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先輩の『尊敬するひと』③

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 声をひそめていたけれど、そう言ってくれる。浅葱はちょっと笑みを浮かべてしまった。今度のものは、照れ笑い。
「うん。お話できたし……それに、アドバイスもすごかったし」
「すごい?」
 萌江は、ちょっとよくわからない、という顔をした。確かにあいまいだったかな、と思って、浅葱は言いなおした。
「絶対にこうしろ、って言わないでしょう。あくまで参考に、って。それはアドバイスされるひとの気持ちをよく考えてるんだなぁって。それがすごいって」
「ああ、なるほど。それはそうだね」
 今度は伝わったらしい。なるほど、とうんうんとうなずいてくれる。
 けれど、次に言われたこと。浅葱は、どきっとしてしまった。
「蘇芳先輩も、尊敬してるひとがいるんだって。蘇芳先輩の、また先輩……私たちにとっては大先輩、になるのかなぁ。教えてくれたことを、後輩に教えることで返したいんだって。前にそう言ってたなぁ」
 それは初めて聞くことだった。
 尊敬しているひと?
 そんなひとがいたなんて、初めて知った。
 確かになにもおかしくない。
 蘇芳先輩だって、以前は『後輩』という立場だっただろうし、そのときは『先輩』にいろいろと習っただろう。その経験が今の蘇芳先輩を作っているのだ。
 でも。
 ……『尊敬しているひと』。
 それは、いったい。
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