従者は永遠(とわ)の誓いを立てる

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父の叱責①

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「馬鹿者! なんということをしてくれたのだ!」
 入って早々、雷が落ちてきた。グレイスは身を縮めるしかない。
「申し訳ございません」
 謝ったものの、それだけで許されるはずはなかった。父は「良い歳の娘が」だの「男爵家令嬢としての自覚が」などと、くどくど説教をはじめた。
 グレイスに口ごたえなどできるはずもない。はい、はい、すみません。と、おとなしくそれを享受した。
 不意に、こんこん、と扉が鳴った。父は一旦言葉を切って、「入れ」と許可を出す。
「失礼いたします」
 入ってきて一礼したのはフレンだった。グレイスは違う意味で憂鬱になった。
 一体どこまで話されるというのか。内容によっては雷がもっと大きくなるだろう。
 でもわかっていた。取り繕うことはできない。
 何故なら、グレイスの捜索に自警組織が動いていたからだ。そこを誤魔化すことができるはずもない。
 いくらフレンがグレイスの全面的な味方という立場の従者でも、できることとできないことがある。それに、フレンとて怒っていないという保証はないのだ。いや、怒って当たり前のことなのであるが。
「グリーティア。事の顛末を聞かせてもらおう」
 父は怒りを押し殺している、という顔と口調でフレンを見る。
 フレンに非があろうはずはない。すべてグレイスが勝手にしたことである。
 おまけにフレンは今日、公休だったはず。グレイスは今更そのことを思い出した。事前にチェックして、休みだからこそ今日を選んだというのに。
 つまり、公休のフレンはグレイスの傍に一日ついていない日であったのだから、監督不行き届きと責められるいわれもないのである。
 しかし、父の怒りはフレンに向いているものではなさそうだった。
「はい。自警組織に指示を出し、街中の捜索を……」
 フレンが話しはじめたのは、グレイスを見つけるために動いてくれた自警組織への指示と、自分の動向についてであった。淡々と説明していく。
「……賊の捕縛はすべて完了。領主様よりご処分を」
 説明の最後に、フレンは胸に手を当て、一礼した。父はそれをすべて聞き、組んでいた手の上に額を押し付けて、はぁ……とため息をついたが、すぐに顔をあげた。
「……わかった。あとは私が処理しよう」
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