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1章 渡る異世界は魔物ばかり
第九話
しおりを挟む「……あの…太郎さん?この魔石は何処で?」
なんだこの受付嬢。いきなり"さん"付けかよ…フ…フレンドリーで良いじゃねーか…
無事冒険者ギルドに戻った太郎は、集めた魔石を買い取って貰おうと、窓口で魔石を受付嬢に渡したのだが……
「青銅ダンジョンだが……」
「ちょ…ちょっと待ってくださいね。詳しく鑑定しますのでお時間を貰います。ああ…それと冒険者タグも一緒にお願いします」
太郎は肯き、タグを受付嬢に渡すとカウンターの後ろにある扉を開いて中に入っていってしまった。
太郎は溜息を吐き、ギルドに設置されてる椅子に座り辺りを見渡す。
(余り人がいないな…)
太郎と一緒に戻ったハンナは、死亡した二人の冒険者タグを受付嬢に渡し、その時の状況を説明する為に受付嬢と共に別室に入って行っていた。
(うーん…暇だな……ああそうだ、能力に変わりがあるのか確認するか…)
自称女神のアスメリアが言うには、太郎の"ステータス"画面は他人に見えないらしいので、ギルドの椅子に座ったまま、太郎は"能力表示"と呟いて画面を表示させる。
氏名 朝倉 太郎
年齢 42 new(不老)
種族 ヒト
職業 極道/冒険者
体力 893+364
筋力 893+564
知能 56+8
敏捷 110+39
特技 威嚇/地球の知識
技能 ケンカキック Level 7
チョウパン Level 5
馬乗り Level 4
ぶっ刺し Level 5
膝蹴り Level 6
剣術 Level 3(new)
次元マーケット(new)
加護 親父の加護
兄貴の加護
夜の女神の加護
……色々と…
(なんだ不老ってのは?言葉の意味通りなら俺これ以上年取らないのか?……この次元マーケットってのは何だ?…)
太郎は画面を見つめながら首を捻る。
そう言えばスマートフォンだと画面に触れたら…太郎は次元マーケットの文字をタップする。
すると、新たな画面が現れたのだ。
画面の中央には"あなたは18歳以上ですか?""はい/いいえ"の文字が。
どこのエロサイトだ!
とりあえず"はい"を押すと画面が切り替わる。
……若い衆がスマートフォンで買い物する時の画面に似ていた。
画面の左上に"マーケットの説明"と表示があるので、それを指でタップした。
説明文によれば、このサイトは異なる世界の商品をこちらの世界の貨幣や現物(自動査定)と引き換えに買える…と言う事らしい………
(………おいおいおい…女神さん。この世界に現代の物を持ち込んで良いのかい…)と思ったのだが、今更だった。
何故なら太郎の着けていたスーツや靴は元の世界の物だし、残り少ない煙草だってきっと…………煙草!
太郎はゴクリと喉を鳴らし素早くカテゴリーから煙草を選ぶ。
商品購入を押すと残高が不足していますと表示されたので、残高チャージボタンを押すと画面に"変換商品を画面に投入して下さい"と出やがった。
太郎は革袋から銀貨を一枚取り出し画面に押し付けると、銀貨が画面に吸い込まれ、残高が10000円と表示される。
(円表示なのか…)
続いて、"商品購入を続けますか"と出たので"はい"を押すと、目の前に突然愛煙している煙草が現れ、太郎の膝の上にポトリと落ちたのだった。
(………おいおいおい。何してくれてんだよ!何だこれは…)
太郎はハッとしてカテゴリーからサバイバルを選ぶ。
キャンプ用品から始まり、ナイフ、ナタ。斧やチェーンソウ…
更に画面を捲るとそこには……
現代武器、個人兵器迄表示されたのだ。
(あの女神~!俺にどうしろと…)
太郎は深い溜め息を吐いて画面を閉じた。
(まぁ……有るものは活用しても罰は当たらんか…今の所日本刀も拳銃も高くて買えないがな…)
太郎は新しい煙草を鞄に詰め込み、残り二本になった煙草とライターを取り出す
(屋内で煙草吸って良いのかな…そもそもこの世界に煙草は存在するんだろうか?)
煙草を吸うのを諦め、煙草を鞄に戻す。受付嬢が現れるまで太郎はギルドの椅子で待つことになったのだ。
暫くして先程の受付嬢が扉から現れたのだが、その受付嬢の後に記憶にある女が立っていた。
(あー……確かジオライトがギルドマスターって呼んでたな…)
「太郎様。申し訳有りませんが、そちらの部屋に起こし下さい」
受付嬢の示した先には扉がある。確か先程ハンナが入って行った部屋の筈だが…それにしてもこの受付嬢、上司の前だからって"太郎さん"を"太郎様"に変えやがった。
太郎は肯いて受付嬢が開いた扉を潜り、部屋に入って行く。
部屋の中には長いテーブルと、数脚の椅子が並べてある。
椅子に座っていたハンナが、困った顔をして太郎を見ていたのだった。
「つまり、あの蜘蛛はDランクダンジョンのボス相当の強さだと?」
太郎の質問にギルドマスターが肯く。
「青銅ダンジョンの最下層のボスはオークジェネラルなんだが、魔物のランクで分けると下位Cランク。お前たち…と言うより太郎の冒険者タグの履歴から下位Cランクの魔物討伐記録が複数確認された」
「…………成る程。ハンナ達は知らんが、俺はまだ一層の魔物しか倒して無いからな…」
「蜘蛛型の下位Cランク相当の魔物となると、その魔物はプレディースパイダーだろうな」
ギルドマスターが椅子の背もたれに背を預けフーと溜め息を吐く。
「ギルドとしては青銅ダンジョンの入場に冒険者ランクの制限をかけようか迷っている……」
「そうなると俺達のような低いランクの冒険者は、生活が困難になるな」
「そうだな。だからパーティーでの入場を推奨と言う方向にしようかと思っている」
成る程……ね。
そんな太郎を見てギルドマスターがニヤリと唇の端を上げる。
「そう言えばハンナから聞いたのだが、君はハンナをナンパしたようだね」
「は?」
この女は何を言いやがる…
「な!何を……違います違います。太郎さんからパーティーに誘われただけです……」
「男側から女をパーティーに誘うのは十中八九ナンパだろ?」とギルマスがニヤニヤ笑う。
「いや……大体年齢差有り過ぎだし、青少年健全育成条例で、しょっ引かれるだろが…」
東京都は特に厳しいのだ。
「うん?何だその条例は。まぁハンナから聞いた話では、結局太郎とハンナはパーティーを組むことになったと聞いたのだが」
そう、俺達はパーティーを組むことにした。
ハンナの水魔法は中々便利そうだからだ。
「ダンジョン制限を銅等級のパーティーからにしようかと考えててな、今回の魔石の持ち込みで太郎の実力は最低鉄等級は有るだろうと私は判断している…あくまで最低の予測だがな…」
「…………」
「だが、石地等級の者をいきなり上げるのは無理だ。よってダンジョンに入れる銅等級に二人を上げる」
「それは助かるな」
ギルマスは椅子から立ち上がり扉の取手に手を掛け振り向く。
「今回は魔石買い取り額の他に情報提供料も加えてあるから期待しろ」
そう言い残し部屋から出て行った。
ハンナの相手をしていギルド職員から、今回の魔石買い取りの詳しい内訳が書かれた用紙を、見せて貰いながら説明を受ける。
蜘蛛以外の魔石は一律銅貨5枚。
蜘蛛の魔石は一つ銀貨5枚。
情報料として金貨5枚。
銅貨5枚✕12個= 6000円
銀貨5枚✕ 6個=300000円
情報料 =500000円
計 806000円
なんと八十万を超える報酬になったのだ。
ジオライトが"金はある!"と言ってたのも今なら分かる気がする。
情報料を引いても三十万は稼げる。
高い等級の冒険者はどれ程稼いでいるのやら…
太郎は金を稼ぐ行為に今迄余り熱心では無かった。
だが、どうだ。この金は太郎が命を張った代償だ。
太郎はニヤリと笑う。
(へっぽこな女神さんよ。今ならあんたに感謝の台詞を言えるぜ…ありがとうよ)
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