極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

再会はデジャヴ

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　いつの間にか近くに男性がやってきていた。

　かなりの長身で、周囲のひとたちから頭ひとつ、飛びぬけていた。

　黒髪に、きりりとした一重の目元。形の良いくちびる。

　白い開襟シャツと、ベージュのスラックスという姿だった。

　その姿、約二年半が経っていても、果歩が見間違えるはずもなかった。

　大きく目を見開いて、絶句してしまう。

「な、なんだお前！　なんの権限があって……」

　そんな事情など知るはずもない中年男性は、急に男性から声をかけられて少々臆したようだったが、威勢よく言い返そうとした。

　が、彼が鋭い眼差しで、刺すように彼を見る。

「通りすがりですが、それがなにか。このお母さんはお気を使って端を通ろうとしたのですよ。それに、立ち止まったお母さんにぶつかったのは、あなたがよそ見をしていたからではないですか」

　ぐっ……と詰まった中年男性。

　その場にはまだ航の泣き声が響いていて、彼はその点についても口に出した。

「お子さんを泣かせたのもあなたですよね？　これ以上、このお母さんに絡むようでしたらスタッフの方を呼んでもいいんですよ」

　そこまで彼が言って、終わりになった。

　中年男性は、じり、と後ずさり、ばっときびすを返した。

「チッ、ぐだぐだうるせぇ奴だよ！　話すだけ損だ」

　捨て台詞だけを残して、迂回するルートへそそくさと去っていく。

　そうは言ったが、彼の淡々とした物言いと、そもそも強そうな男性に臆したのは明白で、情けない後ろ姿であった。

　いや、それよりも。