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二台のミニ四駆
③
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「パーツ、好きなの使っていいですよ。小学生の頃使ってたやつなんで、ちょっと古めですけど、手入れはしてきました」
菜月は気前のいいことを言ってくれて、茂はそれに甘える形になった。
ボディからシャーシ、装甲の部分を外して中を見る。
中で確認するのは主にギヤとモーター、それから電池。
「これ、充電は?」
電池が充電式だったようなので聞いてみると、菜月は顔をあげて、にこっと笑った。
「充電してあるに決まってるじゃないですか。そんなところでズルはしません」
「……そうですか」
つい敬語になりつつそれを受けて、弄る作業に戻る。
走る予定のコースを見て、パーツを考える。
これでも遊んでいた頃はそれなりに速いほうだったのだ。
思い出さなくてはいけなかったが、悩むことはあまりなかった。
ほんの十分ほどで支度は済んだ。
「もういいですか? そろそろ閉まるんですよ。小学生向けがメインなんで」
確かに外は夕暮れに近付いていた。小学生は帰る頃。
それでコースに向かい、走らせる旨をスタッフに伝え……、二人でスタート地点に立った。
「行きますよ。負けませんから」
「俺だって、よくわからんが、やるからには負けるもんか」
この頃にはなんだか負けん気と楽しさも出てきていた茂はそんなふうに言ってしまい、言ってから自分に驚いた。
なんだかいつも通りの菜月と自分のやり取りに似ている、と思ってしまって。
菜月は気前のいいことを言ってくれて、茂はそれに甘える形になった。
ボディからシャーシ、装甲の部分を外して中を見る。
中で確認するのは主にギヤとモーター、それから電池。
「これ、充電は?」
電池が充電式だったようなので聞いてみると、菜月は顔をあげて、にこっと笑った。
「充電してあるに決まってるじゃないですか。そんなところでズルはしません」
「……そうですか」
つい敬語になりつつそれを受けて、弄る作業に戻る。
走る予定のコースを見て、パーツを考える。
これでも遊んでいた頃はそれなりに速いほうだったのだ。
思い出さなくてはいけなかったが、悩むことはあまりなかった。
ほんの十分ほどで支度は済んだ。
「もういいですか? そろそろ閉まるんですよ。小学生向けがメインなんで」
確かに外は夕暮れに近付いていた。小学生は帰る頃。
それでコースに向かい、走らせる旨をスタッフに伝え……、二人でスタート地点に立った。
「行きますよ。負けませんから」
「俺だって、よくわからんが、やるからには負けるもんか」
この頃にはなんだか負けん気と楽しさも出てきていた茂はそんなふうに言ってしまい、言ってから自分に驚いた。
なんだかいつも通りの菜月と自分のやり取りに似ている、と思ってしまって。
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