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いつかご飯を食べる場所

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 ああ、やっぱりいいとこだな。
 ここに決めて大丈夫だと思う。
 それに……。

 奈々が重視したのは『ダイニングがあること』だった。
 本当なら、居室だけの1Kでも良かった。それならもう少し安く借りられるのだし。
 だけど、できればダイニングが欲しかった。
 小さくて良いからテーブルと椅子を置いて、ご飯がそこで食べられるように。
 それは勿論。

 都ちゃんが来てくれても、いいように。
 一緒に食べてくれると言っても、困らないように。

 そのためである。
 都との関係すらあやふやで、都の寮についての話だってしっかり聞いていなくて、はっきり「行きますよ!」とも言われていないのに、前のめりすぎかな、なんて思って、奈々は自分に苦笑した。
 結局、期待してしまっているのは自分だけかもしれない、と思う。
 都が自分を好ましく思ってくれているのは確かだろうけれど、それでも、近くないだろう家にやってきてご飯を食べてくれるか。それは過度の期待かもしれない、と。
 でも、それでもいいかと思うのだ。
 ダイニング、あって困ることはない。
 もし使われることになったら嬉しい。それだけ。
 そう思って、奈々は次々と写真を見て、決定の気持ちを濃くしていったのだけど。

「奈々さーーーーーん!!!!!」

 不意に大声がして、奈々はびくっとした。
 窓が振動するかと思うほどの大声が、外から聞こえたのだ。
 勿論そんなはずはないが、それくらいの勢いではあった。
 そしてこの呼び方をここでするのは、一人しかいないのであって。
 奈々は戸惑いつつも、立ち上がって、窓へ向かった。
 きしむ窓を、しかしコツを掴んでいるので難なく開けて、顔を出す。
 そこにいたのは確かに都であった。
 制服姿。一応、コートは着ている。だが、寒いというのに、ミニスカートはそのまま。すんなりした白い脚が見えていた。
「み、都ちゃん? どうし……」
 今日は遅くなると言っていたのに。
 どうして。
 奈々は戸惑いつつ、返事をした。
 のに、都はそれに答えず、ぶんぶんと手を振った。大きく横に振る。
「来てください! 今すぐ!! あ、コートは着てくださいね!」
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