週に7日のみやこでご飯

2人の関係、その名前

①

　今日は少しお洒落をした。
　コートはいつもと同じPコートだけど、スカートはちょっと値の張るブランドのものだし、セーターも装飾が控えめについてかわいらしいものだ。
　バッグもやはりブランドもの。派手にブランド名が入っているようなものではなく、シックで大人めのものだけど、細部まで手がかけられているのがひと目でわかる。
　まぁ、これらのほとんどは去年までに買ったものなのだけど。
　奈々は今日の格好を自分で見下ろして、少し苦笑した。
　でもどれもまだ買って数年以内。手持ちでは良い部類に入る服なので、着る頻度も少ないぶん、ほとんど傷んでいない。
　去年のとはいえ、特別な日だから。
　奈々は小ぶりのバッグを持ち直して、前を見た。
　ターミナル駅なので、駅前の広場も広々としている。
　あちこちにイルミネーションがたっぷり飾られて、寒々しい空気を明るく彩っていた。
　もうすぐクリスマスなのだ。赤と緑のイルミネーションはそのクリスマスが楽しみになるような色合いだった。
　今日は待ち合わせをしていた。
　都の地方大会活躍のお祝いをしようと、食事に行くことになったのである。
　都は「えー、いいですよ！　奈々さんが美味しいもの、もう作ってくれたじゃないですか！」と言って遠慮した。
　が、「もうすぐクリスマスだし、それも兼ねて、ねっ」ともうひとつ理由をつけて誘ったのだ。
　おめでたいことと、冬の特別な日。
　ふたつもあれば、ごちそうを食べるのにふさわしいではないか。
　よって、都はまだ少し遠慮しつつも受け入れてくれて、それで駅前で今、待ち合わせをしている。
　奈々はなんだかそわそわしていた。
　ただ都とご飯を食べるだけなのに。
　そんなの、毎日、家でしていることなのに。
　今日のものは違うのだ。
　特別なのだ。
　そんなふうに考えてしまって、奈々は、はたとする。
　こういう気持ち。
　出掛けるのに高揚する気持ち。
　久しぶりに感じた、と。

　え、前にこういう気持ちになったのっていつだっけ。

　奈々はつい考えてしまった。

　今年……真夏にゆーちゃん……じゃない、雄二に別れを切り出されたし、そんなことが起こるくらいだったから、特別なことってそこまでほとんどなかったかも。

　去年……。あったかな……あ、クリスマスにはデートに行ったなぁ。
　テーマパークに行って、記念写真撮ったっけ。

　でもそのあと……。

　そこまで考えて、奈々は今度、違う意味の苦笑をすることになる。
　だいぶご無沙汰だったのではないか。
　誰かとの待ち合わせにこうして高揚するような気持ちは。