トウシューズにはキャラメルひとつぶ

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トウシューズは宝物

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 まずはバーに掴まって、ゆったりした音楽に合わせて体を動かす。

 音楽は毎回同じ順番で流されて、それに合わせた振りつけも決まっている。

 適当な間隔を空けて、一列に並んでバーに掴まっているので、体を動かすのに狭いということはない。

 それに振りつけをド忘れしてしまったら、前の子を見てカンニングすることもできる。

 なので一番前に立つのはクラスの中でうまい子だ。

 莉瀬は体が大きいので一番うしろだった。

 うしろ、ではあるのだが、音楽の一番が終わったらくるりと、逆を向くので、そのときは一番前になってしまう。

 そのときはやはり緊張する。

 でもうしろの子たちに見られていると思うと、余計に気を入れて丁寧におこなうことができるのだった。

 左手でバーに掴まるときは、右手と右足の動きを。

 そのあとくるりと回って捕まる手を右手に変えたら、左手と左足の動きを、といった具合で、交代交代である。


 前半のほとんどはこのバーレッスンで終わる。

 そのあとはストレッチと筋トレをして……後半はいよいよフロアに出る。

 フロアでは三列ほどに並んで、体全体を使った動き。

 フロアを四角く使って、移動を組み合わせたレッスンも入る。

 フロアレッスンの後半でやっとトウシューズを、はかせてもらえるのだ。


 乙津先生は毎回「はい、三分ではきましょう!」と、ぱん、と手を叩いて時間を測る。

 どうしてなのかと思ったのだけど、はくスピードも大切なのだ。

 つま先に、つめものをして足を通し、リボンを足首にくるくると巻きつけて固定。

 もたもたしていては、万が一、足やシューズに不具合があったときタイムロスになってしまう。

 レッスンの中でならいいけれど、発表会のようなとき、それは困る。

 シューズくらい、ぱぱっとはけるようでなければいけないのだ。


 そしてフロアでのレッスンを再開して、最後に「ありがとうございました」とまたおじぎをして、おしまい。

 レッスンのおおまかな流れは、毎回このような感じになっていく。

 莉瀬にとってはあっという間に過ぎ去ってしまう、楽しい時間だった。
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