24 / 107
ほかほか焼きうどん
⑤
しおりを挟む
焼きうどんに箸を入れる。
ふわっと湯気が立ち、肉の香ばしい香りが漂った。
まずはキャベツを摘まんで、ひとくち。
「……甘い」
キャベツという野菜がこんなに甘いのか。
茂は初めて知ったような気持ちになってしまった。
「ほんとですか。火の通りが悪ければ生っぽいですし、通しすぎれば焦げた味になりますから、今日は上手くいきましたね」
初めて使うキッチンで、これほど上等に作ってしまうのだ。
茂は感心した。
次に食べたにんじんもやわらかく、肉もふっくらちょうど良い加減に火が通っていた。
野菜の下からうどんを引っ張り出す。
さっき焼き目がついたところも美味しそうだったのに、野菜や肉を乗せたために、汁がまぶされて、しっかり味がついていた。
「美味い」
ちゅるっと麺を吸い込み、咀嚼する。
もちもちと弾力があって、噛み応えがある。
惣菜のものを買ってはこうはいかないだろう。
新鮮な食材を使って、それも作りたてでなければ。
「それは嬉しいです」
菜月は、茂が「こんなんで良かったら、おやつにどうだ」と勧めたスルメの袋からひとつ摘まみだした。
口に運んで、固いスルメをもちゅもちゅと食べている。
その様子はなんだかより幼く見えてかわいらしい。
起きてからなにも食べていなかったのだ。
がつがつと、というほど勢いよく食べてしまい、すぐに平らげてしまった。
皿は綺麗に空っぽになる。
「ごちそうさま」
ふぅ、と息をついて、グラスのお茶を煽る。
腹は心地良く満たされていた。
お腹がいっぱいで、満腹感と幸福感が体中に感じられる。栄養がゆっくり回っていくのすら、実感できるような感覚すら覚えた。
「お粗末様でした」
菜月はスルメを飲み込んでから、そう返事をしてくれる。
「ありがとな。すげぇ美味かったよ」
ここまで言いそびれていたお礼をやっと口に出す。
菜月は茂の言ったそれに、嬉しそうに、そりゃあもう、ここまでで一番嬉しそうににこっと笑い、「それは良かったです!」と弾んだ声で言った。
「料理、上手いんだな。好きなのか?」
僅かに残ったお茶を飲みながら聞いてみると、そのまま頷かれた。
「はい! 作るのも食べるのも好きです。楽しいですし、美味しいものって幸せになりますよね」
「そうだな」
茂は平和な気持ちで軽く相づちを打ったのだが、直後、お茶を噴き出しそうになった。
「恋人ができたら、料理を振る舞うのが夢だったんです」
ふわっと湯気が立ち、肉の香ばしい香りが漂った。
まずはキャベツを摘まんで、ひとくち。
「……甘い」
キャベツという野菜がこんなに甘いのか。
茂は初めて知ったような気持ちになってしまった。
「ほんとですか。火の通りが悪ければ生っぽいですし、通しすぎれば焦げた味になりますから、今日は上手くいきましたね」
初めて使うキッチンで、これほど上等に作ってしまうのだ。
茂は感心した。
次に食べたにんじんもやわらかく、肉もふっくらちょうど良い加減に火が通っていた。
野菜の下からうどんを引っ張り出す。
さっき焼き目がついたところも美味しそうだったのに、野菜や肉を乗せたために、汁がまぶされて、しっかり味がついていた。
「美味い」
ちゅるっと麺を吸い込み、咀嚼する。
もちもちと弾力があって、噛み応えがある。
惣菜のものを買ってはこうはいかないだろう。
新鮮な食材を使って、それも作りたてでなければ。
「それは嬉しいです」
菜月は、茂が「こんなんで良かったら、おやつにどうだ」と勧めたスルメの袋からひとつ摘まみだした。
口に運んで、固いスルメをもちゅもちゅと食べている。
その様子はなんだかより幼く見えてかわいらしい。
起きてからなにも食べていなかったのだ。
がつがつと、というほど勢いよく食べてしまい、すぐに平らげてしまった。
皿は綺麗に空っぽになる。
「ごちそうさま」
ふぅ、と息をついて、グラスのお茶を煽る。
腹は心地良く満たされていた。
お腹がいっぱいで、満腹感と幸福感が体中に感じられる。栄養がゆっくり回っていくのすら、実感できるような感覚すら覚えた。
「お粗末様でした」
菜月はスルメを飲み込んでから、そう返事をしてくれる。
「ありがとな。すげぇ美味かったよ」
ここまで言いそびれていたお礼をやっと口に出す。
菜月は茂の言ったそれに、嬉しそうに、そりゃあもう、ここまでで一番嬉しそうににこっと笑い、「それは良かったです!」と弾んだ声で言った。
「料理、上手いんだな。好きなのか?」
僅かに残ったお茶を飲みながら聞いてみると、そのまま頷かれた。
「はい! 作るのも食べるのも好きです。楽しいですし、美味しいものって幸せになりますよね」
「そうだな」
茂は平和な気持ちで軽く相づちを打ったのだが、直後、お茶を噴き出しそうになった。
「恋人ができたら、料理を振る舞うのが夢だったんです」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
どのみちヤられるならイケメン騎士がいい!
あーす。
BL
異世界に美少年になってトリップした元腐女子。
次々ヤられる色々なゲームステージの中、イケメン騎士が必ず登場。
どのみちヤられるんら、やっぱイケメン騎士だよね。
って事で、頑張ってイケメン騎士をオトすべく、奮闘する物語。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
【完結】人形と皇子
かずえ
BL
ずっと戦争状態にあった帝国と皇国の最後の戦いの日、帝国の戦闘人形が一体、重症を負って皇国の皇子に拾われた。
戦うことしか教えられていなかった戦闘人形が、人としての名前を貰い、人として扱われて、皇子と幸せに暮らすお話。
性表現がある話には * マークを付けています。苦手な方は飛ばしてください。
第11回BL小説大賞で奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜
明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。
しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。
それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。
だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。
流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…?
エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか?
そして、キースの本当の気持ちは?
分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです!
※R指定は保険です。
必ず会いに行くから、どうか待っていて
十時(如月皐)
BL
たとえ、君が覚えていなくても。たとえ、僕がすべてを忘れてしまっても。それでもまた、君に会いに行こう。きっと、きっと……
帯刀を許された武士である弥生は宴の席で美しい面差しを持ちながら人形のようである〝ゆきや〟に出会い、彼を自分の屋敷へ引き取った。
生きる事、愛されること、あらゆる感情を教え込んだ時、雪也は弥生の屋敷から出て小さな庵に住まうことになる。
そこに集まったのは、雪也と同じ人の愛情に餓えた者たちだった。
そして彼らを見守る弥生たちにも、時代の変化は襲い掛かり……。
もう一度会いに行こう。時を超え、時代を超えて。
「男子大学生たちの愉快なルームシェア」に出てくる彼らの過去のお話です。詳しくはタグをご覧くださいませ!
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
【完結】婚約破棄された傷もの令嬢は王太子の側妃になりました
金峯蓮華
恋愛
公爵令嬢のロゼッタは王立学園の卒業パーティーで婚約者から婚約破棄を言い渡された。どうやら真実の愛を見つけたらしい。
しかし、相手の男爵令嬢を虐めたと身に覚えのない罪を着せられた。
婚約者の事は別に好きじゃないから婚約破棄はありがたいけど冤罪は嫌だわ。
結婚もなくなり、退屈していたところに王家から王太子の側妃にと打診が来た。
側妃なら気楽かも? と思い了承したが、気楽どころか、大変な毎日が待っていた。
*ご都合主義のファンタジーです。見守ってくださいませ*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる