がまだ働きたくて仕方がないのであれば……夏服、君は罰としてこれからはネクタイだけだから。シャツもズボンも下着も着てはいけないよ。」
「そんな……それってつまり……」
「つ……ま……り……?」
「裸ネクタイって事ですかぁぁぁぁぁ!!!!」
どう考えても貯めて言う必要はないだろ。とそんなツッコミを入れたいがどうやら流れはコイツを倒す優先である。
「……そんな命令、許されていいわけないだろ。」
「じゃあなんだというのだね。」
「これ以上パワハラをするなら俺はあんたを倒してやる!」
「そうか……。んで?」
「僕はあんたを倒してこの組織を壊滅させて……そして妹を助けるんだ!」
「良い度胸だ……ヒーローの頂点を君のような狼野郎が倒せるとは思えないけどね。」
「倒すんだよ……絶対にあんたを喰らう悪役としてな!」
「……いや、それは違うだろ。」
白夜が僕の隣に並ぶ。
「悪役が今、英雄として本当の敵を倒す瞬間……そうだろ?狼野郎……いや、結城光。」
「……あぁ。そうだったな。」
「一緒にこの方……いや、コイツを倒すぞ。」
僕達は今、この一瞬でこれからどうなるかその後どうなるか……人生の天秤が傾き始めている事に気付いた。
「グルルルルォォォォォォ!!!!!」
「光身!」
さぁ、やるぞ。僕の運命の戦いだ。
to be continued
数分前。ヒロイックアジトにて。
「長嶋さん……お呼びですか。」
「うん、君を呼んだ。」
長嶋は自らの社長室に白夜だけを呼んだ。
「ご要件は……」
「はっきり言おう。カリアにはまた『教育』をする必要がある。この間の失敗作のように彼女を殺したくはない。」
「はぁ……」
失敗作が何か……それは一瞬で理解した。あの事件は起きた時に冷静に理解出来たが後々考えると自分の上司が恐怖でしかない。
「元々幼子のまま彼女は死んでいた存在。そこに一人の霊を入れて『教育』をした……言わば作られた人間ということだ。クローンと同じね。」
「……」
「んでだよ。私的に考えはあるけど……せっかくだし賭け事にしようと思ってね。」
「賭け事……?」
「彼女を生かすか殺すか……君たちの決闘で決めようと。」
「悪趣味ですね……」
「面白いだろう……君が勝ったら彼女は生きる。でも君が負けたら彼女は……。」
「……負けられない。」
「そうね。その意気だよ。もちろんそもそも決闘仕掛けようとしなきゃ…君も一緒に。」
この人は絶対にやると言ったらやる。さゆきのようにはしたくない……あの子のためにも決闘しなくては。彼の心の中で決闘をしかけ絶対に勝たなくてはいけないという気持ちが強くなった。
「私は出来る人間しか必要としない……。もう決めたんだ。」
「……正々堂々戦います。」
白夜はその場を去る。
それから現在。
「くっ……なんて強さなんだ!」
「そっちこそ……なんなら思い強くない!?」
僕はブライトソルジャーの熱気に完全に負けそうである。思いが強すぎる。何かを抱えているような思いだ。
「……グルルルルォォォォォォ!!!!!」
でも僕だって負けない。背負うものは無いけど……こんな奴に負けるつもりは無い。
「これは与えられた試練なのだ……許せ狼怪人。カリアのためなんだ。」
「カリアの……ため?」
「あいつは俺達の戦いで天秤をかけられている。俺が勝てば生きるしお前が勝てば彼女は死ぬ。」
「……なんだよそれ。」
僕は段々と狼の姿から人に戻っていく。
「罠だろ!騙されるつもりは……」
「罠じゃないんだ!!!!!」
僕は唖然とした。罠じゃないなら……一体この決闘はなんだというのだ。
「だったら……こんな決闘間違ってるだろ!」
「何?」
「間違ってんだよ!なんでそんな仕事引き受けた!ヒーローなんだろ!?」
「あぁ……」
「あぁじゃないんだよあぁじゃ!そもそもヒーローだったらこんな賭け事する前にこの話がおかしいことに気付けよ。」
「っ!?」
「人の命を賭け事に使うやつに正義感があるのか?そもそも逆らえない相手だからか?」
「……れ。」
「は?」
「黙れ。貴様に何がわかる!ヒーローだから?逆らえないから?あー!そうだよ!あーもう俺ってなんでいつも!」
ブライトソルジャーはそう言うとゆっくりと戦意を喪失していった。それどころか光身を解除した。
しばらくして、白夜は事情を話してくれた。
「……先程はすまなかった。」
「良いんだよ……それにカリアの事は僕にも関係がある。」
「良い兄妹愛だな……」
「……そりゃどうも。さて、こうなった以上やることは一つしかないね。」
「策でもあるのか?」
「長嶋を二人で倒す。」
「……本気か?」
「本気じゃなきゃ提案できないでしょ。」
「フッ、それもそうだな……」
こうして僕達は同盟を組むことにした。相性だとかそんなのは分からない。でも……僕達はヒーローとヒールだった二人なんだ。そんな僕らが組んだら真の敵はきっと混乱する。
面白い……。やっぱ展開はこうじゃなきゃ。
「……決着、着いたの?」
数時間後、ヒロイックアジトにて。僕たち二人で考えた作戦を決行することにした。
「まぁ……はい。とりあえずカリアは生かしてくれますよね?」
「……証拠は?」
一瞬だけグキっと驚くも冷静な顔で対応する白夜。
「コ、コチラニナリマス……」
ねぇなんでそんな大根役者なの!?とつっこみたいが恐らくそれは出来ない。……白夜は作戦通りに証拠になりそうなのを提案してボコボコにした僕を投げ出す。
「ぐ、ぐはっ……」
これは重症だなんて思わせるのはお手のものである。
(お、おい……大丈夫なんだよな。)
(安心しろ……治療くらいうちの組織で出来る猿がいる。)
(猿だと!?)
僕はそんな小声の彼も無視し、作戦通りの台詞を言う。
「オイ!ココカラダセ!オレニナニヲスルキダ!」
すまん白夜……。どうやら僕も……大根かもしれない。
「ふぅん……そうね。白夜、今後君を使うことは無い。」
「な……何故ですか!私は今まで貴方に貢献してここまで来たのです!それなのに決着をつけたかと思えばどのような理由で」
「……うるさいよ。彼は骨が折れてるけどこの血は紛れもなく赤ペンキだ。再現するために黒でも混ぜたんですか?」
ず、図星だ。この男、頭が冴えまくってる。
「君……特命依頼屋の結城光くんだっけ。私にも妹がいてねぇ、君の気持ちはわかるんだ。父よ母よ妹よってね。」
「……」
「でも私は君とは違う。だから気持ちがわかっても同情はしない。それどころか君を助けたいとすら思わない。いやいやこの組織に入っていやいやあーでもないこーでもない言われてさっさとやめろ馬鹿って思ったらいやいや上に立たされて気付けば周りに私より上はいなくなった……。君はその逆。同情できません。」
「……何が言いたいんですか?」
「そうね……って言いたいことつい忘れちゃったよ。私のばーかばーか。」
「んじゃカリアを殺すとするか……下のやつは私を騙しやがった。カリアを殺せば次は……君だ。」
そう言うと急いでどこかに行こうとする長嶋。
「ちょっと待て!貴様……どこに行く気だ!」
「え?」
「カリアを殺すというなら止めますよ!」
「ぼくかえるよ。」
「「……は?」」
何を考えてるんだこの人は。頭を読み取ろうとしたくてもそれが出来ない。ネジを入れる場所にモーターで回った何かが近くにある状態でマトモに入れることが難しいように彼の頭の中には何者も入ることは出来ない。
「あ、そうだ。そろそろ夏が始まるよね。」
「えぇ……それがどうしたのですか。」
「もし君がまだ働きたくて仕方がないのであれば……夏服、君は罰としてこれからはネクタイだけだから。シャツもズボンも下着も着てはいけないよ。」
「そんな……それってつまり……」
「つ……ま……り……?」
「裸ネクタイって事ですかぁぁぁぁぁ!!!!」
どう考えても貯めて言う必要はないだろ。とそんなツッコミを入れたいがどうやら流れはコイツを倒す優先である。
「……そんな命令、許されていいわけないだろ。」
「じゃあなんだというのだね。」
「これ以上パワハラをするなら俺はあんたを倒してやる!」
「そうか……。んで?」
「僕はあんたを倒してこの組織を壊滅させて……そして妹を助けるんだ!」
「良い度胸だ……ヒーローの頂点を君のような狼野郎が倒せるとは思えないけどね。」
「倒すんだよ……絶対にあんたを喰らう悪役としてな!」
「……いや、それは違うだろ。」
白夜が僕の隣に並ぶ。
「悪役が今、英雄として本当の敵を倒す瞬間……そうだろ?狼野郎……いや、結城光。」
「……あぁ。そうだったな。」
「一緒にこの方……いや、コイツを倒すぞ。」
僕達は今、この一瞬でこれからどうなるかその後どうなるか……人生の天秤が傾き始めている事に気付いた。
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