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屋敷への帰還①

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 熱を出してから五日が経過して、グレイスはやっとアフレイド領の屋敷へと帰還した。
 今度はマリーのいない馬車。グレイスの体を気遣ってか、途中、頻繁に休憩を取ってくれた。
 フレンは、一緒に乗ってくれなかった。代わりにリリスが同乗してくれた。
「お体の具合がまだ完全ではないでしょうから、同性の方のほうがよろしいでしょう」
 そんなふうに言われた。確かにその通りではあるのだが、以前は無かったことである。少し具合の悪い程度なら、フレンがそのまま傍について、体調のこともしっかり見守ってくれていたのだから。
 けれどグレイスとしても、密室に約二時間二人きりというのも今は居心地が悪い、と思ってしまった。だから「フレンがいいわ」とは言わなかった。「そうね。リリス、お願い」と受け入れた。
 リリスはどう思っただろう、少々奇妙だと思ったかもしれない。リリスにとって、フレンは使用人としての同僚で、昔から同じ仕事をしている立場なのだから。
 幸い、馬車でそんな話は出なかったけれど。リリスとて踏み入っていい状況かは心得ているはずなのである。それで、きっと。
 休み休みだったので、半日ほどがかかってしまった。それで父への報告も部屋で休んでからということになった。
「出先で熱を出すなど、災難だったが。なにか悪いことでもあったか」
 グレイスは特に体が弱いということもなく、普段であれば熱など滅多に出すこともない。寝込むこともほとんどない。だから父もそういう訊き方をしてきたのだと思う。基本的に優しい父親なのだ。
「少し、驚いてしまうことがあって……寒い中、お外で過ごしてしまったのです」
 グレイスは本当であることを言った。
 実際、その通りなのだ。ただ、原因が口に出せないだけで。
「……そうか。……。まさかと思うが、ダージル様のことではあるまいな」
 そう訊かれるとは思ったけれど。実際に直面してしまえばグレイスの心臓は冷えてしまう。
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