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薔薇の庭と和解
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フレイディはアマリアのことだけでなく、自分のことも話してくれた。
朝はいつもレオンの散歩に行くのだとか、この庭を歩くことも多いのだとか……。
アマリアはそれを楽しく聞いた。
庭は豪華でどこまでも続いていて、歩くうちにアマリアは、すべては回り切れないだろうな、と思った。
なにしろ広大すぎる。
エヴァーレ領には自然公園がいくつかあるが、そのひとつにも匹敵しそうな広さを持っていた。
いや、全貌は不明なのだから、見えない場所も含めたらそれ以上なのかもしれない。
アマリアは感動してしまった。
「……そうなんだ。外で描くこともあるのだね」
話題はちょうど、アマリアが先日、スケッチのために外出をしたというものに移っていた。
屋敷の近く、小さな丘で春の池をスケッチしたのだと話したところ、フレイディが興味を示してくれたのだ。
「はい。やはり自然光の下ではのびのび描けますから、本当はもっとお外で作業できればと思うのですけど」
アマリアが野外での絵画を好みつつも、なかなか叶わないと話したのには、ちょっとうなられた。
あごに手を当てて、なるほどという様子にもなられる。
「ああ……なかなか毎日外でというのは難しいだろう。天気もあるしね」
「ええ、そうなのです」
三十分ほど歩いていただろうか。
時間的にそろそろ戻るのかもしれない、とアマリアは感じた。
フレイディが案内する形で歩いていたが、宮廷のほうへ足は向いていたからだ。
あまり長々と外を歩くと疲れてしまうし、ちょうどいいところかもしれないわ、とも思った。
貴族として、長く歩いたり運動したりということには慣れていないのだ。
「アマリア嬢、部屋に入ったら見せたいものがあるのだけど」
そんな道を歩きながら、ふとフレイディが切り出した。
朝はいつもレオンの散歩に行くのだとか、この庭を歩くことも多いのだとか……。
アマリアはそれを楽しく聞いた。
庭は豪華でどこまでも続いていて、歩くうちにアマリアは、すべては回り切れないだろうな、と思った。
なにしろ広大すぎる。
エヴァーレ領には自然公園がいくつかあるが、そのひとつにも匹敵しそうな広さを持っていた。
いや、全貌は不明なのだから、見えない場所も含めたらそれ以上なのかもしれない。
アマリアは感動してしまった。
「……そうなんだ。外で描くこともあるのだね」
話題はちょうど、アマリアが先日、スケッチのために外出をしたというものに移っていた。
屋敷の近く、小さな丘で春の池をスケッチしたのだと話したところ、フレイディが興味を示してくれたのだ。
「はい。やはり自然光の下ではのびのび描けますから、本当はもっとお外で作業できればと思うのですけど」
アマリアが野外での絵画を好みつつも、なかなか叶わないと話したのには、ちょっとうなられた。
あごに手を当てて、なるほどという様子にもなられる。
「ああ……なかなか毎日外でというのは難しいだろう。天気もあるしね」
「ええ、そうなのです」
三十分ほど歩いていただろうか。
時間的にそろそろ戻るのかもしれない、とアマリアは感じた。
フレイディが案内する形で歩いていたが、宮廷のほうへ足は向いていたからだ。
あまり長々と外を歩くと疲れてしまうし、ちょうどいいところかもしれないわ、とも思った。
貴族として、長く歩いたり運動したりということには慣れていないのだ。
「アマリア嬢、部屋に入ったら見せたいものがあるのだけど」
そんな道を歩きながら、ふとフレイディが切り出した。
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