7 / 125
麗人の小説家⑦
しおりを挟む
そのあとも源清先生の指導はとても穏やかだった。
「字が整っているね」
「文章の調子がとても良いよ」
「気持ちを丁寧に描写されている」
必ず良い点を挙げてくれ、そのあとに直したほうが良い点を伝えてくれる。
ひとつの指導を入れるためには同じかそれ以上の美点を伝えたほうが子供たちも受け入れやすいだろう。
単純な話かもしれないが、実感として感じさせてくれるような添削であった。
すべて見終える頃には一時間ほどが経っていただろうか。
しかし子供たちは飽きることなく静かに聞いていた。
珍しい。常ならばこのような静けさが続くことはない。
今日のそれは先生の説明がわかりやすかったからか興味を引くものであったからか。もしくは先生の持つ穏やかな、しかし凛とした空気のためだろうか。
このひとはまるで師として人を導くために生まれてきたようなひとだ。金香にそう思わせてしまうほどに。
ただし源清先生の本業はあくまでも『小説家』である。『教師』ではない。ゆえに今日だけの出張授業。
今日だけ特別、であるのを金香は少し残念に思ってしまった。
このひとがいてくれたらもっとこの寺子屋の勉強も楽しくなるのに、などと思ってしまったがゆえに。
しかしすぐに撤回した。
いえ、それでは駄目。今日の指導を参考に、私が同じように、……は無理かもしれないけれど、出来る限り近づけられるような指導ができるようにならないと。
金香は自分に言い聞かせた。
それでもそのときにはすでに、源清先生がこの寺子屋にきてくださり、指導をしてくださるのが今日限りであることを惜しむ気持ちが生まれていた。
「字が整っているね」
「文章の調子がとても良いよ」
「気持ちを丁寧に描写されている」
必ず良い点を挙げてくれ、そのあとに直したほうが良い点を伝えてくれる。
ひとつの指導を入れるためには同じかそれ以上の美点を伝えたほうが子供たちも受け入れやすいだろう。
単純な話かもしれないが、実感として感じさせてくれるような添削であった。
すべて見終える頃には一時間ほどが経っていただろうか。
しかし子供たちは飽きることなく静かに聞いていた。
珍しい。常ならばこのような静けさが続くことはない。
今日のそれは先生の説明がわかりやすかったからか興味を引くものであったからか。もしくは先生の持つ穏やかな、しかし凛とした空気のためだろうか。
このひとはまるで師として人を導くために生まれてきたようなひとだ。金香にそう思わせてしまうほどに。
ただし源清先生の本業はあくまでも『小説家』である。『教師』ではない。ゆえに今日だけの出張授業。
今日だけ特別、であるのを金香は少し残念に思ってしまった。
このひとがいてくれたらもっとこの寺子屋の勉強も楽しくなるのに、などと思ってしまったがゆえに。
しかしすぐに撤回した。
いえ、それでは駄目。今日の指導を参考に、私が同じように、……は無理かもしれないけれど、出来る限り近づけられるような指導ができるようにならないと。
金香は自分に言い聞かせた。
それでもそのときにはすでに、源清先生がこの寺子屋にきてくださり、指導をしてくださるのが今日限りであることを惜しむ気持ちが生まれていた。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。

忘れられたら苦労しない
菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。
似ている、私たち……
でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。
別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語
「……まだいいよ──会えたら……」
「え?」
あなたには忘れらない人が、いますか?──
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

人質王女の恋
小ろく
恋愛
先の戦争で傷を負った王女ミシェルは顔に大きな痣が残ってしまい、ベールで隠し人目から隠れて過ごしていた。
数年後、隣国の裏切りで亡国の危機が訪れる。
それを救ったのは、今まで国交のなかった強大国ヒューブレイン。
両国の国交正常化まで、ミシェルを人質としてヒューブレインで預かることになる。
聡明で清楚なミシェルに、国王アスランは惹かれていく。ミシェルも誠実で美しいアスランに惹かれていくが、顔の痣がアスランへの想いを止める。
傷を持つ王女と一途な国王の恋の話。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる