トウシューズにはキャラメルひとつぶ

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!

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デートは冷たいアイスクリーム

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 初めてくるっと回ったそのときは、回ることはできたものの、回ったあとに、ぐらっと目が回ってしまって、ふらふらした。

 でも『一点だけを見て、素早く振り返って、回っている間の景色を見ない』というコツを教えてもらった。

 難しかったけれどそれができるようになって、ふらつかないでうまく回れるようになったとき。


 すごく、すごく嬉しかった。


 きっと隼斗くんが感じた気持ちと同じなのだろう。

「たぶんオレはチームでやるスポーツより一人でやるほうが向いてるんだ。それも一位を取ることより、なんていうかな、タイムを縮めることのほうが興味があるみたい」

 アイスはきれいになくなった。

 カップだけになってしまって、それをテーブルに置いてフチをなぞりながら隼斗くんは、にこっと笑った。

「そりゃ一位は取りたい。でもタイムが一秒縮まったとか、そういうのがすごく嬉しいんだ」


 技術があがること。

 納得いく出来になること。


 ああ、きっとそれがあのきれいな走りに繋がっているんだ。


 莉瀬は納得した。

 そしてそんな隼斗くんをすごい、と思う。

 一位になることもそりゃあ、すごい。

 でもそういうことに『楽しさ』や『価値』を見いだして、もっと上を目指せるというのは、ある意味それよりすごいことではないだろうか。
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