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放課後デート?②
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「ここ。なにかついてるぞ」
「え!?」
それは単に、『ついてる』と示して教えてくれただけのものだったのだ。
かっと頭の中が熱くなる。
たったそれだけのことに、手を握られるのかなんて思ってしまった自分が恥ずかしい。
けれど、触れてくれたのは事実。
だから、そう、思ってしまっても、ヘンでは。
頭の中にぐるぐると、思考が回った。
その中でやっと、蘇芳先輩が触れて示してくれたところを見ると、そこにはなにか……ピンク色のものがくっついていた。
なにこれ。今日は絵なんて描いてないのに。
「チョークかな。ざらざらしてたから」
蘇芳先輩は流石だ。見て、一瞬触れただけで、それがなんであるかわかったらしい。
そしてそう言われれば、浅葱もすぐに思い至った。
そのとおり、チョークだ。
「あ……。帰る前に、黒板が消してなかったですから、消して……多分、そのときに……」
日直が忘れたのか、サボったのか。午後の授業で先生がいろいろと書いた黒板が、そのままになっていた。
もう、仕方ないなぁ。消しとかないと、明日困るのに。
思った浅葱は、ちょっとの手間はかかるけれど、こんなのすぐ終わる、と、サッと消してから教室を出たのだった。
そのあと、特にトイレなどには行かなかったから、つまり手を洗う機会もなかったから、くっついたままだったのだろう。
「そうなのか。消し忘れられてたのかな」
「そうなんです。日直の子、忘れちゃったのかな……」
そう言ったところで、蘇芳先輩はまた微笑んだ。今度は目を細めるような笑顔だった。
「それでわざわざ消してきたのか? 当番でもないのに?」
「え、……はい。明日、困ると思って……」
何気なく言ったのに。
「六谷は優しいんだな。放って帰ることもできただろうに」
先輩の声は優しかった。
褒められた……?
じわじわと胸に染み入ってきて、今度は違う意味で熱くなる。
嬉しかった。
自分のそんな、何気ない行動を。
「あ、……ありがとう……ございます」
くすぐったかったけれど、嬉しくて。
浅葱のお礼を言う言葉も明るくなった。
今日はなんていい日だろう。
こんな、街中なんて場所で偶然出会っただけではない。自分の何気ないことを褒めてくれた。認めてくれた。
今日は幸せな気持ちで眠れそう。
思った浅葱だったけれど、今日はそれ以上のラッキーが降ってきたのである。
「え!?」
それは単に、『ついてる』と示して教えてくれただけのものだったのだ。
かっと頭の中が熱くなる。
たったそれだけのことに、手を握られるのかなんて思ってしまった自分が恥ずかしい。
けれど、触れてくれたのは事実。
だから、そう、思ってしまっても、ヘンでは。
頭の中にぐるぐると、思考が回った。
その中でやっと、蘇芳先輩が触れて示してくれたところを見ると、そこにはなにか……ピンク色のものがくっついていた。
なにこれ。今日は絵なんて描いてないのに。
「チョークかな。ざらざらしてたから」
蘇芳先輩は流石だ。見て、一瞬触れただけで、それがなんであるかわかったらしい。
そしてそう言われれば、浅葱もすぐに思い至った。
そのとおり、チョークだ。
「あ……。帰る前に、黒板が消してなかったですから、消して……多分、そのときに……」
日直が忘れたのか、サボったのか。午後の授業で先生がいろいろと書いた黒板が、そのままになっていた。
もう、仕方ないなぁ。消しとかないと、明日困るのに。
思った浅葱は、ちょっとの手間はかかるけれど、こんなのすぐ終わる、と、サッと消してから教室を出たのだった。
そのあと、特にトイレなどには行かなかったから、つまり手を洗う機会もなかったから、くっついたままだったのだろう。
「そうなのか。消し忘れられてたのかな」
「そうなんです。日直の子、忘れちゃったのかな……」
そう言ったところで、蘇芳先輩はまた微笑んだ。今度は目を細めるような笑顔だった。
「それでわざわざ消してきたのか? 当番でもないのに?」
「え、……はい。明日、困ると思って……」
何気なく言ったのに。
「六谷は優しいんだな。放って帰ることもできただろうに」
先輩の声は優しかった。
褒められた……?
じわじわと胸に染み入ってきて、今度は違う意味で熱くなる。
嬉しかった。
自分のそんな、何気ない行動を。
「あ、……ありがとう……ございます」
くすぐったかったけれど、嬉しくて。
浅葱のお礼を言う言葉も明るくなった。
今日はなんていい日だろう。
こんな、街中なんて場所で偶然出会っただけではない。自分の何気ないことを褒めてくれた。認めてくれた。
今日は幸せな気持ちで眠れそう。
思った浅葱だったけれど、今日はそれ以上のラッキーが降ってきたのである。
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