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1人と1匹の一夜

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 向かった先は、アトリエ。

 端の端とはいえ、館内にある。

 なので、夜に若奥様が一人で向かっても、そう危ないということはないだろう。

 その通り、無事に辿り着いて、鍵を開け、中へ入った。

 イーゼルに立ててある、ほとんど完成している絵の前に立つ。

 絵の中ではフレイディが微笑んでいた。

 この絵を描くために、何度も、何度もモデルになってくれたのだ。

 アマリアの目に映るフレイディ、そのままの姿を描けていると思う。

 なのに、その微笑みに今は何故か胸が痛んだ。

 これは結局、絵の中のことだけで、本人ではない。

 当たり前のことをアマリアは実感してしまった。

 大切だと思い、立派に完成させようと思い、約一年、ずっと頑張って、そればかり考えて取り組んできた肖像画。

 これを前にして、プラスの感情が浮かばなかったのは初めてだった。

 むしろ寂しい、とか物足りない、とかそんなもやもやする気持ちばかりが浮かんでくる。

 それでもここへ来て、目にしたかった。

 これを見れば、フレイディの姿だけでも見られるのだから。

 でも間違いだったのかもしれない。

 本人などではないと思い知ってしまったのだから、かえって逆効果だったかもしれない。

 多分その通りだった。
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