人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

緊急派遣

8

「……おにぎりだ」

　飲み下してから、秋木は言った。

　当たり前のことであった。

「そう言ってるじゃないですか」

　俺は苦笑してしまう。

　おにぎりに見えていなかったというのだろうか。

「いや、……こういうのはだいぶ久しぶりだった。握り飯か……」

　でも多分、それは違う意味だった。

　秋木はなんだか噛み締めるように、それを口に出したのだから。

「……はい」

　なにが込められているのかは、わからなかった。

　が、悪い感情ではないように思えたので、俺は単に肯定する。

　数秒のち、秋木はもうひとくち、がぶっと噛みついたのだけど……。

「……ぐっ!?」

　顔が思いきりしかめられた。

　口を押さえる。

　理由なんてわかりきっている俺は、いや、犯人の俺はつい笑ってしまった。

　秋木は乱暴に口の中のものを噛み、テーブルに置いてあったペットボトルを掴んで、ぐびぐびっとあおった。

　はーっとため息をつく。

　そして俺を思いきり睨んできた。

「おい、てめぇ！　なにも入ってねぇって言ったじゃねぇか！」

　恨めしそうなその表情。

　あまりに刺激が強かったらしい。

　……俺がおにぎりに仕込んでいた梅干しは。