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第2章
38話「黒髪の女性3」
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ウタとリリスにグイグイと引っ張られながらシロは昨日ウタと出会った広場にたどり着いた。
「この先にギルドがあるのよ」
ウタが進む方角を指し示す。
「ねぇ、ウタさん……」
突然の事でパニックになっていたシロであったが、徐々に冷静さを取り戻していた。
「何?ダーリン?私のことはウタって呼んでよ」
にこやかな笑みを浮かべながらシロの顔を覗き込む。
「じゃあ、ウタ……ギルドに着く前にちょっと話したいんだけどいいかな?」
「いいわよ!じゃあ、あそこに座りましょうか」
ウタは噴水の下にあるベンチを指差す。
「そうだね。じゃあ、リリスちょっといいかな?」
「え?」
「2人で話したいから……ね?」
「……分かりました……」
リリスは納得できない表情をしていたのだが、渋々シロの腕を離しシロ達の背中を見送った。
「ねぇ、リリス」
「姉さん……ルウムさんの言ってたこと現実になっちゃったね」
「ええ……」
シロは貴重な存在だ。
いずれ必ずシロのパートナーになりたいと言う人物が現れる事を予見していたのだ。
そして、その時にシロを繋ぎ止めるだけの絆を作れと言われていた。
金髪の双子は少し離れたところでベンチに腰掛ける2人を並んで見つめる。
「エヴィエス」
「ん?」
「あのウタって女……最強って言われているけどパートナーは居ないの?」
「ああ……あいつは特殊でな。どんな人器でも使いこなして、とてつもない力を発揮する。だけど、ウタの人器を行使できる人間は居ない。だから、初めて会った奴に必ず自分の人器を行使させようとするんだ。この街では有名な話さ」
「じゃあ、もしかして……」
アリスとリリスは同時に振り返りエヴィエスを見つめる。
「ああ、実は昨日の夜のシロが息を切らして帰ってきたんだ。どこかで会って行使しちゃったんだろうな……」
「そう……」
誰とでも同調できるシロの特異体質。
それにウタは気付いたんだろう。
だとしたら、あれだけシロに拘る理由も合点がいく。
「でもまあ、私達はシロを信じる。どんな答えを出したとしても私はシロの意見を支持するわ」
それはアリスの名一杯の強がり。
吹き抜ける風がアリスの髪をなびかせ、その髪を手で抑えながら腰掛ける2人を見つめるのだった。
◆◆◆◆◆◆
「昨日も言ったけど僕は君のパートナーにはなれないよ」
ベンチに腰掛けるや否やシロは本題を切り出す。
アリスとリリス2人と一緒に答えを見つけたい。その心に一切の揺るぎはないのだ。
「ダーリン……昨日の夜、私を行使したの……あれは同調よね?」
「……」
シロは静かに頷く。
「ダーリンの優しい気持ちが流れてきた。あの2人をどれだけ大切に思っているかもね。あの時……ダーリンは私に何を感じた?」
ウタはこれまでとは違う、真剣な表情でシロを見つめる。
「……僕もウタの気持ちが流れ込んできたよ。だけど、真っ暗だった。何も見えなかったんだ。まるで世界に自分一人だけ取り残されたような孤独を感じた」
はぐらかすこともできたかもしれない。
しかし、ウタの真剣な眼差しに嘘は付いてはいけないような気がして、シロは感じた事をそのまま口に出した。
「そっか……そうだよね」
ウタの真っ黒な瞳から一筋の涙が溢れる。
「ウタ?」
「ごめんごめん!こんなの柄じゃないのに……今のは見なかった事にして!」
流れ出た涙を素早く拭い、再び彼女は笑顔を作る。
しかし、それは無理矢理作った笑顔だろう。
「私の人器……誰も使えないの。ここに居るのにどこにも居ない感覚……ダーリンなら分かるよね?」
「分かるよ……痛いくらい……」
それは人器がないシロがずっと感じていた感覚。同調した時にウタに流れ込んだんだろう。
「だから、ダーリンと同調した時、分かったの。この人なら私のことを分かってくれるって……」
「でも……僕はアリスとリリスが大切なんだ。その気持ちは変わらない」
「うん……それは分かってる。あの2人、ダーリンのことをちゃんと信頼してるいいパートナーだと思うわ。でも……私をそばに居させて欲しいの。もう……一人は嫌なの」
「……分かった」
ウタは自分と同じなのだ。
その気持ちを知ってしまった以上、シロには断るという選択肢はない。
アリスとリリスには後から謝るしかない。
「ありがとう」
シロの言葉を聞いた時のウタの笑顔は、初めて作り物ではない血が通った人間に見えた。
「じゃあ、もう逃げないからさ……腕解いてもらっていいかな?」
「えっ何で?」
「だって……ほら、胸当たってるから」
抱きつかれた時から、ずっと意識しないようにしてきたのだが、言葉にした瞬間、急に自分の顔が熱くなるのを感じる。
「へぇー、気になるんだ」
ウタは真っ赤になったシロの顔をからかうような表情で覗き込み、そして自分の胸をより押し付ける。
「ちょっと!ちょっと!」
「えー、いいじゃない。どう私の胸は……ほらほら!」
「ちょっと!やめて……やめてー!!!」
グイグイと胸を押し付けられて、どうしたらいいか分からなくなったシロの叫びは広場にこだまする。
この日からシロは達は人間最強と謳われる人器使いと行動を共にすることになる。
シロとウタ。
似た境遇の2人の出会いは運命だったのかもしれない。
「この先にギルドがあるのよ」
ウタが進む方角を指し示す。
「ねぇ、ウタさん……」
突然の事でパニックになっていたシロであったが、徐々に冷静さを取り戻していた。
「何?ダーリン?私のことはウタって呼んでよ」
にこやかな笑みを浮かべながらシロの顔を覗き込む。
「じゃあ、ウタ……ギルドに着く前にちょっと話したいんだけどいいかな?」
「いいわよ!じゃあ、あそこに座りましょうか」
ウタは噴水の下にあるベンチを指差す。
「そうだね。じゃあ、リリスちょっといいかな?」
「え?」
「2人で話したいから……ね?」
「……分かりました……」
リリスは納得できない表情をしていたのだが、渋々シロの腕を離しシロ達の背中を見送った。
「ねぇ、リリス」
「姉さん……ルウムさんの言ってたこと現実になっちゃったね」
「ええ……」
シロは貴重な存在だ。
いずれ必ずシロのパートナーになりたいと言う人物が現れる事を予見していたのだ。
そして、その時にシロを繋ぎ止めるだけの絆を作れと言われていた。
金髪の双子は少し離れたところでベンチに腰掛ける2人を並んで見つめる。
「エヴィエス」
「ん?」
「あのウタって女……最強って言われているけどパートナーは居ないの?」
「ああ……あいつは特殊でな。どんな人器でも使いこなして、とてつもない力を発揮する。だけど、ウタの人器を行使できる人間は居ない。だから、初めて会った奴に必ず自分の人器を行使させようとするんだ。この街では有名な話さ」
「じゃあ、もしかして……」
アリスとリリスは同時に振り返りエヴィエスを見つめる。
「ああ、実は昨日の夜のシロが息を切らして帰ってきたんだ。どこかで会って行使しちゃったんだろうな……」
「そう……」
誰とでも同調できるシロの特異体質。
それにウタは気付いたんだろう。
だとしたら、あれだけシロに拘る理由も合点がいく。
「でもまあ、私達はシロを信じる。どんな答えを出したとしても私はシロの意見を支持するわ」
それはアリスの名一杯の強がり。
吹き抜ける風がアリスの髪をなびかせ、その髪を手で抑えながら腰掛ける2人を見つめるのだった。
◆◆◆◆◆◆
「昨日も言ったけど僕は君のパートナーにはなれないよ」
ベンチに腰掛けるや否やシロは本題を切り出す。
アリスとリリス2人と一緒に答えを見つけたい。その心に一切の揺るぎはないのだ。
「ダーリン……昨日の夜、私を行使したの……あれは同調よね?」
「……」
シロは静かに頷く。
「ダーリンの優しい気持ちが流れてきた。あの2人をどれだけ大切に思っているかもね。あの時……ダーリンは私に何を感じた?」
ウタはこれまでとは違う、真剣な表情でシロを見つめる。
「……僕もウタの気持ちが流れ込んできたよ。だけど、真っ暗だった。何も見えなかったんだ。まるで世界に自分一人だけ取り残されたような孤独を感じた」
はぐらかすこともできたかもしれない。
しかし、ウタの真剣な眼差しに嘘は付いてはいけないような気がして、シロは感じた事をそのまま口に出した。
「そっか……そうだよね」
ウタの真っ黒な瞳から一筋の涙が溢れる。
「ウタ?」
「ごめんごめん!こんなの柄じゃないのに……今のは見なかった事にして!」
流れ出た涙を素早く拭い、再び彼女は笑顔を作る。
しかし、それは無理矢理作った笑顔だろう。
「私の人器……誰も使えないの。ここに居るのにどこにも居ない感覚……ダーリンなら分かるよね?」
「分かるよ……痛いくらい……」
それは人器がないシロがずっと感じていた感覚。同調した時にウタに流れ込んだんだろう。
「だから、ダーリンと同調した時、分かったの。この人なら私のことを分かってくれるって……」
「でも……僕はアリスとリリスが大切なんだ。その気持ちは変わらない」
「うん……それは分かってる。あの2人、ダーリンのことをちゃんと信頼してるいいパートナーだと思うわ。でも……私をそばに居させて欲しいの。もう……一人は嫌なの」
「……分かった」
ウタは自分と同じなのだ。
その気持ちを知ってしまった以上、シロには断るという選択肢はない。
アリスとリリスには後から謝るしかない。
「ありがとう」
シロの言葉を聞いた時のウタの笑顔は、初めて作り物ではない血が通った人間に見えた。
「じゃあ、もう逃げないからさ……腕解いてもらっていいかな?」
「えっ何で?」
「だって……ほら、胸当たってるから」
抱きつかれた時から、ずっと意識しないようにしてきたのだが、言葉にした瞬間、急に自分の顔が熱くなるのを感じる。
「へぇー、気になるんだ」
ウタは真っ赤になったシロの顔をからかうような表情で覗き込み、そして自分の胸をより押し付ける。
「ちょっと!ちょっと!」
「えー、いいじゃない。どう私の胸は……ほらほら!」
「ちょっと!やめて……やめてー!!!」
グイグイと胸を押し付けられて、どうしたらいいか分からなくなったシロの叫びは広場にこだまする。
この日からシロは達は人間最強と謳われる人器使いと行動を共にすることになる。
シロとウタ。
似た境遇の2人の出会いは運命だったのかもしれない。
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