人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

謎の部屋着

3

「あの……、これで合ってるんでしょうか」

　大いに混乱しつつシャワーを浴びて、軽く体を洗って、『準備』も改めてして風呂を上がった。

　悩んで、でも着ないわけにはいかなかった『それ』を身に着けて、リビングに戻る。

　俺は奇妙すぎる姿でおずおずと秋木に聞いた。

「ああ、割と似合うじゃないか。理想的だ」

「はぁ」

　秋木はどっかりソファに腰掛けてタブレット端末でなにか見ていたようだったが、それをテーブルに置いて俺を見た。

　理想的と言った割にはあまり感慨なかったが、それよりも。

　俺が着せられているのは、コスプレでも、性的な下着でもなかった。

　むしろ真逆。

　上はもこもこした素材の半袖パーカー。

　下は同じ素材のハーフパンツ。

　おまけにソックスまであった。

　これまたもこもこしている。

　すべて水色ベースの淡いボーダー柄で、俺はこういったものに見覚えがあった。

　女子に人気のブランドの部屋着である。

　学校の女子たちがよく話している。

「シャーベットピケの新作、超かわいいよね～！」

「限定、買えるかなぁ」

　きゃっきゃとスマホの画像を見ながら話していたそれである、多分、おそらく。

　一体、何故そんな女子向け部屋着を俺に。

　改めて実感して、くらっとした。

「さ、じゃあ準備もできた。行こうか」

　俺の混乱などどこ吹く風という様子の秋木はソファを立ち上がり、ドアに向かった。

　行こうか、とはそりゃあベッドルームだろう。

　ほかに行くところなどあるものか。

「はい」

　俺は素直に返事をした。

　混乱はしたが、単にそういう服を男の子に着せるのが性癖なのかもしれない。

　ないことはないだろう。

　自分に言い聞かせて秋木についていったのだけど……それは甘い見解だったのである。