トウシューズにはキャラメルひとつぶ

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本番の日とキャラメルひとつぶ

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 その中でも、この一箱は特別だった。


『オレからの応援だと思ってくれよ』


 莉瀬が教室でひどいことを言われて、大泣きしてしまったあのとき。

 隼斗くんが買ってくれたものだ。

 ほとんど食べてしまったけれど、大切にとっておいた最後のひとつぶが入っている。

 莉瀬はそのひとつぶを取り出して、じっと見つめた。

 一週間と少し前。

 隼斗くんに言われたことが頭に浮かんだ。


『莉瀬さんならきっとうまくいく。信じてるよ』


 応援してくれるひと。

 自分のがんばるところを好きだと、きれいだと言ってくれて、認めてくれたひと。

 そして自分の大好きなひと。

 そんな存在である隼斗くんからもらったキャラメルだ。

 おまじないではないけれどこれを食べればきっとうまくいくだろう。

 だって優しい気持ちも応援の気持ちも、たくさんたくさん詰まっているのだから。


 ひとつぶのキャラメル。

 小さくても甘い、誰かを幸せな気持ちにできるお菓子。


 私の名前の由来でもある、それ。

 私も名前に恥じないように、誰かを幸せな気持ちにできるような踊りをする。


 たくさんの種類の思いの詰まった小さなキャラメルを、莉瀬はそっと口に入れた。

 キャラメルはゆっくりとけていく。

 莉瀬の体に優しい気持ちや勇気が回っていくようだった。

 体中を満たすそれと共に、莉瀬はクラスの子たちを追いかけて、舞台の裏へと向かったのだった。
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