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第一章 リオン幼年期
12.「回廊」
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螺旋階段を登りきったリオンは、回廊へと足を踏み入れていた。
回廊には窓が一切なく、壁には数十メートルに一本ずつ細いロウソクが取り付けてあるだけだった。
今にも消えてしまいそうなロウソクの灯りは、辺りを微かに照らすのみで、回廊の奥までは見渡す事が出来なかった。
暗闇に沈んだ回廊の先は、無限に続いて行くかのような雰囲気を漂わせていた。
リオンはロウソクの灯りに少し安堵したものの、この回廊を進むべきか、ましてや前に進むべきか、後ろに進むべきか迷っていた。
「灯りがあるのはありがたいけど、この廊下はいったいどこまで続いてるんだ?」
恐る恐るリオンは前に進み出した。
回廊を歩きながら、リオンは不思議な事に気づいた。
それは暗闇に見えた回廊の先は、リオンが進むに連れて、まるでロウソクが自然と灯されるように、明るくなるのであった。
リオンはその奇妙な現象に恐怖を感じつつ、この場所から少しでも早く抜け出すために、勇気を振り絞って進んで行った。
そしてリオンは、この長い回廊を歩きながら、ミルザとサラの事を思い出さずにはいれなくなっていた。
「ミルザとサラは今頃心配してるかな…こんな時にミルザが横にいてくれれば…」
そう思うとリオンは、一層寂しい気持ちになり、自然と目に涙が溜まってゆくのをおぼえた。
…………
その後、少し立ち止まってしまったが、すぐにリオンは涙を腕で拭って、さっきよりも足早に歩き出した。
その仕草は自分が流した涙を否定するようでもあり、新たな決心を決めたようでもあった。
再び歩き出し、しばらく進むと回廊の先に壁が見えて来るのがわかった。
近づくとそこは、左右二手に別れている岐路になっていた。
この果しなく続く回廊に、体力と精神を奪われていたリオンは、フラフラと何も考えずに右の回廊へと進み出した。
右へ曲がったその時!
……!?……
『……そ……は……い』
「??」
リオンは耳元に何か『声』のような音のようなものが聞こえて来た。
『そっ……では……い』
「!!」
2回目に聞こえた時は、さっきよりもはっきりとした『声』に感じた。
そしてその『声』は、耳に聞こえて来ると言うよりも、脳裏に直接話かけられたような感触だった。
リオンはその場に立ち止まり、再び『声』が聞こえて来るのを待った。
『そっちではない。
なぜお前が、こ……に来たのかはわか……ないが……
今はまだ……すぎる。
戻れ!』
「!?」
リオンはハッキリと『声』に語りかけられたのを感じると同時に、すぐさま辺りを見渡した。
しかし、どこを見渡してもリオン以外の人気はなく、回廊は以前と変わりなく静かに薄暗い雰囲気を漂わせていた。
「…………!?」
「なんだこれは!?」
リオンは、辺りを見渡した時に回廊が変化している事に気づいた!
2つに別れていたはずの岐路が、再び一本の回廊に変化していたのだった。
そして目を凝らしてみると回廊の先には1つの扉のような物が現れている事に気づいた。
『中に入っ……来い。その場では……の力は届か……い』
『声』は何かに妨害されているかのように途切れてはいたが、リオンはその『声』が、扉の中に入って来るよう語りかけてきた事は理解した。
少し進み、改めて扉を見ると、その様相にリオンは圧倒された。
扉は狭い回廊には不自然な程の大きさで、まるで巨大な生き物のような存在感だった。
そして、その扉の表面は至る所に不気味な装飾が施されており、辺りのロウソクの微かな光を吸い込むかのように漆黒に彩飾されていた。
扉はリオンの力では、どうあがいても開きそうにない程、重く閉ざされていた。
リオンが扉に触れようかまいかと考えていると、突然扉が音を立てて動き出した。
その動き出す様は、まるで意思を持った扉が、客人を自ら招き入れるかのようだった。
そしてリオンは、その扉に吸い込まれるかのように中へと入って行った。
回廊には窓が一切なく、壁には数十メートルに一本ずつ細いロウソクが取り付けてあるだけだった。
今にも消えてしまいそうなロウソクの灯りは、辺りを微かに照らすのみで、回廊の奥までは見渡す事が出来なかった。
暗闇に沈んだ回廊の先は、無限に続いて行くかのような雰囲気を漂わせていた。
リオンはロウソクの灯りに少し安堵したものの、この回廊を進むべきか、ましてや前に進むべきか、後ろに進むべきか迷っていた。
「灯りがあるのはありがたいけど、この廊下はいったいどこまで続いてるんだ?」
恐る恐るリオンは前に進み出した。
回廊を歩きながら、リオンは不思議な事に気づいた。
それは暗闇に見えた回廊の先は、リオンが進むに連れて、まるでロウソクが自然と灯されるように、明るくなるのであった。
リオンはその奇妙な現象に恐怖を感じつつ、この場所から少しでも早く抜け出すために、勇気を振り絞って進んで行った。
そしてリオンは、この長い回廊を歩きながら、ミルザとサラの事を思い出さずにはいれなくなっていた。
「ミルザとサラは今頃心配してるかな…こんな時にミルザが横にいてくれれば…」
そう思うとリオンは、一層寂しい気持ちになり、自然と目に涙が溜まってゆくのをおぼえた。
…………
その後、少し立ち止まってしまったが、すぐにリオンは涙を腕で拭って、さっきよりも足早に歩き出した。
その仕草は自分が流した涙を否定するようでもあり、新たな決心を決めたようでもあった。
再び歩き出し、しばらく進むと回廊の先に壁が見えて来るのがわかった。
近づくとそこは、左右二手に別れている岐路になっていた。
この果しなく続く回廊に、体力と精神を奪われていたリオンは、フラフラと何も考えずに右の回廊へと進み出した。
右へ曲がったその時!
……!?……
『……そ……は……い』
「??」
リオンは耳元に何か『声』のような音のようなものが聞こえて来た。
『そっ……では……い』
「!!」
2回目に聞こえた時は、さっきよりもはっきりとした『声』に感じた。
そしてその『声』は、耳に聞こえて来ると言うよりも、脳裏に直接話かけられたような感触だった。
リオンはその場に立ち止まり、再び『声』が聞こえて来るのを待った。
『そっちではない。
なぜお前が、こ……に来たのかはわか……ないが……
今はまだ……すぎる。
戻れ!』
「!?」
リオンはハッキリと『声』に語りかけられたのを感じると同時に、すぐさま辺りを見渡した。
しかし、どこを見渡してもリオン以外の人気はなく、回廊は以前と変わりなく静かに薄暗い雰囲気を漂わせていた。
「…………!?」
「なんだこれは!?」
リオンは、辺りを見渡した時に回廊が変化している事に気づいた!
2つに別れていたはずの岐路が、再び一本の回廊に変化していたのだった。
そして目を凝らしてみると回廊の先には1つの扉のような物が現れている事に気づいた。
『中に入っ……来い。その場では……の力は届か……い』
『声』は何かに妨害されているかのように途切れてはいたが、リオンはその『声』が、扉の中に入って来るよう語りかけてきた事は理解した。
少し進み、改めて扉を見ると、その様相にリオンは圧倒された。
扉は狭い回廊には不自然な程の大きさで、まるで巨大な生き物のような存在感だった。
そして、その扉の表面は至る所に不気味な装飾が施されており、辺りのロウソクの微かな光を吸い込むかのように漆黒に彩飾されていた。
扉はリオンの力では、どうあがいても開きそうにない程、重く閉ざされていた。
リオンが扉に触れようかまいかと考えていると、突然扉が音を立てて動き出した。
その動き出す様は、まるで意思を持った扉が、客人を自ら招き入れるかのようだった。
そしてリオンは、その扉に吸い込まれるかのように中へと入って行った。
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