人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

二度目の指名

5

「本文に入ったからな、しばらくこうだ」

　言われたけれど、俺はよくわからなかった。

　本文とは。

　俺が首をかしげたい気持ちなのは悟られたらしい。

　秋木は俺のほうを見て、呆れたような目になった。

「なんだ、前回、俺の仕事は知ったんだろ」

　言われて俺はやっと思い当たった。

　秋木の仕事。

　意外過ぎることだが、小説家。

　それなら本文というなら、小説の内容ということだ。

　俺にはどうやって書かれているかなんて、さっぱりわからないけれど。

「あ、はい。本文って、小説の……？」

「ほかになにがある」

　殊勝に聞いたのに、秋木は一蹴した。ソーダをぐびっと飲む。

　俺はあんたと違って、小説のできる過程なんか詳しくないんですけど！

　内心思ったけれど、まさか言うわけにはいかない。愛想笑いになった。

「そ、そうですよね。大変そうです」

「まぁな」

　今度は馬鹿にされたようには言われなかったので、俺は安堵した。