人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

緊急派遣

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　ふーん、やっぱりいっぱい出てんなぁ。

　一冊くらい読んでみようかな。

　ある日曜日、俺は期末試験のため参考書を見に本屋へやって来ていた。

　しかし足は勝手に、例の作家のコーナーへ向かってしまった。

　それで秋木の本がずらりと並べられているのを見て、感嘆した次第。

　秋月 晴一。

　去年の直美賞を、『若葉薫かおる』という作品で受賞したらしい。

　客としての秋木の年齢など俺は聞いていなかったが、二十六歳と書いてあって、『この若さで！』のような煽り文句がついていた。

　文芸にも小説にもいまいち興味のない俺だ。

　受賞作というそれも、初めて手に取ったので、ぱらぱらめくってみた。

　評価としては、『ドラマティックですごい』というようなポップが書いてあった。

　こんな語彙力のないほど本に縁がない俺が、読んでみてもいいもんかな。

　そう思ったものの、それでもせっかく来たのだ。

　なにか買ってみるか、と思った。

　参考書も買わなければだし、読む時間もそれほど取れない。

　厚いハードカバーは無理だ。

　文庫がいい。

　それも厚すぎないようなものがいい。

　そう思って、一番薄いものを手に取った。

　それは短編集のようであった。

　隙間時間に読むのに好都合。

　俺はこれに決めて、今度こそ参考書を探しにフロアを移動した。

　客の事情に深入りはしないほうがいいかもだけどな、なんて軽く思ったのだけど、あとから思えば本当にそうだったのかもしれない。