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第一章 リオン幼年期

20.「リオンとターニア②」

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リオンとターニアは暗闇の森の中をひたすら走り続けた。 

数分間走り続けた後、ターニアは走る速度を遅めて、歩き出しながらこう言った。
「ここまで来たら大丈夫とは思うんだけど、問題は本体がどこで姿を現したか……」 

「本体って、さっき飛び出して来た奴の本体って事ですか?」 

「そうね、本体はさっきのと比べ物にならないわ。
とにかく早くフランソワ達と合流した方がよさそうね。
間違って本体と出くわしたら、私一人じゃとても太刀打ち出来ないわ」 

そう話しながら歩いていると、リオンは何か違和感のような感覚が自分の体に伝わって来るのを感じた。
(なんだろう?この感覚?
ちょっと前に感じたことがあるような、何か胸騒ぎのような……) 

ターニアも異変に気づき、歩くのをやめてこう言った。
「まずいわね……
リオンくんも感じてると思うけど、異様な法力を感じるわ。
でも変ね……何か迫って来てると言うよりも、どんどん増殖して行ってるような。
あと、敵とは思えない、何か今まで感じた事の無いような法力色を感じるんだけど……
あれ?リオンくんその胸元!」 

そう言われてリオンは、自分の胸元を見た。
そして、胸元の六芒星の欠片が強く輝き出している事に気づいた。
(これは!思い出した。
あの時、森の魔方陣に触れて転送された場所で、妙な『声』を聞いた時に光り出したのと一緒だ!
何か、使命があるとか言ってたように思うんだけど……)
そう思い出したのと同時に、リオンは急に息の詰まる苦しさを感じた。

「うっ!はぁはぁはぁ。
なんだ、こ、これは……
い、息が……」 

リオンは息苦しさと同時に、視界が徐々に真っ白に雲っていく事に気づいた。
視界は徐々に狭まり、それと同時に意識さえも遠退いて行くように思われた。
すべてが真っ白になってゆく中で、リオンはどうにか意識を保ちながら、ターニアの姿を探した。
(だめだ、もう意識が……せめてターニアに……)
リオンはどうにか助けを求めようと、必死にターニアを探した。
そして、どうにかターニアらしき人影をみつけ、手を伸ばした。 

「!!」 

「なぜだ?なぜそんな目線で僕を見るんだ?
身構えて……まるで化け物に出会ったかのような……えっ?」 

ふいに息苦しさもなくなり、白く曇った視界が晴れたのに気づいたリオンは、改めて自分の周りの異様な光景に気づいた。 

それは森であったはずの場所が、一瞬にして焼け野原に変わっている光景だった。草木は燃え、地面の土でさえも焼け焦げているように見えた。 

そして、リオンに対して険しい表情で身構えたターニアも、体の至る所に戦闘後の傷や、火傷の後があるようだった。 

ターニアの目線はリオンに対して鋭く向けられ、まるで攻撃の隙を伺ってるかのように思えた。
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