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二人きりの一夜

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「レノスブル様にお越しいただけるなど身に余る光栄でございます。お泊めできるのに相応しい場がなくて非常に恐縮ですが……」

 強くなった雨の中、馬車を降りて、集落で一番大きな家へと招かれた。

 村長という老齢の人物は非常に丁寧で、しかし言葉通り恐縮したという様子で肩を縮めていた。

 アマリアはその様子に申し訳なくなってしまう。

 こちらの危機を救ってもらったも同然だというのに、これほど負担に思わせてしまって。

 その通りのことをフレイディも言った。

 丁寧に胸に手を当て、礼をし、挨拶した。

「そのようなことはない。一夜の宿を恵んでもらえるだけでどれほど助かるか……、明日、無事に帰ることができたらじゅうぶんな礼をさせてくれ」

 レノスブル家子息であるフレイディが頭まで下げてお礼を言ったのだ。

 村長はかえって更に恐縮した様子で手を振った。

「い、いえいえそのような! もったいのうございます!」

 そんなやりとりで、アマリアとフレイディは一室に通された。

 客間というところで、いくらかの家具はあったが、レノスブルの宮廷とは勿論比べ物にならない。

 生まれてから宮廷や屋敷といった建物にしか暮らしたことのないアマリアにとっては、失礼ながら、粗末としか見えなかった。

 そのようなことを口に出す気などなかったが。

 なにしろ助けてもらっている身だ。

 雨風をしのげるだけで、現状、最上級の場所である。
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