悪のそし記

蟹虎 夜光

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序章・成長編

第9話 ミスと過ち

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第9話 ミスと過ち

 数分後、僕はタクシー会社の社長室にいた。
「ここは……」
「……」
 目の前のおと……おネエ様は僕を見るやニッコリと微笑んでこう言った。
「やっと二人きりになれたね。ひかるちゃん?」
「う、うわ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!」
 僕はもう、どうなるか分からない。
 恐らく言葉だとか物語には出せないような悲劇が起こるのだろう。

 仙秋港にて。現在。
「山川……だっけか。この三人の決着黙って見届けるって頭ねえの?」
「はい!」
「そうか……」
 山川はニヤニヤと笑い、人をイラつかせる。
「ていうかさっきの三下発言、取り消してくれないかなぁ。傷ついちゃうよ。」
「勝手に傷ついてろよ。気持ち悪い。」
 三ツ矢はそう言い放ち、言葉のキャッチボールは肉弾戦に姿を変える。
「おいおいあっち盛り上がってるな。んじゃ俺も……」
「相手を間違えない方がいいぞ、赤座。」
 大宮は赤座に殴りかかる。
「いってぇな。」
「そうか。なら俺からも。」
 今度はカイスが殴りかかる。
「ぐはっ!」
「その弓、なんのためにあるんだよ。」
「……くっ」
 煽られたからか赤座は弓を引き始める。しかし手が震えてるからか弓がまともに引けなくなっていく。撃ってる矢も狙いから大きくはなれる。
「クソが!なんでこうなるんだよ!」
「旧友だから命だけは許してやる……」
 カイスはそう言ってその場を去る。
「総司ちゃんを止めるの最優先だからね。」
 次に大宮はそう言って別の戦場へ向かう。
「あっち終わったらしいぜ……邪魔も出来なくなったよ。」
「構わねえよ……俺がぶち殺したいのはお前自身だから。」
 雷が山川に落ちまくる。
「もう電気来すぎ!」
「……」
 無言で雷を落としまくる姿は鬼畜そのものに見える。
「いい加減にしろよ……俺を殺したらお前もあの上司と同じ殺人犯にな……」
「同じじゃねえよ……」
「は?」
「己の味方は殺さねえし……簡単に部下捨てるほど俺はドライな上司じゃねえよ。十人十色あるんだよ。」
「十人十色ねぇ……今日は負けたよ。」
 ボコボコにされた二人を放置して三人はその場を去る。
「……やっぱ一足遅かったか。総司ちゃんに能力出させないで戦おうって思ってたのに。」
「……何その縛り。たまには戦わせてよ。」
 ニッコリと笑いながら三ツ矢は大宮にツッコミを入れる。

 一方その頃、僕はと言えば。
「ドゥルルルルル!!!!!」
「うわあああああああああああああああああああああ!」
 ドリルかなんかをやけに下半身に当てられていた。あー、これまずい!まずいです!
「あと何発入るかしら。」
「や、やめてください!やめ……やめろ!!!!!」
「照れやがって」
 ドリルはまだまだぶち込められる。あ、もうこれダメなやつだ……。
「だ、誰か助けて……わ、わおぉぉぉぉーーーん!!!」
 この日、僕は何かを失った。それはそれはきっと大切で……失っちゃいけない何かだったのだろう……。
「うふふふふ……これでいいかしら。」

 数分後……。
「あら、目が覚めたわね。なかなかに楽しかったわ。」
「……はは、それは……どーも。」
「あの子ほどじゃないけど……いい男にしてやったわ。」
「あの子って……三ツ矢さんですか?」
「違うわよ、モリちゃん。」
 え、あのモリさんが!?
「……はぁ。」
「何よその反応は。」
 そう言うとタバコを吸い始めるオネエさん。
「モリちゃんはね……能力者じゃないからカイスちゃんは見えない。というより唯一の無能力者で一緒に働けるのってなんでか分かる?」
「……僕にはさっぱりで。」
「うふふ……。彼には常人には持ってない異能じゃない才能があるのよ。」
 異能力者に匹敵する才能ってなんなんだろう。
「異能じゃない才能?」
「あの子と関わってれば嫌という程わかるわ……。」
 悪魔のような顔つきでそう言い、僕は日付が変わる前の夜中に社宅に返された。

 翌日。廃工場にて。
「よう……目が覚めたか。」
 赤座が起きた場所には山川がいた。
「さっさと帰ろよ。」
「は?なんでだよ。」
 山川は起きて早々の相手にキレ気味で対応する。
「……もう用もないだろ。こんな俺相手に。」
「あるからいるんだよ。」
「要件言ってさっさと失せろ。」
「お助けマネー……ちょうだい?」
「は?」
「だから助けてやったんだから……さっさと金寄越せって言ってるんだよ。」
「ボロボロに雷落とされたやつが何言ってんだよ。」
「確かに……負けた。でも、俺が現れてなかったら彼も現れなかったしあんたは死んでたよ。」
「……」
「だから報酬を寄越せ」
「……ちっ。」
 そう言うと赤座は二万円をポンっと渡した。
「しけてるけど貰ってくよ。」
「貰っておいてなんだよそれ……。」
「そんな事よりさ、アンタらってなんで争ってんの?過去の因縁っぽいね。なんかあったんけ?」
「……昔にちょっとな。」
「昔っていつ?てかあんたどうしたらそんな狙われることに……」
「……過去を語るつもりはねえ。」
 そう言うと赤座は千円渡して帰れと促す。
「もう話す話題はねえ。分かったらさっさとその駄賃でお菓子でも買って帰るんだな。」
「……ガキじゃねぇんですけど」
 唾を飛ばして、怒りながら山川はその場を去る。
「……汚ぇ」

 翌日。社宅にて。
「……」
 家を出ようとしたら、そこにはカリアがいた。
「あなたに伝言を渡しにきました。」
「……伝言?」
「ブライトソルジャーが貴方を倒したい……って言っておりました。」
「……そうか。」
「仙秋街にある……あの元住宅街の立ち入り禁止区域……通称、空き家街。」
 空き家街……。今では立ち入り禁止区域とされているその場所を僕は知ってる。そこはかつて結城あかりが亡くなったとされる場所、旧仙秋タワーの周辺である。
「そこに呼んで貴方を倒すと彼は言ってました……」
 ゆっくりと歩き、立ち止まるカリア。
「ですが私は……貴方に勝って欲しいのです。」
「え……?」
『教育』プログラミングされる前の……記憶を思い出したのでしょうか。不思議と知ってるあの人の面影を……何故か感じるのです。」
「……やっぱり君は僕の妹なのか」
「……さぁ、どうでしょう。私はカリア、それ以上でもそれ以下でもない存在だと私は私のことをそう思っています。」
 そう言うとゆっくりとその場を去るカリア。僕はそんな彼女を見て、絶対に彼女を元に治したいと思った。

 数分後、空き家街。
「……来たか。」
 ブライトソルジャーは正体を隠したまま、空き家街に一人佇んでいた。
「来てやったよ……卑劣ヒーローさんよ。」
「そんな呼び方される覚えはない。」
 光を貯めながら、ヒーロースーツを強化させる。
「俺の能力は使えば使うほど……日光や街灯が眩しいと思えてしまう……そんなデメリットがある。」
「外はまともに歩けないな。」
「まぁな……だが、そんな事はどうでもいい。私は一度放棄した試合を放棄したままにしたくない。」
「そこには同感だ。僕は自分の能力のデメリットがよく分かってない……けど察しはついてる。狼だからな。」
「野生の勘が当たるといいな。」
「けどお前と同じでそんな事はどうでもいい……さっさと始めようぜ、白夜。」
「望むところだ小僧……負け犬の遠吠えでもさせてやる!」
「うるせぇよ自己アピールバカ。
 なんかヒーローが負ける展開……見たかったんだよなぁ!」
 ある者は光を纏い、ある者は獣へと姿を変える。正義と悪はこの戦いに存在しない。存在するのは勝ちと負け……僕はそう思っていた。ただ、ヒロイックが仕掛けた本来の目標を知るまでは。

 to be continued
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