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現代の学校事情
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「お、おはよう! 良野くん」
美園の声がちょっと跳ねたからか、安珠がこちらを見る気配がした。それに嫌な予感がした。
この視線では、どうも。
要らないことを察されてしまうかもしれない。
「今日、早いじゃん。ちょうど良かった、部活でさー……あれ」
そのまま理緒と話がはじまりかけたが、理緒はすぐに隣の男・安珠が美園と居たのだと気付いたらしい。不思議そうな視線を向けた。
誰だろう、このひと。
生徒でも先生でもなさそうなのに、どうしてこんなとこに。
そんな顔になる。
「あ、あー……えっとね! 親戚のお兄ちゃんなの! ちょっと遠くに住んでるんだけど、今、こっちに来てて、ちょうどいいから学校まで送ってくれるって……か、過保護だよねぇ!」
あはは、と誤魔化して笑った声は引きつった。
言ってから、余計な補足だったかもしれないと思ったが、もう遅い。気にされないことを祈るしかない。
勝手に取って付けた設定に安珠が不審そうな目を向けたけれど、今は受け入れてもらうしかない。
まさか昨日、神社で神頼みをしたら呼び出してしまった、なんて言えるはずがないだろう。
でも安珠はそれほど空気が読めなくはないらしい。彼とて神社からやってきたあやかしであるなんて、言うはずも無し。
「ああ。身内なのだ。美園が世話になっているようだな」
少し間はあったものの、そう言ってくれて幸い、理緒は信じてくれたようだ。
「そうなんだ。琴吹と趣味が同じなのか?」
言われて美園はどきっとした。
趣味。
理緒には同じ部活であるだけあって知られていることで、今、安珠のこの格好を見ればそれを連想されたのかもしれないけれど、今、それを言われるのはちょっと困る。
美園の声がちょっと跳ねたからか、安珠がこちらを見る気配がした。それに嫌な予感がした。
この視線では、どうも。
要らないことを察されてしまうかもしれない。
「今日、早いじゃん。ちょうど良かった、部活でさー……あれ」
そのまま理緒と話がはじまりかけたが、理緒はすぐに隣の男・安珠が美園と居たのだと気付いたらしい。不思議そうな視線を向けた。
誰だろう、このひと。
生徒でも先生でもなさそうなのに、どうしてこんなとこに。
そんな顔になる。
「あ、あー……えっとね! 親戚のお兄ちゃんなの! ちょっと遠くに住んでるんだけど、今、こっちに来てて、ちょうどいいから学校まで送ってくれるって……か、過保護だよねぇ!」
あはは、と誤魔化して笑った声は引きつった。
言ってから、余計な補足だったかもしれないと思ったが、もう遅い。気にされないことを祈るしかない。
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まさか昨日、神社で神頼みをしたら呼び出してしまった、なんて言えるはずがないだろう。
でも安珠はそれほど空気が読めなくはないらしい。彼とて神社からやってきたあやかしであるなんて、言うはずも無し。
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少し間はあったものの、そう言ってくれて幸い、理緒は信じてくれたようだ。
「そうなんだ。琴吹と趣味が同じなのか?」
言われて美園はどきっとした。
趣味。
理緒には同じ部活であるだけあって知られていることで、今、安珠のこの格好を見ればそれを連想されたのかもしれないけれど、今、それを言われるのはちょっと困る。
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