サイアミーズに破滅の寵愛を。

久遠れお

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5話

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「おいメルヴィン、自分が何を言ったのか分かっているのか王家の恥さらしめ」

ステージ裏に戻ってきたエルヴィンを他の兄弟が蔑む。一連の出来事を見ていたのだろう。

父親が何処からか連れてきた女を側室にして、産まれた第二子。
王妃には既に第一子が産まれていて王位継承権1位は彼にあり、彼の周りには大人たちが集まりもてはやされていた。
彼らから一線を引かれ、実の母も第一子である兄ばかりを可愛がるばかりで第二子であるメルヴィンには見向きもしなかった。
メルヴィンはいつしか王室の皆からいない者とされ、そんな環境で育った兄弟はメルヴィンを兄弟だとは見なさず、軽視していた。


故にメルヴィンの性格がねじ曲がっていき、今に至る。



「何って俺は俺の思う最善の方法を取ったまでだよ?」


「最善の方法だって?自ら男娼に行くことが最善?能無しのお前が考えそうなことだな」


出来損ないだからなと、鼻で笑う家族を横目にメルヴィンは平然としていた。


「能無しはどっちだろうねぇ?少なくとも男娼に行く俺は三食飯付きで体を傷つけられることはないだろうね、商品だから。でもあなた方はどうでしょうねぇ?」

その言葉に関心なさげだった他のモノもメルヴィンの方を向く。

「な、何を…」

笑みを浮かべ理解不能なことを言い出すメルヴィンに恐れをなしたのか先程までの勢いはなくおずおず聞く兄弟。
他のモノも興味津々に耳を傾ける。



「誰かの所有物になってしまったら、何をされるか分かったもんじゃない。人間以下の扱いをされ、飯も満足に食べられないかもしれないし、最悪五体満足でいられかどうか…」


それを聞いた家族の顔から笑顔が消え、全員真っ青になった。
今まではそんな扱いをされているモノを見てもなんとも思っていなかったが、今日からは違う。
見てきたあまりに非道な扱いを自分たちが受けるのだ。

それを想像するだけで背筋が凍った。


己の現状をやっと把握した元王族たちはこの世の終わりのような顔をしていた。
そこへ商品を受け取りに来た貴族たちがやってきて、己がセリ落としたモノを持って出ていく。


「バイバイ」

(哀れな人たち…せいぜい足掻くがいいさ)


家族が連れていかれるのをメルヴィンはただ笑顔で見送るだけ。

(あいつらのあんな顔が見れて、今日は最高の一日だ)


家族のこれからを思い描き、凶悪な笑みを浮かべる。
今の彼の顔は麗人とは思えぬほど歪んでいて、悪魔のようだった。








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