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新しい俺は何者なのだろうか

弟の方が異世界人ぽい力な件

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 魔術訓練、苦節三年。本日は六歳になった弟コルアと、八歳を迎えた俺の二人で土団子作成コースに従事している。
 俺の土団子はというと、三年前にはじめて作った魔術製土団子と何一つ変わらない姿を維持していた。

(スピードだけは異常に早くなったんだけどなー)

 半年ほどたった頃から城作りをカリキュラムに加え、一年後からはこけしの生産も始めたというのに全く変化はなし。これらのことから、俺は自分の魔術についてひとつの結論に達していた。

(やっぱり俺って、魔術の才能ないんだなー)

 絵本の勇者は、才能はあったのだ。だから練習で上手くなった。こちらの世界でも平凡は平凡とはなんと世知辛いことか。
 それでも今こうして土団子を作っているのは、ひとえに弟可愛さである。弟も大きくなり家の手伝いをし始めたので、たまにこうして遊べるのが楽しくて仕方ない。

「やっぱり兄さんはすごいです。僕より小さい頃から魔術を使っていたんですよね?」

「う、まぁ。土を集めてただけなんだけどな」

 正直、土団子の秘密が露呈した時はガッカリされると思っていたのだが、予想に反してさらに大きな尊敬を受けることとなった。魔術だと誤魔化していたことより、そもそも魔術を使えることとピカピカに磨きあげた努力の評価が大きかったようす。

「僕も魔術を使えるようになりたいんだけど……そう都合よくいきませんね」

「分からないぞ? もしかしたらまだ試してないだけかもしれないし」

 コルアが魔術を使えないのも、その評価の要因だ。火、水、土、光と一通りの属性を試してみたが、どれも上手くいかなかったのだ。本来、扱える属性の鑑定は学校に行った時にするものらしい。なので今使えないことはなんの問題もないのだが、偶然にも身近な俺が引き当ててしまっていたことで引け目を感じさせてしまっている。

「それに、コルアもすごい。魔術は学校に行けば使えるようになるけど、頭とか性格とかは自分で努力しないとだろ。その点、コルアは頑張ってるし結果も出てる」

 励ます意味もあるが、お世辞ではない。俺が放棄した読書をずっと続けているし、本の内容もきちんと理解している。その中から必要なものを選びとって、実践する力もある。

「ありがとう、兄さん」

 素直に褒めただけでも目を細めて笑い、感謝を述べてくれる。このまま純粋に育って欲しいものだ。

「いやいや。ほら、まだ試してないことあるだろ、やってみようぜ。例えばー、こういうのとか!」

「兄さん、植物に関する魔術はありませんよ?」

 俺は目の前の雑草をさしてみるが、この世界には草的な属性はないらしく、コルアは苦笑いしている。だが、俺からすればワンチャンぐらいはあると思う。

「いーから。物は試し!」

「ん~……」

 俺がひと押しすると、コルアは首を傾げながらも雑草に手をかざす。

「ん?」

「どうした?」

 すると、コルアがさらに首を傾げて不思議そうな声を出す。

「いや、なんか、つぶつぶしてて……」

「つぶつぶ?」

 そう言われて雑草を触ってみるが、至って普通の草。だというのに、触ってもいないはずのコルアは何か感触があったと言うのだ。

「兄さんは魔術を使う時、なにか感じませんか?」

「……いや? イメージで動くだけ」

 問いに簡潔に答えると、少し悩んだ様子を見せた。その後、こちらへ向き直ってくる。

「人によって感じ方は違うのかも……ちょっと兄さん、見てて貰えますか?」

「おう、いいよ」

 頼まれた通りにじいっと見つめていると、コルアは少し手を上に動かす。すると、雑草は綺麗に根っこまで抜けた。

「おっ! もしかして」

「はい! 使えたみたいです!」

 俺が期待して隣を見ると、満面の笑みで応えてくる。はじめて土団子を渡した時よりもずっと嬉しそうだ。出来なかったことが出来るようになるのは、喜びと達成感が一気に湧いてくる感じがして努力と疲れも報われるというものだ。

「良かったな、コルア!」

「はい、嬉しいです! ありがとうございます兄さん!」

「いや、思いつきを言っただけだから。それよりも、これは何魔術なんだ?」

 俺が気になったことを質問すると、すぐさま答えが返ってくる。

「魔術の段階でこういう効果がある属性を僕は知りません。だから、ちゃんとした名前は分かりませんね……」

「なら、ひとまず草魔術だな!」

 分からない、とのことなので俺の記憶から引っ張り出した言葉をつける。我ながら安直ではあるが、分かりやすくいい名前だと思う。

「草、魔術……いいですね。学校に行ったら何か情報があるかもしれませんけど、僕はこれ、気に入りました」

 弟も無事に馴染んでくれた様子だ。ここに、コルアの魔術『草魔術(仮)』は発現したのだ。
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