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1.始まり
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「雲は穏やか、前方に船影無し……っと。」
雲上船の看板で黒髪の青年【グレイ=グロリアス】は呟いた。この世界の島々は空に浮かんでいる。その島々を繋げるのが雲であり、その雲を人が渡るための器が雲上船なのだ。グレイは雲上船を使い雲の上の面倒ごとを解決するなんでも屋『渡り鳥』として生計を立てている。
「さ、もうひと眠りでもすっか。」
バン!
そういって目を閉じた瞬間、脳天に衝撃が走った。
「痛ってえな! 何すんだよ、シエル!」
グレイが見上げた先に涼しい顔をした水色の髪と目をした娘【シエル=ライズ】が立っていた。
「さぼりすぎ。見張り変わって」
抑揚のない声でグレイに双眼鏡を押しつける。グレイとシエルは同じ村出身の幼馴染で、二人で『渡り鳥』家業をしている。そして、二人はこの雲上船で共同生活をしているお互いに唯一無二のパートナーだ。だからと言って『そういう関係』では無い。また、一緒に村を出た訳でもない。二人は複雑な事情で今こうして一緒にいる。
「本当になんでお前は俺と一緒にいるんだ?」
グレイは思わず呟いたが、シエルはそれを意に介さずに船の後ろの方角をじっと見ている。
「本当に訳がわからねえ」
ま、今に始まったことじゃねえしな。とため息をつきながら、グレイは双眼鏡をのぞき込んだ。見えるのは二隻の船。その一隻のメインマストには大きなドクロマークが描かれている。
『ジョリーロジャー』。この世界でも恐怖の象徴としてとして活躍している空賊達のトレードマークだ。
「アイツ! 自分だってさぼってんじゃねえか‼」
もう一隻は商船の様でその『空賊船』に追われているようだ。だが正直、面倒ごとに関わりたくはない。
「シエル! 急旋回だ‼ この雲域から逃げるぞ‼」
マイペースなシエルは事態を把握し、面倒ごと避けるために働いてくれる……と言うことはないということにグレイは一瞬遅れて思い出す。
「あの船、追われてる。」
「ちっ……。ああ、そうだよ。だから俺たちも逃げるんだ。そうしないと面倒な空賊に追われることになるんだぞ?」
シエルは真っ直ぐにグレイを見据えて呟いた。
「見捨てるの? 『また』?」
ドクンッ
グレイの心臓が大きく鼓動した。そうだ。コイツはいつもこうして、俺を責める。
「本気か?」
「私がグレイに聞いているの」
「あのマーク……相手は厄介な空賊だぞ?」
「私とグレイなら倒せるんじゃない?」
「あの『旗』を見ろ! バックに誰がいると思ってるんだ‼」
「じゃあ、やっぱり見捨てるの?」
シエルのこの言葉にはどうしても逆らえない。グレイは覚悟を決めるしかなかった。
「わかったよ。……行くぞ、シエル」
いつも無表情のシエルの口の端はこういうときだけ、いつも少しだけ上がる。
雲上船の看板で黒髪の青年【グレイ=グロリアス】は呟いた。この世界の島々は空に浮かんでいる。その島々を繋げるのが雲であり、その雲を人が渡るための器が雲上船なのだ。グレイは雲上船を使い雲の上の面倒ごとを解決するなんでも屋『渡り鳥』として生計を立てている。
「さ、もうひと眠りでもすっか。」
バン!
そういって目を閉じた瞬間、脳天に衝撃が走った。
「痛ってえな! 何すんだよ、シエル!」
グレイが見上げた先に涼しい顔をした水色の髪と目をした娘【シエル=ライズ】が立っていた。
「さぼりすぎ。見張り変わって」
抑揚のない声でグレイに双眼鏡を押しつける。グレイとシエルは同じ村出身の幼馴染で、二人で『渡り鳥』家業をしている。そして、二人はこの雲上船で共同生活をしているお互いに唯一無二のパートナーだ。だからと言って『そういう関係』では無い。また、一緒に村を出た訳でもない。二人は複雑な事情で今こうして一緒にいる。
「本当になんでお前は俺と一緒にいるんだ?」
グレイは思わず呟いたが、シエルはそれを意に介さずに船の後ろの方角をじっと見ている。
「本当に訳がわからねえ」
ま、今に始まったことじゃねえしな。とため息をつきながら、グレイは双眼鏡をのぞき込んだ。見えるのは二隻の船。その一隻のメインマストには大きなドクロマークが描かれている。
『ジョリーロジャー』。この世界でも恐怖の象徴としてとして活躍している空賊達のトレードマークだ。
「アイツ! 自分だってさぼってんじゃねえか‼」
もう一隻は商船の様でその『空賊船』に追われているようだ。だが正直、面倒ごとに関わりたくはない。
「シエル! 急旋回だ‼ この雲域から逃げるぞ‼」
マイペースなシエルは事態を把握し、面倒ごと避けるために働いてくれる……と言うことはないということにグレイは一瞬遅れて思い出す。
「あの船、追われてる。」
「ちっ……。ああ、そうだよ。だから俺たちも逃げるんだ。そうしないと面倒な空賊に追われることになるんだぞ?」
シエルは真っ直ぐにグレイを見据えて呟いた。
「見捨てるの? 『また』?」
ドクンッ
グレイの心臓が大きく鼓動した。そうだ。コイツはいつもこうして、俺を責める。
「本気か?」
「私がグレイに聞いているの」
「あのマーク……相手は厄介な空賊だぞ?」
「私とグレイなら倒せるんじゃない?」
「あの『旗』を見ろ! バックに誰がいると思ってるんだ‼」
「じゃあ、やっぱり見捨てるの?」
シエルのこの言葉にはどうしても逆らえない。グレイは覚悟を決めるしかなかった。
「わかったよ。……行くぞ、シエル」
いつも無表情のシエルの口の端はこういうときだけ、いつも少しだけ上がる。
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