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第1章
5話「廃墟にて2」
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「ゲホッゲホッ!!アリス!!!」
猛烈な爆風に吹き飛ばされたシロは素早く起き上がり、アリスを探す。
しかし、爆風と共に舞い上がった粉塵で周囲は何も見えない。
(攻撃!?どこから!?)
それはシロの想定の外からの一撃だった。
しかし、今は敵を探すよりアリスと共に逃げることが先決だ。
今回は幸いにも直撃を免れたが、この場所に留まっていれば命がある保証はない。
「アリス!!アリス!!」
「シ……ロ!!シロ!!」
まだ突然の轟音で耳鳴りが響くが、微かな声に反応したシロは砂埃を掻き分けるように声の方に駆け寄る。
「アリス!!」
爆発に吹き飛ばされたアリスは崖の中腹に突き出した岩に必死でしがみついていた。
すぐさま腹這いになり手を伸ばすがとても届きそうにない。
崖は爆発の影響で脆く崩れやすくなっている。落ちたら一環の終わりだ。
「シロ……助けて……」
唐突に死の淵に立たされたアリスは弱々しい表情でシロに助けを求める。
先程までの強気な彼女はもうどこにもいない。
崖の上からアリスを引き上げるには時間が掛かる。その間に魔物がやってくる可能性が高い。
シロはアリスを助ける為に思考を巡らせながら廃墟に視線を向ける。その瞬間、全身の血の気が引くのを感じた。
夕陽に照らされて橙色に染まった砦の屋上からフェンリルよりも一回り以上大きい狼の魔物がこちらを見ている。
フェンリルと決定的に違うのは顔が三つある事だ。
その三つの顔は大きな口を開けると、顔の前に眩い光を放つ球体が発生し、少しずつ大きくなっていく。
あれが先ほどの爆発の正体だろう。もし直撃したら人間など木っ端微塵だろう。
(考えろ!考えろ!)
足元には今にも崖下に落下しそうなアリス。崖下までの高さを考えれば落ちれば間違いなく助からない。
そして、砦からは魔物が今にも光の球体を放とうとしている。
この場所に留まっていても爆発に巻き込まれるだけだ。
(2人で生きて帰る方法を考えるんだ!)
生死の境に立たされ極限まで高まったシロの集中力が一つの道筋を見出していた。
しかし、それは蜘蛛の糸のように細くか弱い可能性。
それに2人の命を賭けるにはあまりに分の悪い賭けかもしれない。
この選択が正しいかどうか分からない。だがもう時間がない。2人が助かる為にはこれしか考えられない。
腹を括れ。
シロはそう自分に言い聞かせる。
「アリス……僕を信じてくれる?」
崖の中腹で必死にしがみつくアリスに優しい口調でアリスに問いかける。精一杯の笑顔を作りながら。
「う……ん……信じる」
突然の危機に襲われたアリスの瞳には涙が滲んでいた。
「ありがとう……」
シロはゆっくり立ち上がり、三ツ首の魔物に視線を向ける。光の球体がみるみる大きくなっている。
(集中しろ、集中しろ…)
タイミングは魔物が光の球を放つ瞬間だ。
ドクンッドクンッと自分の心臓の音が痛いほど響く。
シロがタイミングを図る時間はほんの数秒であったが、その時間はひどく長く感じられた。
「今だ!!うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
三ツ首の魔物の光の球を放つ僅かに動いたタイミングを見逃さず、シロは意を決してアリスに向かって崖下に飛び降りた。
「アリス!!手を!!」
落下しながらアリスに手を伸ばす。みるみる彼女が近づいてくる。
シロとすれ違いざまに放たれた光の球が崖の上に着弾したのだろう。
爆破の轟音と爆風がシロの背中を猛烈に押し、落下速度はさらに加速する。
「シロ!!」
アリスが必死に伸ばした手を掴み取り彼女を強く抱きしめる。
その瞬間、彼女は光に包まれ、髪の色と同じ金色の手甲に変わっていた。
無事にアリスを救出することはできた。だが、危機は終わってなどいない。
地面が近づいてくる。この速度で地面に激突すれば十中八九助からないだろう。
シロは眼前に地面が迫る中、ゆっくりと瞳を閉じる。
さっきまではあれだけ煩いと感じた心臓の鼓動が不思議と鳴り止み、やけに自分が落ち着いているのが分かる。
魂を注げ……
思い出すのは魔物を追跡していた時のアリスの言葉ーー
「ねえ、シロ」
「ん?どうしたの?」
アリスに呼び止められたシロは足を止める。
山を掻き分けながら走り続けていたため、アリスの額には汗が浮かび、呼吸も少し荒い。
「もしかしたら、これから魔物と戦いになるからもしれないわ。だから覚えておいてほしいの」
わたしの人器はーー
「サンダァァーーフィスト!!!」
溢れ出た衝動に導かれるまま突き出した拳から地面に向かって電撃が放たれる。
その電撃は地面に触れた瞬間、バチッという音と共に辺り一帯を眩く照らす。
電撃が巻き上げた砂埃の中、ドン!!っという音と共にシロはなんとか着地に成功していた。
全ての勢いは殺せなかった。しかし、同調によって強化された身体が着地を可能にしてくれていた。
着地したのは、廃墟の広場であった。
「ふぅ……ぐっ!!」
膝をついた体勢から立ち上がろうとした瞬間、肩に強烈な衝撃を受けたシロは広場中央に吹き飛ぶ。
(フェンリルか!)
地面に何度か打ちつけられながらも、シロは視界の端で何体かのフェンリルに囲まれていることを確認していた。
しかし、この場では戦う必要などない。
シロは広場中央に転がりながらもその勢いを殺さずに体勢を立て直し全力で駆け出す。
目指すは廃墟の城壁。それを乗り越えて逃げる。
それがシロが短い時間で導き出した生きるための策だった。
同調によって数倍強化された脚で地面を全力で蹴る。
すると行手を阻むように一体のフェンリルがシロの目の前を塞いだ。
「どけぇぇぇぇぇぇ!!!」
速度を落とすことなくフェンリルの顔面に金色の拳をねじ込む。
バチッ!!という音が弾け、フェンリルは煙を口から吐きながらゆっくり倒れた。
しかし、シロはそれに目をくれる事はない。
(もう少しだ……)
城壁が眼前に迫る。その城壁は大分風化が進み所々崩れてかかっている。
背後には何体ものフェンリルが追ってきているのだろう。無数の殺気がシロの背を突き刺す。
ドゴォォォォォォ!!!
「!?」
三ッ首の魔物からと思われる攻撃で城壁が爆発し、ガラガラと音を立てて瓦礫がシロに向かって崩れてくる。
(このまま突っ切れるか?いや……)
瓦礫が大きすぎる。
シロは瓦礫を躱すために速度を緩めた。
すると今度は今度は眼前に光の球が着弾し爆音を巻き上げる。
「ッッ!!」
キィィィンと耳鳴りが響くなか、それでもなお爆風に向かって地面を蹴り出そうとした瞬間ーー
シロは自らを支えていた地面が崩れるのを感じた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
重力に従い地下へ落ちる。それに抗おうにもシロにはどうすることも出来なかった。
「くっ!!」
幸いにも落下した高さはそれ程でもなく、空中でくるりと体勢を立て直し着地する。
「はぁ、はぁ、はぁ」
頭上を見上げるが、シロが落下した穴は瓦礫で塞がれ、とても1人では動かせそうにはない。
隙間から僅かな光が差し込み周囲を僅かに照らす。
落下したのは恐らく廃墟の地下道だろう。
劣化が進んでいたのに加え、爆発による衝撃で地面が抜けたのだ。
瓦礫で塞がれた逆には道が続いているが、地上からのか細い光ではとても奥まで見渡せない。
その通路は永遠に続く無への来訪者を待つかのように静かに口を開けている。
「う……」
人器の使い過ぎなのだろうか、異常な倦怠感に襲われ足下がふらつく。
だが、この場所に留まっても事態は好転しない。
シロは意を決して闇への道を進む事に決めた。
猛烈な爆風に吹き飛ばされたシロは素早く起き上がり、アリスを探す。
しかし、爆風と共に舞い上がった粉塵で周囲は何も見えない。
(攻撃!?どこから!?)
それはシロの想定の外からの一撃だった。
しかし、今は敵を探すよりアリスと共に逃げることが先決だ。
今回は幸いにも直撃を免れたが、この場所に留まっていれば命がある保証はない。
「アリス!!アリス!!」
「シ……ロ!!シロ!!」
まだ突然の轟音で耳鳴りが響くが、微かな声に反応したシロは砂埃を掻き分けるように声の方に駆け寄る。
「アリス!!」
爆発に吹き飛ばされたアリスは崖の中腹に突き出した岩に必死でしがみついていた。
すぐさま腹這いになり手を伸ばすがとても届きそうにない。
崖は爆発の影響で脆く崩れやすくなっている。落ちたら一環の終わりだ。
「シロ……助けて……」
唐突に死の淵に立たされたアリスは弱々しい表情でシロに助けを求める。
先程までの強気な彼女はもうどこにもいない。
崖の上からアリスを引き上げるには時間が掛かる。その間に魔物がやってくる可能性が高い。
シロはアリスを助ける為に思考を巡らせながら廃墟に視線を向ける。その瞬間、全身の血の気が引くのを感じた。
夕陽に照らされて橙色に染まった砦の屋上からフェンリルよりも一回り以上大きい狼の魔物がこちらを見ている。
フェンリルと決定的に違うのは顔が三つある事だ。
その三つの顔は大きな口を開けると、顔の前に眩い光を放つ球体が発生し、少しずつ大きくなっていく。
あれが先ほどの爆発の正体だろう。もし直撃したら人間など木っ端微塵だろう。
(考えろ!考えろ!)
足元には今にも崖下に落下しそうなアリス。崖下までの高さを考えれば落ちれば間違いなく助からない。
そして、砦からは魔物が今にも光の球体を放とうとしている。
この場所に留まっていても爆発に巻き込まれるだけだ。
(2人で生きて帰る方法を考えるんだ!)
生死の境に立たされ極限まで高まったシロの集中力が一つの道筋を見出していた。
しかし、それは蜘蛛の糸のように細くか弱い可能性。
それに2人の命を賭けるにはあまりに分の悪い賭けかもしれない。
この選択が正しいかどうか分からない。だがもう時間がない。2人が助かる為にはこれしか考えられない。
腹を括れ。
シロはそう自分に言い聞かせる。
「アリス……僕を信じてくれる?」
崖の中腹で必死にしがみつくアリスに優しい口調でアリスに問いかける。精一杯の笑顔を作りながら。
「う……ん……信じる」
突然の危機に襲われたアリスの瞳には涙が滲んでいた。
「ありがとう……」
シロはゆっくり立ち上がり、三ツ首の魔物に視線を向ける。光の球体がみるみる大きくなっている。
(集中しろ、集中しろ…)
タイミングは魔物が光の球を放つ瞬間だ。
ドクンッドクンッと自分の心臓の音が痛いほど響く。
シロがタイミングを図る時間はほんの数秒であったが、その時間はひどく長く感じられた。
「今だ!!うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
三ツ首の魔物の光の球を放つ僅かに動いたタイミングを見逃さず、シロは意を決してアリスに向かって崖下に飛び降りた。
「アリス!!手を!!」
落下しながらアリスに手を伸ばす。みるみる彼女が近づいてくる。
シロとすれ違いざまに放たれた光の球が崖の上に着弾したのだろう。
爆破の轟音と爆風がシロの背中を猛烈に押し、落下速度はさらに加速する。
「シロ!!」
アリスが必死に伸ばした手を掴み取り彼女を強く抱きしめる。
その瞬間、彼女は光に包まれ、髪の色と同じ金色の手甲に変わっていた。
無事にアリスを救出することはできた。だが、危機は終わってなどいない。
地面が近づいてくる。この速度で地面に激突すれば十中八九助からないだろう。
シロは眼前に地面が迫る中、ゆっくりと瞳を閉じる。
さっきまではあれだけ煩いと感じた心臓の鼓動が不思議と鳴り止み、やけに自分が落ち着いているのが分かる。
魂を注げ……
思い出すのは魔物を追跡していた時のアリスの言葉ーー
「ねえ、シロ」
「ん?どうしたの?」
アリスに呼び止められたシロは足を止める。
山を掻き分けながら走り続けていたため、アリスの額には汗が浮かび、呼吸も少し荒い。
「もしかしたら、これから魔物と戦いになるからもしれないわ。だから覚えておいてほしいの」
わたしの人器はーー
「サンダァァーーフィスト!!!」
溢れ出た衝動に導かれるまま突き出した拳から地面に向かって電撃が放たれる。
その電撃は地面に触れた瞬間、バチッという音と共に辺り一帯を眩く照らす。
電撃が巻き上げた砂埃の中、ドン!!っという音と共にシロはなんとか着地に成功していた。
全ての勢いは殺せなかった。しかし、同調によって強化された身体が着地を可能にしてくれていた。
着地したのは、廃墟の広場であった。
「ふぅ……ぐっ!!」
膝をついた体勢から立ち上がろうとした瞬間、肩に強烈な衝撃を受けたシロは広場中央に吹き飛ぶ。
(フェンリルか!)
地面に何度か打ちつけられながらも、シロは視界の端で何体かのフェンリルに囲まれていることを確認していた。
しかし、この場では戦う必要などない。
シロは広場中央に転がりながらもその勢いを殺さずに体勢を立て直し全力で駆け出す。
目指すは廃墟の城壁。それを乗り越えて逃げる。
それがシロが短い時間で導き出した生きるための策だった。
同調によって数倍強化された脚で地面を全力で蹴る。
すると行手を阻むように一体のフェンリルがシロの目の前を塞いだ。
「どけぇぇぇぇぇぇ!!!」
速度を落とすことなくフェンリルの顔面に金色の拳をねじ込む。
バチッ!!という音が弾け、フェンリルは煙を口から吐きながらゆっくり倒れた。
しかし、シロはそれに目をくれる事はない。
(もう少しだ……)
城壁が眼前に迫る。その城壁は大分風化が進み所々崩れてかかっている。
背後には何体ものフェンリルが追ってきているのだろう。無数の殺気がシロの背を突き刺す。
ドゴォォォォォォ!!!
「!?」
三ッ首の魔物からと思われる攻撃で城壁が爆発し、ガラガラと音を立てて瓦礫がシロに向かって崩れてくる。
(このまま突っ切れるか?いや……)
瓦礫が大きすぎる。
シロは瓦礫を躱すために速度を緩めた。
すると今度は今度は眼前に光の球が着弾し爆音を巻き上げる。
「ッッ!!」
キィィィンと耳鳴りが響くなか、それでもなお爆風に向かって地面を蹴り出そうとした瞬間ーー
シロは自らを支えていた地面が崩れるのを感じた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
重力に従い地下へ落ちる。それに抗おうにもシロにはどうすることも出来なかった。
「くっ!!」
幸いにも落下した高さはそれ程でもなく、空中でくるりと体勢を立て直し着地する。
「はぁ、はぁ、はぁ」
頭上を見上げるが、シロが落下した穴は瓦礫で塞がれ、とても1人では動かせそうにはない。
隙間から僅かな光が差し込み周囲を僅かに照らす。
落下したのは恐らく廃墟の地下道だろう。
劣化が進んでいたのに加え、爆発による衝撃で地面が抜けたのだ。
瓦礫で塞がれた逆には道が続いているが、地上からのか細い光ではとても奥まで見渡せない。
その通路は永遠に続く無への来訪者を待つかのように静かに口を開けている。
「う……」
人器の使い過ぎなのだろうか、異常な倦怠感に襲われ足下がふらつく。
だが、この場所に留まっても事態は好転しない。
シロは意を決して闇への道を進む事に決めた。
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