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2人の居場所

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 その奈々の前で、都は続けた。
 今度はためらいつつでも、迷いつつでもなく、きっぱりとしていた。
「私は奈々さんをお母さんだと思ったことは、一度もないです」
 奈々はもう一度、息を呑むことになる。
 それはすべての答えだったのだから。
 都が自分のことをどう感じてくれているのか。
 どういう相手だと思ってくれているのか。
 どういう意味で、好意を寄せてくれているのか。
 それらの疑問の、答えであった。なによりもはっきりとした。
「そりゃあ、奈々さんはいつも、美味しいご飯を作ってくれるから、こういうひとがお母さんだったら良かったのかな、なんて思ったりはしました。でも、それとは違うんです」
 都の言葉。
 『答え』をもっとはっきりと、形ある言葉で伝えようとしてくれている。
「おばあちゃんとか、おばさんとか、身内? そういうひとたちが私を大切にしてくれるのは少し違うっていうか……だって、私にご飯を作ってくれたって、奈々さんにはメリットなんてないじゃないですか」
 都の言葉は考え考え、だった。
 気持ちを言葉にするのは苦手なのだろう。
 でもその中で、適切な言葉を選びたい。
 適切な言葉で伝えたい。
 そう思って、考えてくれているのが伝わってくる。
「そんなこと、ないよ」
 だから、奈々もやっとそれを言うことができた。
「メリットとかじゃないし……私こそ、都ちゃんとご飯が食べられて、一人じゃないことを感じられたし、だからとてもあったかい時間をもらったし……」
 自分こそ考え、考えだ、と思って奈々は自分に呆れたけれど、これはきっと良かったのだ。
 都は大袈裟に手を持ち上げて、指を立てて「あ、そう! それです」なんて声を上げたのだから。
「夕ご飯はいつも、あったかい時間でした。それは他人だからこそ感じられる、あったかさだと思うんです」
 すぐに声音は落ち着いた。
 いや、それ以上に落ちた。都の声のトーンが。
 柵に再び手をかけるだけではない。ぎゅ、と柵を握った。
「だから……それがなくなりそうになって、やっとわかって。自分のことばっかりで、奈々さんがこれからどうしようとか考えてるの、全然思い至らなくて。子供ですよね、こんなの」
 奈々は驚いてしまう。
 自分が引っ越しを考えた、そして出ていくのに具体的な行動をはじめたのを指していたのだから。
 でも都が子供であるものか。
 年齢こそ未成年の高校生であるものの、事あるごとに、思考は大人びていて、堅実ですらあると感じていたのだから。
 そして、都の言ってくれた奈々のそれは、都に触発されたものだったのだ。
 都のようにしっかりしていたいと。
 大人として自立していたいと。
 自分の居場所を確立したいのだと。

 ……居場所?
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