114 / 125
本番の日とキャラメルひとつぶ
3
しおりを挟む
その中でも、この一箱は特別だった。
『オレからの応援だと思ってくれよ』
莉瀬が教室でひどいことを言われて、大泣きしてしまったあのとき。
隼斗くんが買ってくれたものだ。
ほとんど食べてしまったけれど、大切にとっておいた最後のひとつぶが入っている。
莉瀬はそのひとつぶを取り出して、じっと見つめた。
一週間と少し前。
隼斗くんに言われたことが頭に浮かんだ。
『莉瀬さんならきっとうまくいく。信じてるよ』
応援してくれるひと。
自分のがんばるところを好きだと、きれいだと言ってくれて、認めてくれたひと。
そして自分の大好きなひと。
そんな存在である隼斗くんからもらったキャラメルだ。
おまじないではないけれどこれを食べればきっとうまくいくだろう。
だって優しい気持ちも応援の気持ちも、たくさんたくさん詰まっているのだから。
ひとつぶのキャラメル。
小さくても甘い、誰かを幸せな気持ちにできるお菓子。
私の名前の由来でもある、それ。
私も名前に恥じないように、誰かを幸せな気持ちにできるような踊りをする。
たくさんの種類の思いの詰まった小さなキャラメルを、莉瀬はそっと口に入れた。
キャラメルはゆっくりとけていく。
莉瀬の体に優しい気持ちや勇気が回っていくようだった。
体中を満たすそれと共に、莉瀬はクラスの子たちを追いかけて、舞台の裏へと向かったのだった。
『オレからの応援だと思ってくれよ』
莉瀬が教室でひどいことを言われて、大泣きしてしまったあのとき。
隼斗くんが買ってくれたものだ。
ほとんど食べてしまったけれど、大切にとっておいた最後のひとつぶが入っている。
莉瀬はそのひとつぶを取り出して、じっと見つめた。
一週間と少し前。
隼斗くんに言われたことが頭に浮かんだ。
『莉瀬さんならきっとうまくいく。信じてるよ』
応援してくれるひと。
自分のがんばるところを好きだと、きれいだと言ってくれて、認めてくれたひと。
そして自分の大好きなひと。
そんな存在である隼斗くんからもらったキャラメルだ。
おまじないではないけれどこれを食べればきっとうまくいくだろう。
だって優しい気持ちも応援の気持ちも、たくさんたくさん詰まっているのだから。
ひとつぶのキャラメル。
小さくても甘い、誰かを幸せな気持ちにできるお菓子。
私の名前の由来でもある、それ。
私も名前に恥じないように、誰かを幸せな気持ちにできるような踊りをする。
たくさんの種類の思いの詰まった小さなキャラメルを、莉瀬はそっと口に入れた。
キャラメルはゆっくりとけていく。
莉瀬の体に優しい気持ちや勇気が回っていくようだった。
体中を満たすそれと共に、莉瀬はクラスの子たちを追いかけて、舞台の裏へと向かったのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/children_book.png?id=95b13a1c459348cd18a1)
魔界プリンスとココロのヒミツ【完結】
小平ニコ
児童書・童話
中学一年生の稲葉加奈は吹奏楽部に所属し、優れた音楽の才能を持っているが、そのせいで一部の部員から妬まれ、冷たい態度を取られる。ショックを受け、内向的な性格になってしまった加奈は、自分の心の奥深くに抱えた悩みやコンプレックスとどう付き合っていけばいいかわからず、どんよりとした気分で毎日を過ごしていた。
そんなある日、加奈の前に突如現れたのは、魔界からやって来た王子様、ルディ。彼は加奈の父親に頼まれ、加奈の悩みを解決するために日本まで来たという。
どうして父が魔界の王子様と知り合いなのか戸惑いながらも、ルディと一緒に生活する中で、ずっと抱えていた悩みを打ち明け、中学生活の最初からつまづいてしまった自分を大きく変えるきっかけを加奈は掴む。
しかし、実はルディ自身も大きな悩みを抱えていた。魔界の次期魔王の座を、もう一人の魔王候補であるガレスと争っているのだが、温厚なルディは荒っぽいガレスと直接対決することを避けていた。そんな中、ガレスがルディを追って、人間界にやって来て……
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
今日の夜。学校で
倉木元貴
児童書・童話
主人公・如月大輔は、隣の席になった羽山愛のことが気になっていた。ある日、いつも1人で本を読んでいる彼女に、何の本を読んでいるのか尋ねると「人体の本」と言われる。そんな彼女に夏休みが始まる前日の学校で「体育館裏に来て」と言われ、向かうと、今度は「倉庫横に」と言われる。倉庫横に向かうと「今日の夜。学校で」と誘われ、大輔は親に嘘をついて約束通り夜に学校に向かう。
如月大輔と羽山愛の学校探検が今始まる
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/children_book.png?id=95b13a1c459348cd18a1)
釣りガールレッドブルマ(一般作)
ヒロイン小説研究所
児童書・童話
高校2年生の美咲は釣りが好きで、磯釣りでは、大会ユニホームのレーシングブルマをはいていく。ブルーブルマとホワイトブルマーと出会い、釣りを楽しんでいたある日、海の魔を狩る戦士になったのだ。海魔を人知れず退治していくが、弱点は自分の履いているブルマだった。レッドブルマを履いている時だけ、力を発揮出きるのだ!
【完結】小さな大冒険
衿乃 光希(恋愛小説大賞参加しています)
絵本
動物の子供たちが、勇気を出して一歩を踏み出す、小さくても大きな冒険物語。主人公は毎回変わります。作者は絵を描けないので、あなたの中でお好きな絵を想像して読んでくださいね。漢字にルビは振っていません。絵本大賞にエントリーしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる