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愛するおばあさま②

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 グレイスは信じられないような気持ちでレイアを見た。レイアは少し首を傾げて、笑みを浮かべる。
「たくさん辛い思いをしたと思うわ。それで、一人で抱えているのはもっと辛かったでしょう」
 かけられた優しい言葉。
 もう一人で抱え込んでいなくてもいいのだという事実。
 両方からグレイスの目から新しい涙を零させた。今度は違う意味の涙だった。
「もっと早く来てあげれば良かったのね」
 グレイスが一人で抱え込むことになったのは、母がもういないということも大きかったのだろう。母がいれば、同性だけあり、また、自らも父の元へ嫁いできた身として、よりグレイスに寄り添ってくれただろうし、力になってくれたはず。
 それをやっとグレイスは思い知った。母がいないことにもすっかり慣れてしまっていたので、思い当たらなかったのだ。
「いえ、……私の思慮不足、です、から」
 それでも自分のおこないは変わらない。グレイスは涙を拭って、言った。
 レイアは困ったように笑みを浮かべ、手を伸ばしてきた。グレイスの手に触れる。
 触れてくれた手は、しわが多かったけれど、あたたかくて優しかった。
 いろんなひとの手に支えられている、とグレイスはぼんやり思った。リリスに触れられたときもそう感じたのであった。
 もう一人……グレイスの手に触れ、誓ってくれたひとのことは、今あまり思い出したくなかったけれど。それも自分の『思慮不足』を思い知ってしまうことだから。
「例えそうだとしても、なにもかもうまくやれるわけではないでしょう。グレイス、支えてくれるひとは必要なのよ。それは何歳になったって同じだわ」
 優しい言葉が、レイアの穏やかな声で次々とかけられる。グレイスの胸が違う意味で痛んでしまう言葉だ。勿論、それは、嬉しさ。
「レイシスももう少し、グレイスに寄り添ったことをするべきだったと思うの。確かにお家のことは大切よ。でも、家はひとが作るもの。ひとが駄目になってしまうことに比べたら、家のことなんて些細ではないかしら」
 父のしたこと。なにも間違っていない。
 ただ、足りなかったのはグレイスに対する扱いだった。アフレイド家の当主としての務めを優先するあまりそうなってしまったはずだ。
「……フレンのこと。想っていたのでしょう」
 ふと話題は違うほうへ行った。レイアはちょっと固い、でも穏やかさも残った声で静かに言う。
 グレイスは素直に頷くことができた。
 今までは誰にも言えなかったこと。
 否定されるのを恐れて。
 また、自分の気持ちにも向き合いたくなくて。
 言えなかったことだ。
「……はい」
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