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隠し事は呆気なく

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 それを聞いて、菜月の顔が歪む。
 まるでどこか痛いのを堪えているような、顔。
「菜摘(なつみ)。お兄ちゃん、咲耶ちゃんのパパと話があるから、ちょっとだけ咲耶ちゃんと遊びに行っててくれるかな」
 菜月にまとわりついていた女の子、菜摘と呼ばれたその子は、なにか不穏な空気を感じ取ったのだろう、不安げではあったが、「うん」と頷いてくれた。
「行こ、さくやちゃん」
「……うん」
 咲耶はその子に連れられて行ってしまう。
 気がかりな様子で茂を振り返ったけれど、元々、友達なのだろう。ためらう様子はなく、去っていった。
「桜庭さん、……お子さんがいた、んですね」
 二人になり、広い場所でこんな話はできなかったので、端に寄った。園庭の端っこへ。
「……すまない。話さなくて」
 子供がいたということより、話さなかったということが問題なのだということくらい、わかっていた。
 よってその通りのことを言って謝る。
「どうして言ってくれなかったんです」
 ぽつりと菜月が言った。その声もどこか、痛いような声であった。
「……あまり言いたくなかったんだ」
 しかし茂がそう答えた途端、菜月の様子が変わった。
 今まで茂に見せてきた様子とはまったく違った、怒りすら混ざったような顔になる。
「そのくらい、俺のことがどうでも良かったってことですか!?」
 顔を歪めて言った菜月は、『まだ受け入れがたい』と言っていた。
 告白した相手、おまけに去年かいつかから、とりあえず短くはない期間、見ていた相手が子持ちであったなど、すぐに受け入れられるはずはないけれど。
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