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温玉乗せとろとろカルボナーラ

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「奈々さん! 噴きこぼれそうです! 消しますか!?」
 目の前の大鍋の様子に、都はおろおろと視線と手を泳がせた。
 都の目の前の大鍋にはパスタが投入されて、もうだいぶやわらかくなって、お湯の中を泳いでいた。
 が、火が強すぎたのか、ぶくぶく噴いてきて、こぼれそう。
 都はあわあわと奈々にヘルプを求めてくる。
 奈々は隣のコンロに置いたフライパンの中身を、焦げ付かないように軽く混ぜながら、あまりに都が慌てるのでちょっと笑ってしまった。
「お水を少し、入れてみて」
「お水!? 飲み水ですよね!?」
 奈々のアドバイスに、都はあたふたと水道に向かって、水をカップにくんで、そして言われた通り、ちょろちょろとパスタの大鍋に注いだ。
 途端、噴きこぼれそうなほど煮立っていた鍋は、すっと落ち着いた。パスタが泳いでいるのがはっきり見えるほど静かになる。
「あ、……静かになった……!」
 都は目をぱちくりさせた。素直な反応に、奈々は今度、穏やかな笑みを浮かべてしまう。
「差し水、って言ってね。一時的にお鍋の温度が下がるから、噴きこぼれを防ぐの」
「へぇー……温度が上がりすぎるから噴きこぼれるんですか……」
 フライパンの中身、白くてとろっとした液体をちょっと混ぜて、具合を確かめて、そろそろいいかな、と奈々は思った。横に置いていた皿に手を伸ばす。
 そこには茹でて小さく切ったほうれん草が乗っていた。
「本当は差し水はしないほうがいいって言うんだけどね」
 ほうれん草を入れながら言った奈々に、都はまた、ばっとこちらを見る。手には水の入ったカップをしっかり構えていた。
「えっ、なんでですか?」
 都の大袈裟な声音に、また笑みを浮かべつつ、奈々はフライパンに入れたほうれん草を、へらで軽く混ぜていく。
「急にお湯の温度が下がると、パスタが美味しくなくなっちゃうみたい。でもここはお店じゃないからね、噴きこぼれたらお掃除が大変だし、いつもお水入れちゃうな」
「そうなんですねぇー……確かに、レストランじゃないですもんね」
 いつも奈々が料理の解説をするときとまったく同じ。都は、はーっと感心した、という様子で言ってくれた。
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