2 / 26
2.ルナ
しおりを挟む
『なんでシウニキス一家が現れたんだ! 奴らの航路は避けたはずなのに!』
定期船の船長が悲鳴を上げた。そうだ。彼は情報を集め、最も避けるべき空賊であるシウニキス一家が通るはずのない航路を進んでいたのだ。だから、この状況になっているのは恐らく自分のせい……。桃色の髪をした女性—ルナ―は思わず目を瞑った。このままでは関係のない人まで巻き込んでしまう。そうなる前に……私は……。
「船ちょ……」
「何か突っ込んで来るぞ!」
船長に声をかけようとした瞬間、他の乗組員が叫ぶ。その一瞬あと、空賊船とは反対の空から二つの物体が船の看板に衝突した。……いや、衝撃は無い。よく見ると物体は二人の人間であり、看板に衝撃を与えずに着地をしていた。
「相変わらず、お前の魔法はスゲエな」
二人のうち一人の黒髪の青年が、もう一人の水色の髪をした娘に話かけた。娘は聞いているのか聞いていないのかわからない態度で青年に何かを促す。
「ちっ、わかったよ。……船長はどこだ?」
青年が周囲に問うが誰も答えない。当たり前だ。空を飛ぶ『魔法』なんて出てくるのはおとぎ話だけだ。だが青年はそれを意に介さず続けた。
「俺たちは『渡り鳥』だ。俺たちがあの空賊を追っ払ってやる。雇う気は無いか?」
この船の全員にとって渡りに船の提案だ。ありがたいことこの上ない。この上ないが……あんな得体のしれない連中など、もしかしたらシウニキス一家より危険かもしれない。それを思うと誰も声をあげることは出来ない。
船長に至っては二人に自分の姿を見られまいと、総舵輪の影に頭を抱えて隠れている。だが、ルナは叫ばざるを得なかった。
「私が雇います! 海賊を退けることと、その後の私の旅の護衛を!」
ルナには理由があった。彼らにすがる理由が、彼らが海賊を倒せると思う理由が。……だが、そんなルナの言葉に青年が舌打ちをして返す。
「護衛だと? そんな面倒な仕事は御免だ。奴らを追い払う。俺たちがやることはそれだけだ。それに見合う報酬を用意しておいてくれ。」
定期船の船長が悲鳴を上げた。そうだ。彼は情報を集め、最も避けるべき空賊であるシウニキス一家が通るはずのない航路を進んでいたのだ。だから、この状況になっているのは恐らく自分のせい……。桃色の髪をした女性—ルナ―は思わず目を瞑った。このままでは関係のない人まで巻き込んでしまう。そうなる前に……私は……。
「船ちょ……」
「何か突っ込んで来るぞ!」
船長に声をかけようとした瞬間、他の乗組員が叫ぶ。その一瞬あと、空賊船とは反対の空から二つの物体が船の看板に衝突した。……いや、衝撃は無い。よく見ると物体は二人の人間であり、看板に衝撃を与えずに着地をしていた。
「相変わらず、お前の魔法はスゲエな」
二人のうち一人の黒髪の青年が、もう一人の水色の髪をした娘に話かけた。娘は聞いているのか聞いていないのかわからない態度で青年に何かを促す。
「ちっ、わかったよ。……船長はどこだ?」
青年が周囲に問うが誰も答えない。当たり前だ。空を飛ぶ『魔法』なんて出てくるのはおとぎ話だけだ。だが青年はそれを意に介さず続けた。
「俺たちは『渡り鳥』だ。俺たちがあの空賊を追っ払ってやる。雇う気は無いか?」
この船の全員にとって渡りに船の提案だ。ありがたいことこの上ない。この上ないが……あんな得体のしれない連中など、もしかしたらシウニキス一家より危険かもしれない。それを思うと誰も声をあげることは出来ない。
船長に至っては二人に自分の姿を見られまいと、総舵輪の影に頭を抱えて隠れている。だが、ルナは叫ばざるを得なかった。
「私が雇います! 海賊を退けることと、その後の私の旅の護衛を!」
ルナには理由があった。彼らにすがる理由が、彼らが海賊を倒せると思う理由が。……だが、そんなルナの言葉に青年が舌打ちをして返す。
「護衛だと? そんな面倒な仕事は御免だ。奴らを追い払う。俺たちがやることはそれだけだ。それに見合う報酬を用意しておいてくれ。」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる